2008.07.30 Wednesday
がんの治療と健康保険
JUGEMテーマ:健康
日本の医療制度を支える保険医療制度ですが、このブログで取り上げるがんの治療でも精神疾患の治療でも、治療が困難な疾患の分野では、ときに保険医療制度が必要と思われる治療の障害になります。
がんが進行すると、胸やお腹に水が貯まります。胸水とか腹水と言われるものです。
胸水や腹水が貯まると、呼吸が苦しくなったり食欲が無くなったりするために、それらの貯まった水を管を刺して対外へ排出させます。
胸膜や腹膜にがんが浸潤してしまっている場合にも水が貯まりますが、胸水や腹水の多くには、アルブミンと言う血液中の大切なタン白質が減少してしまっていることが原因になります。つまり栄養障害によってタン白質の合成が低下すると水が貯まりやすくなるのです。お年寄りの足の浮腫みなども同様のことがあります。
医師が治療で使う点滴の薬には、アルブミンというものがあります。がんの患者さんで胸水や腹水が貯まっているときに、アルブミンが減っているなら点滴でいれればよいと思われるでしょう。しかし現在の保険医療制度では、がんの患者さんへアルブミンをつかうことは許されないのです。
アルブミンの点滴が必要となるような栄養障害ががんの患者さんで存在するときには、かなりの末期で状態が良くないときです。ある意味では、根治的な治療効果が期待できない状態と言うことができるかもしれません。
そんなときには、アルブミンなどの高額な薬は健康保険で使わないでくださいという厚生労働省(国)の方針なのです。
このブログでも紹介した、余命3ヶ月と診断され栄養療法によって2年弱も生存されそのほとんどの期間を仕事を全うされ多患者さんは、治療の後期にはビタミンCの点滴とアルブミンの点滴を頻繁に行っていました。それらは全て100%の自己負担なのです。
抗がん剤は、大変高額な薬です。それらはどんどん新薬も保険で認可され保険診療でまかなわれています。
一方アルブミンは、がん患者さんの栄養状態の維持には、特効薬的な効果が期待できますが、もし使用するならその他の全ての保険診療分も全て100%自己負担にしてくださいという原理原則がまかり通っています。
せめて混合診療が認められ、保険で認められない必要な薬や処置だけを自己負担で行い、その他は保険診療として治療ができたらどんなに良いかと思うのです。