実例
生物の授業における生徒の質問を,理科教育メーリングリストで相談したときのメールを以下に紹介する。
〔質問メール〕
こんにちは
高校の生物の教員をしている平 康博といいます。
今日、生徒から聞かれたのですが、
「静脈はなぜ、青く見えるのでしょう? 確か血管そのものは半透明だと思いますが・・・・」
はたして私は、自分の血管を眺めつつ悩んだのでした。
どなたか、明快なお答えをよろしくお願いします。
〔回答メール1〕
こんにちは。**@東北大農 です。
#明快ではありません。(^^;;;
なぜ静脈は青黒く見えるのか,う?む難問 (^^;;。静脈血の色は
「かなりどす黒い赤」なので,皮膚を通してみると黒っぽくなるの
はいいとして,ここに青がかかって来るのは血管壁の結合組織が影
響してるかな。血管壁はそんなに透ける訳ではなく,結合組織が白っ
ぽく光を少し反射してテラテラしている感じです。皮膚の色もある
ので,減色混合の効果が出ているかも知れません(何枚も色フィル
ターを被せて見ている感じ)。
赤血球のヘモグロビンは酸素と結びついている時は「鮮紅色」を
呈し,これが動脈血の色になります。体内全体に酸素を運んだ後,
酸素を放出したヘモグロビンは「暗赤色」を呈し,これが静脈血の
色になります。動脈は血管壁が分厚いので血液の色は透けては見え
ません。また,動脈は身体の深部を走るので表面からは見えません。
静脈は血管壁が薄いので血液の色が透けて見えます。
〔回答メール2〕
平さん、**さん
藤田恒太郎著、寺田春水改訂
生体観察
南山堂、1976年
115頁より
静脈が皮膚を通して青く見えることは衆知の通りである.
この色調の原因が静脈の壁にあるのではなくて、
その中を通る血液にあることは、前述のようにして
皮静脈の中の血液を追い出すとその途端に静脈の
青い色調が消え、血液が満ちてくるにしたがって
再び青く見えることから明らかである.
それなら暗赤色の静脈血がなぜ青く見えるのか?
これは皮膚の真皮を通る光の産卵によるといわれるが
これを物理化学的に厳密に説明することはかなり複雑なので
本書では省く.
蒙古斑や入れ墨が青く見えるのも同じ理由である.
前述のようにしてとは
上肢を高く上に伸ばすとか
よく見えている静脈の表面を遠位(端)から
近位に向ってこするなど
上記の本はお医者さん向けの
診断用の教科書ですが
なかなか有用な本です.
〔回答メール3〕
こんにちは。**@東北大農 です。
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藤田恒太郎著、寺田春水改訂
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生体観察
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南山堂、1976年
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上記の本はお医者さん向けの
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診断用の教科書ですが
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なかなか有用な本です.
これは良い情報を頂きました。本学図書館には無かったので早速注文しました。
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静脈が皮膚を通して青く見えることは衆知の通りである.
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この色調の原因が静脈の壁にあるのではなくて、
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その中を通る血液にあることは、前述のようにして
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皮静脈の中の血液を追い出すとその途端に静脈の
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青い色調が消え、血液が満ちてくるにしたがって
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再び青く見えることから明らかである.
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それなら暗赤色の静脈血がなぜ青く見えるのか?
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これは皮膚の真皮を通る光の産卵によるといわれるが
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これを物理化学的に厳密に説明することはかなり複雑なので
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本書では省く.
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蒙古斑や入れ墨が青く見えるのも同じ理由である.
説明は難しいとのことで省かれちゃってますが,光の散乱の影響とい
うことであれば,静脈壁を形成する膠原線維の複屈折性が関与していそ
うな感じですね。
#解剖学の泰斗の見解と大きく外れていなさそうなのでちょっと安心。(^^;ゞ