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きょうの社説 2009年9月11日
◎スポーツツーリズム 石川の新たな「売り」にしたい
スポーツ参加を主目的に旅行する「スポーツツーリズム」が地域活性化の新たなキーワ
ードとして関心を呼んでいる。石川県で言えば、今月の大型連休中に開催され、全国各地から多くのサイクリストが集結する「ツール・ド・のと」や13日開催の「金沢城下町ハーフマラソン」などはその代表例であろう。能登島、七尾湾岸をコースに今年3月に初めて実施された「能登和倉万葉の里マラソン 」には約5千人が参加し、マラソン人気の高さをうかがわせた。規模の大きな大会ほど経済波及効果が高く、地域の魅力発信にも役立つ。 自転車やマラソンなどの「公道スポーツ」はイベント自体の評価とともに「開催地」の 魅力が参加の大きな理由である。食や宿泊サービス、選手の応援などを含めて地域ぐるみで大会を盛り上げ、「スポーツツーリズム」を石川の新たな「売り」にしていきたい。 今年で21回を数える「ツール・ド・のと400」には過去最多の約1500人が参加 する。能登の海岸線や里山を走る美しいコースが全国の自転車ファンに知られ、地元の人々との交流や観光を楽しみに連続参加する人がいる。スポーツで得られる充実感や感動をさらに高めてくれるのが風景や地元の人々のもてなしなのだろう。 健康志向の高まりとともに、自転車やジョギング、マラソン人口が拡大し、全国の大会 を回る「スポーツツーリスト」と呼ばれる人たちが増えている。北海道の「別海町パイロットマラソン」は完走者に鮭一本が贈られる大会として有名で、千葉県の「富里スイカロードレース」は「給スイカ所」で名産スイカを水分補給として提供するなど、規模の大きな大会は自治体が特産品や観光地の魅力を発信する絶好の場になっている。 「スポーツツーリズム」という言葉の解釈は幅広く、大学などの合宿やスポーツ観戦ま で含む考え方もある。自治体のなかにはスポーツ振興計画に「スポーツツーリズム」推進を掲げる動きも出てきたが、取り組むからには地域の魅力づくりという、より大きな視点で位置づけ、官民一体で盛り上げを図る必要がある。
◎新政権の対北政策 6カ国協議の枠組み軸に
北朝鮮ナンバー2が次期民主党政権に「実りある関係」を呼び掛けたのは、日本の対北
政策の「変化」に期待した軽いジャブのようなものだろう。連立政権には自公政権の圧力重視路線を批判し、問題解決には対話が必要と主張してきた社民党が加わっている。経済制裁や拉致問題で一歩も譲らない日本の強い姿勢を変えるチャンスと見たのだろうが、見え透いた「誘い」に、やすやすと乗ってはなるまい。北朝鮮はクリントン元米大統領を平壌に招き、拘束していた米国人女性記者2人の解放 を、韓国に対しても現代グループ従業員の帰国を認めた。「人質外交」で雪解けムードを演出した北朝鮮の狙いはあくまで米朝2国間協議にあり、これを思惑通り進めるために韓国、さらには日本への接近を図ろうとしているのだろう。 オバマ政権は6カ国協議の枠組み内で対話する立場を堅持しており、次期民主党政権も この米国の姿勢を強く支持していく必要がある。日米韓3国がスクラムを組んで北朝鮮に対する制裁を強めながら、粘り強く6カ国協議への復帰を促し、拉致問題解決の糸口をつかんでほしい。 外交には継続性が必要であり、次期政権は特に北朝鮮政策について、自公政権が進めて きた圧力重視の姿勢を、まずはしっかりと受け継ぐことが求められる。民主党の岡田克也幹事長は会見で、「拉致問題の進展がない状況のなか、各国と協力して経済制裁に強く出る時期だ」と述べており、圧力をかけて北朝鮮の譲歩を引き出す姿勢を示したのは心強い。 一方、社民党は連立協議のなかで、北朝鮮との2国間対話の推進を合意文書に明記する よう要求したとされる。連立政権に加わる以上、対話重視の姿勢は党内のみにとどめておくべきだ。そうでなければ北朝鮮に誤ったメッセージを送ることになりかねない。 社民党の連立参加で、自公政権では考えられなかった北朝鮮とのパイプを持つことにな る。取り扱いの難しい「劇薬」かもしれないが、「毒」ではなく、「薬」としての使い道はないだろうか。
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