我々がブラックスワンを認識できない理由を前稿で書いたが、予測も出来ない。人間は、視野狭窄とトンネル化さらには、予測の過大評価で予測はできない。人間の予測能力には、そもそも構造的限界があって、将来発見される科学技術を把握しない限り将来は予測できないのである。そもそも、歴史すら把握できない人間が将来をも掌握できないことは自明である。予測はできないが、ブラックスワンを利用するか、対応することはできないのだろうか?たしかに、予測はできないが、影響は把握できる。例えば、『いつ』地震が起きるかはわからないが、地震による『影響』はわかるのである。このときに、影響に注目し、損害が利益よりも小さい非対称な結果に基づいて投資などをするべきなのである。『バーベル戦略』と呼ばれ、損害が利益よりも大きい良い方のブラックスワンだったら、大きくリスクを取り積極的に動くべきなのである。その他にも、『凸結合』と呼ばれる、リスクテイキングもある。もちろん、両戦略ともブラックスワンに満ちあふれた現代生活にも適応できる。
一方の非拡張可能性でガウス的ベル型カーブは現実世界には適応できずブラックスワンには対応できず(ギャンブルなどのゲームを除く)、フランクタル的ランダム性やベキ乗数を推奨するが、それらもブラックスワンを予測することはできず、あくまで、『黒い白鳥』を灰色にさせるぐらいだ。しかし、カモにならずには済む。結局、彼が今回の投資銀行の自滅や世界的経済悪化をある程度想定でき、損失を出さず儲けられたのは、彼が、ブラックスワンの本質を理解していた何よりの証拠だ。
実は、同書にはポパーが何度も参照されており、ポパー→ハイエクと流れた認識論的遺伝子を見ることができ、勉強にもなった。もっと書けば、ヒュームなども含まれるが、当方はヒュームに関する著作はあまり読んだことが無いので言及は避けたい。どちらにせよ、欧米保守主義には、認識主義的側面があるはずだ。マルクス主義者や左翼などは歴史には一定の法則があり、未来も予想できるなどと馬鹿げた思想を持ち、歴史に一種魔性を持たせた。一方の保守派は、同思想と戦ったのに、日本では同じように、歴史に一定の法則性を持たせる考えを保守派が受け入れ、社会運動まで起こした。すなわち、反米史観である。常に外圧に曝された我が国が如何に立ち上がったかとする200年単位の史観である。詳しくは、今後も検証していくが、日本における左翼と保守の相違点は佐藤優氏が指摘した通り、『大きな物語』を盲目的に支持する点だろう。歴史は事実の羅列に過ぎないのに。
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by himajin321q
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