外國地名・人名の取調及び『言文一致論集』
(四の23) 文部省は 三十五年二月十二日坪井九馬三、神保小虎など數名を「外國地名及人名ノ稱ヘ方及書キ方取調委員」に任命し、十一月十五日官報に七項目から成る調査方針を掲げた。その一例を示せば「外國の地名及人名ニシテ我國ニ於テ襲用シタル稱ヘ方アルトキハ成ルヘク變更ヲ加ヘス」「支那本部及朝鮮ノ地名及人名ノ稱ヘ方ハ舊來ノ字音ニ據ル」となる。 同三十五年五月、帝國教育會内の「言文一致會」は、同會における數囘の演説會の速記と諸家の言文一致論とを編纂して『言文一致論集』を刊行した。辻新次はその「序」において
* 中には言文一致といふと、丸で漢字や文語を排斥するかの樣に思つてをる人がある。併し吾輩の主張する言文一致の趣意では、國民に一番廣く通用し且つ國民が日常使つてをる言葉でさへあれば、漢語でも梵語でも英・佛・獨語でも、雅語でも俗語でも毛嫌ひなしに之を同化し融和して我國語を富まさうとするのである。 と述べてゐる。本書には、菊池大麓、坪井正五郎、井上哲次郎、加藤弘之、新渡戸稻造、梅謙二郎、白鳥庫吉、エルンスト・エドワーヅ、後藤牧太、中井喜太郎、井上豐太郎、岡部精一、前島密、三輪田眞佐子、大槻文彦などの意見が收められてゐる。
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