【トリポリ和田浩明、ワシントン草野和彦】北朝鮮からイランに運ばれる武器を、アラブ首長国連邦(UAE)が押収していたことが28日明らかになった。英フィナンシャル・タイムズ紙などが報じた。国連の制裁委員会はUAEの報告を受け、武器禁輸措置に対する違反行為だとして、イランと北朝鮮に事情を説明するよう書簡で通告した。国連の対北朝鮮制裁決議に基づいて武器が押収されたのは初めて。
報道によると、数週間前、バハマ船籍の「ANLオーストラリア」がUAEに到着した際、当局が対戦車ロケット弾などの武器を収めたコンテナ10個を発見。制裁に違反するとして押収した。積み荷は「機械部品」と偽装されていた。同船は出港済みで、武器をどう処分するかはUAE当局に任されている。ペルシャ湾に面するUAEには中東地域の主要交易港であるドバイなどがあり、イランに出入りする物資の中継地点になっている。
国連安全保障理事会は6月、2度目の核実験を行った北朝鮮に対し、船舶の貨物検査強化や武器禁輸の拡大などを盛り込んだ制裁措置を決議。制裁の実施を監視する外部専門家機関も新設した。
国連安保理外交筋は28日、毎日新聞の取材に「(国連決議の)重要な成果だ。制裁は機能している。国際社会が参加している」と評価。実効性が疑問視されてきた従来の制裁決議との違いを強調した。
北朝鮮は「対話路線」を鮮明にし、米国との直接協議を求めているが、米国は6カ国協議の枠内で応じるとして、制裁を緩める姿勢を見せていない。今後も国際社会の結束を強調し、北朝鮮に6カ国協議に戻るよう強く促していくとみられる。
北朝鮮にとり武器輸出は重要な外貨獲得源の一つ。中東地域ではイエメン向けスカッドミサイルを運搬中の北朝鮮船が02年に米軍に発見されている。
毎日新聞 2009年8月29日 東京夕刊