◇ ◇ 音譯者・自己紹介 後藤百合子 ◇ ◇
私は大正十年(一九二一)生れの今年八十六歳で、音聲譯を始めて十四五年になります
音聲譯(又は音譯)とは、公立圖書館が行つてゐる視覺障害者向けの福祉事業の一端で、障害者が希望される公的文書・印刷物又は圖書を音聲化して提供すると言ふ奉仕活動の一環です
音譯者を育てる講習會が有り私も基礎を學んでから「わの會」に入會、若い方々に混つて、樂しみ乍ら勉強し、音譯を續けて來ました
この度の「即興詩人」は圖書館からの依頼ではなく私の永年の希望だつたので、先生の御指導と會員の方々に校正で御協力頂き、そのおかげで、二年がかりでやつと完譯にこぎつける事が出来ました。完成テ―プは圖書館にも寄贈致しましたが障害課が窓口のため、正眼者には貸出し出來ないとの事でガッカリして居りました處、國語問題協議會で取り上げて頂けると云ふ幸運に恵まれ、とても有りがたく、嬉しく思つて居ります
若い頃、寶塚音樂學校に入學、豫科を經て、歌劇團の演劇科に編入され、五年間在籍しましたので「雀百まで・・・」のことわざ通り、專門的な學問書の音譯は苦手で、どちらかと云ふと物語り性の有るものゝ方が「性」に合つてゐるかナと思つてゐます。
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