公的支援が十分に届かず孤立しがちな人たちに、人や社会とのつながりをはぐくんでもらおうと、野宿生活者や障害者の支援者らが今月、利用者を分け隔てなく受け入れる無料の寄り合い所を大阪市内に開設した。民家を活用した温かな雰囲気で「さまざまな困難を抱えた人の“駆け込み寺”になれば」と意欲をみせている。
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オシテルヤの運営方法を話し合う支援者ら |
閑静な住宅街で運営されるフリースペース「オシテルヤ」は、木造二階建ての落ち着いたたたずまいでバリアフリーにも配慮。一階居間の床は板張りで、車いすでも出入りできる。
もともと障害者の利用を前提に、ヘルパー三人の発案で二〇〇五年に創設された場所。さまざまな個人や団体が利用し、近所の子どもが遊びに来るなど、地域に開かれた交流スペースとして活用されてきた。
景気悪化に伴い生活困窮者が増加する中、今年からはさらに間口を広げようと、野宿者らの支援団体が暫定的に事務を担い、運営形態を模索。四月には相談会を三回開き、野宿者や生活保護制度の居宅保護を受けた元野宿者延べ十五人が訪れた。
行政の支援策などに結び付ける目的がある一方、散髪などのサービスも提供。集まった人たちが近況や世間話に花を咲かせ、社交場のような機能も持たせる。野宿者が居宅保護を受けた場合、周りの環境になじめず孤立する人も多く、気軽に人とつながり合える場所が求められているためだ。
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暫定的に運営する特定非営利活動法人(NPO法人)「長居公園元気ネット」(住吉区)は、かつて長居公園(東住吉区)で形成されていたブルーテントや小屋掛けの“テント村”で、野宿者支援などに協力。同法人の芳井武志理事(50)は「テント村は野宿生活者だけでなく、若者が悩みを持ち掛けてくることもある“駆け込み寺”だった」と振り返る。
しかし大阪市が二〇〇七年、不法占有物件として強制撤去。「受け継ぐ場所が欲しかった」という。
施設の運営委員会を正式に立ち上げるため、二十六日午後二時から東住吉会館(東住吉区)で設立総会を開く。入会にかかわらず参加できるため、関心のある人の来場を呼び掛けている。
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一方、施設運営には課題も多い。家賃や光熱費などの運営費は会員らが負担。月額が最低一人五百円の会費で賄うが、安定収入のめどは立っていない。運営協力者の人数も不十分で、開放時間はいまのところ不定期。どこまで生活困窮者らの悩みに応えていけるかまだまだ不透明だ。
しかし、運営委員会・暫定委員長の芳井理事は「多くの人が自分のできる範囲で参加してくれれば、出会いによって解決できる問題もある」と強調。協力や来所を希望する人に垣根を設けず、施設とのかかわりを求めていく構えだ。
「あまねく照らす」の意味を込めた「オシテルヤ」。「さまざまな人がかかわり合うことで住みよい地域にしていければ」と支援者らは思いを寄せている。
住所は同市東住吉区南田辺五ノ一一ノ二〇。暫定的な問い合わせはメール(npo_genki_net@hotmail.co.jp)で同法人へ。
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