「傷はぜったい消毒するな 生態系としての皮膚の科学」(光文社新書) 882円(画像クリックで拡大)

 光文社から6月17日に発売された「傷はぜったい消毒するな」という本が売れている。発売からわずか2カ月で5刷(2万6000部)、Amazon.co.jpの新書・文庫部門では第3位(8月25日現在)にランキングされている。

 著者の夏井睦氏は、東北大学医学部卒業の日本形成外科学会認定医で、石岡第一病院傷の治療センター長。2001年、消毒とガーゼによる治療撲滅をかかげて、インターネットサイト「新しい創傷治療」を開設した。夏井氏によれば、消毒は「傷口に熱湯をかけるような行為」。しかし大学病院などでは相変わらず、傷やヤケドを悪化させ、治りを遅らせ、患者に痛みと後遺症を強いる旧来の治療が行われているという。同書では病院治療の歴史に触れながらそうした現状の原因に言及し、同時に皮膚という臓器の持つ驚くべき能力について解説している。

 読者からは「読み終わったときに皮膚についての考え方が180度変わる。コペルニクス的転回が面白い」「ケガの治療の本でもあり、同時に素晴らしい科学の啓蒙書」「医者こそがこの本を読むべきである」との声が多く寄せられている。作家の五木寛之氏も「これは実用書であると同時に、新しい思想をたっぷり含んだ哲学書でもある」と絶賛している。

(文/桑原恵美子)

Amazon.co.jpのサイトで「傷はぜったい消毒するな」を購入