2009年9月10日11時23分
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コンビニエンスストア最大手のセブン―イレブン・ジャパンが、定価販売が原則だった弁当などの値引きを認める方針に転換してから、1カ月余り。現場を歩くと、低価格競争に走るスーパーと違い、値引きはさほど広がっていなかった。背景には、加盟店主の自重に加え、本部の「圧力」も見え隠れする。
■「縮小均衡」懸念する加盟店主
平日の午後4時すぎ、千葉県佐倉市の住宅街の一角にある「セブン―イレブン佐倉表町店」。店員が弁当やおにぎりの棚の前で、「お買得品」「30%引き」と手書きされた札を並べていた。
売れ残りそうな商品をいったん棚からおろし、売り場の裏手にある事務所のコンピューターに、引き下げた新しい価格を登録する。「消費期限 午後9時」の「ねぎ塩豚カルビ弁当」は398円が280円になり、店員がもう一度、棚に並べ直した。
人口約17万人の佐倉市に、「セブン―イレブン」は19店ある。弁当やパンなどを値引きする店は6店。このうち、佐倉表町店の加盟店主、三井義文さん(52)は、本部が不当に値引き制限したとの理由で公正取引委員会の処分を受けた6月よりも前から、店で値引きを始めていた。
「人件費を削っても、ぎりぎりの生活しかできない」からだという。期限が過ぎて捨てていた弁当を3割引きで販売。以前は月40万円分あった廃棄は10万円程度に減り、反対に利益は約43万円から60万円前後に増えた。
だが、こうした動きは、全国でみれば少数派だ。セブンの本部によると、全国約1万2千店のうち、値引きする店は約1%の100店程度。7月に最大で170店まで増えたが、やめる店も出た。ローソンやファミリーマートなどの他社も、「値引き店は限定的」と断言する。
節約志向が強まり、スーパーや百貨店でも安売りが当たり前の時代。なのになぜ、コンビニでは弁当などの値引きが増えないのか。
一つは、一定の利益を得ている加盟店主の中には「値引きは不利益」と自制する人が少なくないからだ。同じ佐倉市にあっても、値引きをしない佐倉大崎台4丁目店の山田善徳さん(54)は「縮小均衡につながる」とその理由を話す。
一時的に業績が改善しても、利益率が高くて稼ぎ頭の弁当や総菜の安売りが定着すれば、結局はもうけが減る。競合店との価格競争になればさらに値下げを迫られかねない。個人経営だけに、加盟店主にはそんな警戒感が強い。