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きょうの社説 2009年9月10日
◎連立政権樹立へ 現実見据えた外交の展開を
民主、社民、国民新党が連立政権樹立に合意したことで、日本の外交・安保政策は大き
な転換期を迎えた。民主党の鳩山由紀夫代表は、オバマ米大統領との電話会談で、日米同盟を基軸としていくことを確認したが、「日米地位協定の改定を提起し、米軍再編や在日米軍基地のあり方についても見直しの方向で臨む」とする3党協議の合意内容は、一歩間違えれば日米関係を冷却化しかねない危険をはらむ。連立政権を束ねる鳩山代表は、これまでとは違う新たな日米同盟のかたちを模索しながらも、現実をしっかり見据えたかじ取りをしてほしい。もともと民主党の安保・外交政策には大きな不安がある。党内には保守派から旧社会党 系までが混在し、意見対立の激しさは、同じ政党とは思えぬほどであり、対立を先鋭化させぬために議論そのものを避ける傾向にあった。そこに社民党、国民新党が加わるのであり、個々の問題で妥協点を見いだしていくのは容易ではなかろう。 たとえば、普天間飛行場移設など米軍再編の見直しについて、米国は再交渉そのものを 拒んでいる。インド洋での給油活動はやめるとしても、それに代わる支援策はどうするか。アフガニスタンでのテロ対策への協力にどうこたえるのか。非核三原則の法制化を押し進め、核持ち込みを完全に拒絶したら、国の安全は保てるのか。 とりわけ社民党は独自色を打ち出そうと、米国の譲歩を強く要求してくるだろう。民主 党は日米同盟の堅持を前提としながら、全体の流れを現実路線に軌道修正していく役割が求められる。 民主党はこれまで、新テロ対策特別措置法や海賊対処法、在沖縄米海兵隊のグアム移転 など、政府の政策にことごとく反対してきた。小沢一郎代表代行が代表当時、在日米軍について「極東におけるプレゼンス(存在)は第7艦隊で十分」と発言し、日米政府関係者を慌てさせたこともあった。 民主党の外交・安保政策について不安を抱いているのは、衆院選で民主党を支持した多 くの国民も同じである。民主党は迷うことなく現実路線を歩み、国民の懸念を払しょくしてもらいたい。
◎高卒就職の支援強化 職場定着指導も強めたい
県と県教委は、来春の高卒予定者の就職戦線が厳しさを増していることから、9月補正
予算で「高卒者就職支援員」を各高校に派遣し、教員らと連携して就職を後押しする事業を行う。就職氷河期の再来と言われるほど来春学卒者の雇用環境は厳しくなっており、求人開拓などで関係者一丸の取り組みが期待されるが、就職支援活動の強化と同時に、就職した若者の職場定着指導にも一段と力を入れてもらいたい。企業の高卒採用選考が今月16日に解禁される。しかし、県内の新規高卒者求人数は7 月時点で1440人と前年同期より50%以上も減少し、高卒就職希望者数(2169人)を大きく下回っている。このままでは高卒無業者が多く出る恐れがあるため、進路指導のベテランである教員OBや元校長、企業の人事担当経験者ら20人を就職支援員として高校に配置し、求人需要の調査、掘り起こしに尽力してもらう予定という。 一方、足もとの雇用情勢も悪化の一途をたどっており、全国の7月の完全失業率は5・ 7%と過去最悪を記録した。年代別に見ると15〜24歳が9・9%、25〜34歳が7・1%と高い。若年層の失業の深刻さを示す数字であるが、その要因の一つとして若者の早期離職率の高さが指摘される。 新卒社員の離職に関して、かねて「7・5・3現象」という言葉が使われる。就職後3 年以内の離職率が中卒7割、高卒5割、大卒3割という状況が全国的な問題であり続けているのである。県内の高卒者の早期離職率は2005年3月卒業者の場合で42・3%となっている。 希望と現実のギャップの大きさや職場の人間関係の希薄さなどが早期離職の理由に挙げ られ、学校も企業側もしっかりした職業観の育成や職場体験、研修などに力を入れている。県は今年、「良き先輩社員」として新入社員を指導できる能力向上のセミナーを開催したが、再就職が一段と困難になっているだけに、職場定着支援策にさらに知恵を絞ってもらいたい。就職内定後のフォローも怠ってはなるまい。
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