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日本が変わる:3党連立合意 「単独」にらむ民主 来夏までの「暫定色」

 ◇参院選で過半数狙い

 民主、社民、国民新の3党は9日、連立政権樹立で合意し、今月16日召集の特別国会での鳩山由紀夫首相指名を経て鳩山新内閣が発足することが確定した。ただ、連立協議では外交・安全保障政策で民主党と社民党の足並みの乱れが表面化。合意はしたものの、衆院選で圧勝した民主党は来夏の参院選で単独過半数を目指しており、社民党との連立には「期限付き」の意識もにじむ。これに対し社民党がなおさら独自色を強調することになれば連立が揺らぎかねず、新政権は対米外交で火種を残す形となった。【田中成之、小山由宇】

 「社民党、国民新党、さらに民主党3党で、政権交代を実現するべく、衆院選で戦ってきた。国民のために働く合意ができたことを大いに喜び、感謝申し上げたい」

 鳩山氏は9日、国会内で記者会見し、社民、国民新両党との連立政権樹立の合意を手放しで喜んでみせた。

 3党は連立合意の中で、内閣の中に「基本政策閣僚委員会」を設け、政策調整を行うことを申し合わせた。国家戦略局担当相が内定した菅直人代表代行と、社民、国民新両党から入閣する党首級の閣僚がメンバー。社民、国民新両党の意向は閣僚委員会を通じ、新政権の政策決定システムに反映される仕組みは一応、調った。しかし、予算の骨格を決める国家戦略局など政権運営の中枢を仕切るのは民主党。来夏には参院選を控え、連立の枠組みには「暫定色」もかいま見える。

 衆院選で308議席という圧倒的多数を得た民主党だが、参院(定数242)で単独過半数割れの状況は変わらない。参院の民主党議員は109人。国民新党の5人、新党日本の1人、野党系無所属で作る新緑風会の4人と統一会派(江田五月議長は会派に入らないため計118人)を組むものの、過半数確保には社民党の5議席が不可欠。民主党が社民、国民新両党との連立を必要とするゆえんだ。

 しかし、10月25日投開票の参院静岡、神奈川両補選で民主党が2勝すれば、民主、社民両党の力関係は微妙に変わる。民主系会派は120人となり、無所属の糸数慶子氏(沖縄選挙区)か川田龍平氏(東京選挙区)のどちらかが会派入りすれば、議長を除く参院241人の過半数121人に達するからだ。

 社民党との連立協議を通じ、民主党には「少数議席で振り回すのはいいかげんにしてほしい」との不満が募った。糸数氏はすでに、今秋の臨時国会前の民主会派入りを検討中。川田氏も9日、毎日新聞の取材に「厚生労働委員会に入れるなら、民主会派入りも考えなくもない」と語った。社民党5議席の「重み」は徐々に薄れつつある。

 「(来年夏の)参院選でもしっかり勝利させていただき、より私たちの考え方が実行できる態勢を作りたい」

 民主党の岡田克也幹事長は9日、東京都内で開かれた労組の大会であいさつし、参院選への支援を要請するとともに民主党単独政権への意欲を隠さなかった。自民党内には参院議員引き抜きを警戒する声も上がっている。

 ◇対米外交に火種 「普天間移設」近く山場

 民主、社民、国民新3党の連立協議は、外交・安全保障政策で対米重視の「現実路線」へと転換を図る民主党と、「理念」を優先する社民党の溝が埋まらないままの決着となった。最後は民主党の衆院選マニフェストに明記された文言通りの修正を社民党が要求し、拒む理由のなくなった民主党が渋々受け入れる形となった。今後、米軍普天間飛行場(沖縄県宜野湾市)のキャンプ・シュワブ沿岸部(同県名護市辺野古)への移設計画をどうするかで再び両党の主張がぶつかる場面も予想される。

 民主党は従来、(1)日米地位協定の改定(2)普天間飛行場の県内移設反対(3)インド洋で給油活動にあたっている海上自衛隊の撤退--で社民党と歩調を合わせてきた。しかし、政権が視野に入ってきた衆院選前から主張を修正。インド洋からの撤退はマニフェストに盛り込まず、協定改定と移設見直しの文言も弱めることで、対米配慮をにじませた。

 「米軍再編について合意済みだと米政府は主張している。両国政府で合意したことを含めてきちんと議論を提起していかなければならない」。外相に内定している岡田克也幹事長は9日の幹事長会談後、記者団に連立合意を尊重する姿勢を示す一方、こうも付け加えた。「米軍再編、基地の問題、地位協定を一気に机に並べて交渉するのではなく、順番を付けて進めないと解決できない」。9月下旬に予定されている鳩山由紀夫代表の訪米時にこれらの問題をいきなり提起するつもりはないということだ。

 一方、社民党はインド洋からの撤退要求を事実上、棚上げする形で、地位協定・基地移設に強くこだわった。特に普天間飛行場の移設問題は今秋、山場を迎える。政府は沖縄県など地元が求める移設先の沖合移動を「微修正」で受け入れることも視野に移設工事の環境影響評価(アセスメント)を進めており、10月には県知事の意見が政府に提出される。民主党は従来の主張通り県外・国外移設への見直しを米側に求めるのか、計画を進めるのかの判断を迫られる。

 また、在沖縄海兵隊のグアム移転を巡っても総額28億ドルを上限とする費用負担を来年度予算でも続けるのか。「鳩山首相-岡田外相」は連立運営に気を配りながら対米外交のかじを取ることになる。

 ◇連立、90年代から継続 保守・中道にリベラル色も

 民主、社民、国民新3党の連立合意により、90年代からの連立政治が継続することになった。社民党にとっては11年ぶりの連立復帰。これまでの「保守・中道」に加え、リベラル色がにじむ肌合いとなる。

 政権交代を伴う連立政権は、93年、政治改革をめぐる自民党分裂、衆院選での自民党過半数割れを経て小沢一郎氏を中心に結成した非自民8党派連立が前例。自民党は55年の保守合同以来初の野党転落となった。東京佐川急便からの1億円借り入れ問題などで細川内閣が総辞職した後、社会党を排除する統一会派問題に反発した同党が連立を離脱。続く羽田内閣は少数内閣に転じ、予算成立後に総辞職した。

 自民党は94年、政権奪還をかけ55年体制下のライバル社会党と、非自民8党派から分かれた新党さきがけと連立を結成。首相は社会党の村山富市委員長で一本化した。96年の民主党結党以降は社さ勢力が衰退、橋本政権下で両党は閣外協力に転じた。

 98年参院選での自民党敗北を受けて発足した小渕政権は当初単独政権だったが、参院の過半数割れで折からの金融危機への対応が遅れ、仇敵(きゅうてき)の小沢氏率いる自由党と連立。99年10月には参院の体制を盤石にしたい自民党の呼びかけで公明党が連立入り。現在の自公体制の原形となった。

 小渕政権末期には小沢氏の連立離脱方針をめぐって自由党から分裂した保守党(後に保守新党)が政権残留を決定。00年、小渕氏の突然の入院で首相を引き継いだ森政権のもとで「自公保」連立を樹立。保守新党は03年11月の総選挙で敗北、自民党に合流した。

毎日新聞 2009年9月10日 東京朝刊

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