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「おめでた」の時は公的保険制度を使おう
2009年09月08日 出産は嬉しいものですが、「出産費用の支払い」「仕事に就けないことによる収入ダウン」など、家計に与える影響は少なくありません。そのため、各種公的保険制度には「出産に伴う支出」や「収入の減少」をカバーするための様々な仕組みが用意されています。今回は「おめでた」の際に利用できる公的保険制度について考えてみます。
出産には“健康保険”が使えない
先日、日本の昨年1年間の出生数が109万1,156人、合計特殊出生率(1人の女性が生涯に産む子供の数の推計値)は1.37との発表が行われました(厚生労働省/平成20年人口動態統計(確定数)の概況)。小さな命が“29秒おきに”この世に生を受けていることになり、合計特殊出生率も過去最低となった平成17年の1.26から3年連続で徐々に上昇しています。
わが子の誕生ほど嬉しいことはありませんが、出産に伴う費用のことを考えると、手放しで喜んでばかりもいられないかもしれません。分娩に伴う費用は40万円前後かかりますが、通常は「健康保険」の適用がないため全額自分で負担をすることになります。加えて、マタニティ用品やベビー用品の購入などもあり、出産には何かとお金がかかるものです。「できちゃった婚」のように結婚後間もなく出産を迎える場合には、結婚費用と出産費用が続けて発生するため家計に与える負担も一層大きく、預貯金だけでまかなうのは容易ではありません。
子ども一人につき“38万円”がもらえる「出産育児一時金」
日本では、すべての国民が何らかの公的医療保険制度(健康保険、国民健康保険等)に加入しています。これらの制度には、出産に際して利用できるものとして「出産育児一時金」「家族出産育児一時金」などが設けられています。
出産育児一時金、家族出産育児一時金は「出産やその前後に必要となる費用の負担軽減」を目的としており、子供一人につき38万円(産科医療補償制度に加入していない医療機関等で出産した場合には35万円)が受け取れます。子供の数に比例して受け取れる金額も多くなり、さらに10月からは子供一人につき“42万円”への増額も予定されています(平成23年3月末までの暫定措置)。出産育児一時金等だけで分娩料や出産関係費用のすべてをまかなえるわけではないかもしれませんが、家計の大きな助けになることには間違いありません。
通常、出産育児一時金等は出産後に申請をして受け取るため、一時的に分娩料の全額を自己負担する必要が出てきます。そこで、まとまったお金を用意することが困難な場合には、
①「出産費貸付制度」(出産育児一時金を“前借り”するような制度)
②「医療機関等による受取代理制度」(出産育児一時金が医療機関に直接支払われる制度)
などの仕組みを利用することもできます。加入している健康保険制度により扱いが異なることがあるため、確認をしてみると良いです。
給料の“4割”が補てんされる「育児休業給付」
皆さんは「育児休業」という制度をご存知でしょうか? 「育児休業」とは、原則として1歳未満の子供を育てるために勤めを休むことができる仕組みで、育児・介護休業法という法律に定められた制度です。最近では、この制度を利用して出産後も退職せずに子育てを行い、一段落したら職場に戻って働く方が少なくありません。ただし、育児休業中は働いていないのですから、通常は会社から給料が支払われない場合が多く、家計収入がダウンしてしまいます。
育児休業を取ったことによる収入減に対しては、雇用保険の「育児休業給付」を利用できる場合あります。育児休業給付には、
①「育児休業基本給付金」
(育児休業期間中について、最大で“給料の3割相当分”が支払われる制度)
②「育児休業者職場復帰給付金」
(育児休業が終了してから6か月勤務した場合、育児休業期間中について“給料の1割相当分”が支払われる制度)
の2種類があります。つまり、出産しても会社を辞めず、育児休業が終わってから半年間勤めれば、育児休業中の期間について、“まったく働いていないのにもかかわらず”最大で給料の4割分の収入を得られるわけです。職場復帰給付金については、平成22年3月末までに育児休業を開始した場合には1割ではなく“2割”相当分が支払われる特例もあり、“男性”でも利用が可能な制度です。
厚生年金の保険料を払わなくて良い「保険料免除制度」
育児休業中には厚生年金・健康保険の保険料を払わなくて良い「保険料免除制度」もあります。厚生年金や健康保険の保険料は会社と従業員が半分ずつ負担するものですが、どちらの支払いも免除される仕組みです。社会保険料負担が企業経営を圧迫するケースも少なくない昨今、保険料の支払いが免除される仕組みは会社にとってもコスト低減が可能になる嬉しい制度といえます。
厚生年金の保険料は将来の年金額に影響を与えます。しかし、育児休業中の免除期間については、将来、年金額を計算する際は「保険料を納めた期間」として扱われるため、免除制度を利用して保険料を支払わなくても、年金を受け取る際に不利益を被ることがありません。
申請をしなければもらえない
公的保険制度には意外にも手厚い仕組みが用意されています。「育児休業給付」や「保険料免除制度」のようにサラリーマン等しか利用できない制度もあるため、「社会保障の“公平性”」という面で問題があることは否めませが、多くの方が制度を活用し経済的サポートを受けられることも事実です。ただし、申請をしなければ制度の利用はできず、黙って待っているだけではさまざまな恩恵にあずかることもありません。制度をもれなく利用するためには、制度の仕組みをよく理解する私たち一人ひとりの努力も必要です。
出産には“健康保険”が使えない
先日、日本の昨年1年間の出生数が109万1,156人、合計特殊出生率(1人の女性が生涯に産む子供の数の推計値)は1.37との発表が行われました(厚生労働省/平成20年人口動態統計(確定数)の概況)。小さな命が“29秒おきに”この世に生を受けていることになり、合計特殊出生率も過去最低となった平成17年の1.26から3年連続で徐々に上昇しています。
わが子の誕生ほど嬉しいことはありませんが、出産に伴う費用のことを考えると、手放しで喜んでばかりもいられないかもしれません。分娩に伴う費用は40万円前後かかりますが、通常は「健康保険」の適用がないため全額自分で負担をすることになります。加えて、マタニティ用品やベビー用品の購入などもあり、出産には何かとお金がかかるものです。「できちゃった婚」のように結婚後間もなく出産を迎える場合には、結婚費用と出産費用が続けて発生するため家計に与える負担も一層大きく、預貯金だけでまかなうのは容易ではありません。
子ども一人につき“38万円”がもらえる「出産育児一時金」
日本では、すべての国民が何らかの公的医療保険制度(健康保険、国民健康保険等)に加入しています。これらの制度には、出産に際して利用できるものとして「出産育児一時金」「家族出産育児一時金」などが設けられています。
出産育児一時金、家族出産育児一時金は「出産やその前後に必要となる費用の負担軽減」を目的としており、子供一人につき38万円(産科医療補償制度に加入していない医療機関等で出産した場合には35万円)が受け取れます。子供の数に比例して受け取れる金額も多くなり、さらに10月からは子供一人につき“42万円”への増額も予定されています(平成23年3月末までの暫定措置)。出産育児一時金等だけで分娩料や出産関係費用のすべてをまかなえるわけではないかもしれませんが、家計の大きな助けになることには間違いありません。
通常、出産育児一時金等は出産後に申請をして受け取るため、一時的に分娩料の全額を自己負担する必要が出てきます。そこで、まとまったお金を用意することが困難な場合には、
①「出産費貸付制度」(出産育児一時金を“前借り”するような制度)
②「医療機関等による受取代理制度」(出産育児一時金が医療機関に直接支払われる制度)
などの仕組みを利用することもできます。加入している健康保険制度により扱いが異なることがあるため、確認をしてみると良いです。
給料の“4割”が補てんされる「育児休業給付」
皆さんは「育児休業」という制度をご存知でしょうか? 「育児休業」とは、原則として1歳未満の子供を育てるために勤めを休むことができる仕組みで、育児・介護休業法という法律に定められた制度です。最近では、この制度を利用して出産後も退職せずに子育てを行い、一段落したら職場に戻って働く方が少なくありません。ただし、育児休業中は働いていないのですから、通常は会社から給料が支払われない場合が多く、家計収入がダウンしてしまいます。
育児休業を取ったことによる収入減に対しては、雇用保険の「育児休業給付」を利用できる場合あります。育児休業給付には、
①「育児休業基本給付金」
(育児休業期間中について、最大で“給料の3割相当分”が支払われる制度)
②「育児休業者職場復帰給付金」
(育児休業が終了してから6か月勤務した場合、育児休業期間中について“給料の1割相当分”が支払われる制度)
の2種類があります。つまり、出産しても会社を辞めず、育児休業が終わってから半年間勤めれば、育児休業中の期間について、“まったく働いていないのにもかかわらず”最大で給料の4割分の収入を得られるわけです。職場復帰給付金については、平成22年3月末までに育児休業を開始した場合には1割ではなく“2割”相当分が支払われる特例もあり、“男性”でも利用が可能な制度です。
厚生年金の保険料を払わなくて良い「保険料免除制度」
育児休業中には厚生年金・健康保険の保険料を払わなくて良い「保険料免除制度」もあります。厚生年金や健康保険の保険料は会社と従業員が半分ずつ負担するものですが、どちらの支払いも免除される仕組みです。社会保険料負担が企業経営を圧迫するケースも少なくない昨今、保険料の支払いが免除される仕組みは会社にとってもコスト低減が可能になる嬉しい制度といえます。
厚生年金の保険料は将来の年金額に影響を与えます。しかし、育児休業中の免除期間については、将来、年金額を計算する際は「保険料を納めた期間」として扱われるため、免除制度を利用して保険料を支払わなくても、年金を受け取る際に不利益を被ることがありません。
申請をしなければもらえない
公的保険制度には意外にも手厚い仕組みが用意されています。「育児休業給付」や「保険料免除制度」のようにサラリーマン等しか利用できない制度もあるため、「社会保障の“公平性”」という面で問題があることは否めませが、多くの方が制度を活用し経済的サポートを受けられることも事実です。ただし、申請をしなければ制度の利用はできず、黙って待っているだけではさまざまな恩恵にあずかることもありません。制度をもれなく利用するためには、制度の仕組みをよく理解する私たち一人ひとりの努力も必要です。
株式会社 住まいと保険と資産管理
CFP・中小企業診断士・社会保険労務士
大須賀 信敬
提供:有限会社イマジネーション
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