平成21年9月4日
草彅剛さん
恋あり、戦ありの戦国絵巻
▼映画「BALLADバラッド 名もなき恋のうた」が9月5日から名駅前ミッドランドスクエアシネマほか東宝系で公開されます。原作は「映画クレヨンしんちゃん 嵐を呼ぶアッパレ!戦国大合戦」(原恵一監督・文化庁メディア芸術祭アニメーション部門大賞)。物語は戦国時代を舞台にした一介の侍と一国の姫の究極の悲恋です。無敵を誇る侍・井尻又兵衛役を熱演したのは草彅剛さん。映画について草彅さんに伺いました。
【プロフィル】1974年、埼玉県春日部市出身。国民的グループSMAPのメンバーとして幅広い活動を繰り広げながら、数々の映画、ドラマ、舞台に出演する日本のトップアーティスト。
この映画は、山崎貴監督(「ALWAYS 三丁目の夕日」「ALWAYS続・三丁目の夕日」)がハリウッドの製作した「ラストサムライ」の現場のすごさに驚き、「なぜ日本人にこういう映画作りができないんだ」と非常にくやしく思われていたこと、今回原作となった「クレヨンしんちゃん」と出合い、「この話なら、僕らの方法で作った時代劇で戦える。原作を尊敬しているから、ご自分が泣いた印象を自分なりに描きたい」と決意されたのがきっかけだったそう。
主人公は僕が演じる小国の侍・井尻又兵衛と新垣結衣さん演じる廉姫で、戦国時代ゆえにお互いの想いを告げられず、秘めた恋です。僕は戦国版タイタニックだなと。悲恋だけでなく、2人の想いや戦いもきちんと描かれています。新垣さんとは緊張してあまりしゃべらなかったですね。役の上では幼なじみとはいえ、身分が違う。距離感がちょうどいい感じでした。新垣さんはぼくらの姫という存在でしたし、引っ張ってもらって感謝しています。
甲冑、かつら、着物も着古した感じがあって感情移入しやすかったですし、衣装やセットから、ゆっくりと動いたほうがいいのか、声のトーンやしぐさなども考えて繊細にキャラクター作りをしました。僕も女性に強くないので、そのへんが又兵衛に似ているのかな(笑)。
春日城に大倉井軍が攻め込んでくるシーンでは、300人近いエキストラの方たちが集結。春日軍の大将である僕が大倉井軍にエキストラに対して「かかってこいや~」と叫ぶと、大倉井軍も「おぉ~」と叫んでテンションを高め、本番に向かいました。戦いの場面では、びっくりするくらい長回しのシーンもあって、槍と長刀(なぎなた)の戦闘シーンはチャレンジでした。槍は又兵衛の魂。槍のような心を持ち、槍を使って強い立ち居振る舞いをしないといけない、自然にわきあがってくる心を大切にしようと思いました。ほかにも大倉井高虎役の大沢たかおさんとの一騎打ちのシーン、廉姫との別れのシーンなど初めての経験ばかりでした。
又兵衛は男らしく、強い存在。僕のなかにも大切なもの、守りたいものを守る気持はありますが、又兵衛になりきるにはどうすればよいか。自分と向き合い、足らないところをどう補うか、悩みに悩んで、又兵衛の“ま”の字が抜けないくらい、集中していました。又兵衛と廉姫は強い意志を持ち、お互いの恋の感情に蓋をしていても、チラチラと光がもれてしまう。姫と家臣という立場でしか思いを表現できず、自分の大切なものをただひたすらに守ろうとしたり、必死に生きようとする姿がとても魅力的です。今回はその中に飛び込んでせいいっぱい演じてみた映画です。ぜひ、ご覧になってください。