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福島・自立更生施設、立ち往生 地元理解いまだ得られず

完成したものの、門が閉まったままの自立更生促進センター。開所の見通しはまだ立たない=福島市狐塚

 刑務所の仮出所者を一時的に受け入れ、立ち直りを支援する国の宿泊施設「福島自立更生促進センター」(福島市)が、依然として立ち往生している。昨年8月下旬を予定した当初の開所計画から1年が過ぎたが、地元住民側の理解は得られないまま。法務省は現在、市議会が提案した「地域懇談会」設置に向けて準備を進めているが、住民側の不安と法務省への不信感は大きく、出口はまだ見えてこない。(福島総局・菊地奈保子)

 センターは刑務所を出ても帰る場所のない人を受け入れ、生活の基盤をつくって更生してもらおうと計画された。

 受け入れのための民間施設が全国に103あるが、法務省によると2007年、希望者の約74%が定員の問題などで断られた。状況を改善しようと、福島市など全国4カ所に国営施設の建設が計画された。

 法務省保護局はこの1年、反対する地元住民らと定期的に話し合ってきた。住民側は「センター周辺には多くの学校がある。子どもたちが心配だ」と不安を訴える。保護局は入所者の送り迎えなどの不安解消策を示すが、住民側は計画撤回を譲らない。

<遅すぎた説明会>
 説明が住民に受け入れられないのも無理はない。住民たちが施設の計画を知ったのは、建物がほぼ完成した昨年6月ごろ。反対運動が始まってようやく、法務省は学校関係者や住民に向けた説明会を開いた。

 「隠すようにして施設を建てた」と言われても仕方がない進め方で、地元住民の不信は根深い。

 法務省は、子どもが被害に遭った事件の加害者や、下着窃盗を含む性犯罪者らを受け入れない方針を示している。だが、子どもを持つ地元の女性の一人は「法務省のことだから、気付かれないように性犯罪者を入れるかも」と不信感を隠さない。

 さらに法務省は、個人が特定されない範囲で入所者の情報も提供するという。しかし、今年6月に全国で初めて開所した北九州市の自立更生促進センターは、入所者の有無さえ明らかにしていない。福島市のセンターが、例外扱いされるのかどうかは不透明だ。

<「怖い人いない」>
 犯罪行為や刑罰、更生への考え方の違いが、福島市のセンターの問題の背景になっている。

 福島保護観察所の岡田和也統括保護観察官は「多くの受刑者はまじめに生きようとしている。怖がらないでほしい」と訴える。しかし、仮出所者らと実際に接する機会がほとんどない地元住民の中には「どんな理由があるにせよ、犯罪を起こしたことに変わりはない」と、警戒感を先行させる人も少なくない。

 福島市でサッシ業を営む斎藤豊次さん(70)は、約25年前から仮出所者らを雇用している。これまでに数百人を受け入れた経験から「みんな一生懸命に働いてくれる。怖い人なんていない。一度刑務所に入ったらもう駄目だと言われてしまっては、どうしようもない」と話す。

 法務省は現在、センターについて話し合う懇談会のメンバーとして、地元町内会関係者や住民、有識者らの人選を進め、早ければ今月中にも発足する。懇談会ではセンターの開所を前提にせず、更生保護と地域のかかわりを議論するところから始めるべきだろう。


2009年09月06日日曜日

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