2009年9月9日0時24分
ここへきて中国株は大きく売られている。8月は20%を超える下落だ。8月の新規貸し出しが前月を大きく下回ったとの報道や、新規株式公開による株式市場の需給悪化懸念などによるものだろう。だが、これらは一時的なもので心配はいらないだろう。
景気の状況は、今年の第2四半期には、V字回復し、GDPの実質成長率は前年同期比7.9%となった。自動車や住宅を中心とした個人消費の伸びや、政府の総額4兆元(約55兆円)規模の景気対策による政府支出の伸びが輸出減少のマイナス要因を相殺し、かつ成長を押し上げているのだ。今年の先進国のマイナス成長率予想を見ているとまさにデカップリング(分離)が起きている気がする。
しかし、中国経済に問題がないわけではない。中長期的には社会保障制度づくりが遅れている。また、輸出製造業には力を入れて発展してきたが、金融や物流といったサービス業はまだ遅れている。規制や許認可制度が厳しい国ではサービス業が発展しないということなのか。さらに、格差や貧困の問題が深刻であることなどである。
しかしながら何と言っても人口約13億人の国である。潜在的な成長力は計り知れない。個人消費のGDPに占める割合は35%程度と言われている。これは先進国に比べて相当低い。労働分配率も50%を切っていると思われる。それを政府主導で数%引き上げるだけでも消費拡大の余地がある。地方の農産物の買い上げ価格を数%上げても都市部との格差が縮まり、農村部の所得増による消費刺激となろう。政府が金融、為替政策のカジ取りを誤らなければ、8%程度の成長率はこれからも維持可能ではないか。(QJ)
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「経済気象台」は、第一線で活躍している経済人、学者など社外筆者の執筆によるものです。