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政権交代 秋田から問う

 「大学の医師引き揚げに拍車が掛かるかもしれない」。仙北市の市立角館総合病院の後藤薫副院長(産婦人科)は、衆院選で大勝した民主党のマニフェスト(政権公約)を読みながら、こう直感した。

 深刻化する医療崩壊を食い止めるため、民主党が選挙で訴えたのが医師の養成数を1・5倍に増やすという構想。その先に描くのは、医師数を経済協力開発機構(OECD)加盟国の平均値(人口1千人当たり3人)並みに押し上げ、地域医療を悩ます医師不足・医師偏在を、根本から解決しようというばら色の未来だ。

 しかし、ことはそう単純ではない。医学部の定員拡充の実現は、それに見合った教官数の確保が前提になる。教官は、もちろん医師だ。大学から医師の派遣を仰ぎ、ぎりぎりの医師数で地域医療を支える多くの拠点病院にとって、医師の増加を急ぐ国の政策は、その途上で地域医療の崩壊を加速させかねないという皮肉な危険性をはらむ。

 「課題はまだある。養成数を増やすというが、一人前の医師として業務に就けるのは10年、15年先。それまで医療現場は、体力が持たない。問いたいのは即戦力をどう確保すればいいのか、だ」。地域医療の最前線はまさに土俵際。後藤副院長の訴えは悲鳴に近い。

 窮状は市中病院に限った話ではない。全県の周産期医療の拠点施設として、県補助で秋田赤十字病院(秋田市)に総合周産期母子医療センターが開設されたのは一昨年。「全県」の“看板”を背負ったことで、ハイリスク分娩(ぶんべん)の紹介、搬送が増えた。

 産後に早期新生児らを集中管理する新生児集中治療室(NICU)9床と、NICUから出た新生児の経過を見る後方病床(GCU)27床が常時ほぼ満床という現状からも、リスクの高い分娩がいかに多いかが浮かび上がる。

 産婦人科の医師は7人。このうち、お産を扱う産科医は4人だ。「自分たちを支えているのは医師としての使命感。だが、ここで一人でも倒れたら、現状の医療サービスは維持できなくなる」と平野秀人・同センター長。初期救急で対応できない症例を扱う高次機能病院ですら、薄氷の上にあるのだ。

 研修医に幅広い診療能力をつけさせようと2004年に必修化された初期臨床研修、医療の現場に市場原理を本格導入する結果となった診療報酬のマイナス改定…。自公政権がとった政策は一方で地域医療を疲弊させ、それはまた、ときに霞が関主導との批判も受けた。

 民主が「脱官僚」をうたって国民の支持を集めた以上、政治の責任において、地方の現状を十分に把握した上での政策立案が求められる。

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2009.9.9付

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