きょうのコラム「時鐘」 2009年9月9日

 笑うしかないドタバタ劇に映る。16日の首相指名選挙を巡って、自民党の迷走が露呈した

麻生総裁は辞任を決めた。後任はまだ決まらない。だから白票を投じよう。いや、それはけしからんと、もめにもめて、やっと決着した。自らの手で首相を選ぶ道が閉ざされたというのに、何のための内輪もめか

黒沢明監督の名画「七人の侍」は、村人が侍を雇って野武士の襲撃を撃退する物語である。「首が飛ぶっていうのに、ひげの心配をしてどうする」というせりふがある。侍たちを雇ったのはいいが、乱暴を働くのではという不安が広がり、村人が右往左往する。命を懸けて野武士と戦うという大事の前に、小事にこだわる姿を見て、長老がそう一喝する

仲間の首がたくさん飛んだ派閥では、建て直しに懸命である。ボスが消えたところもある。が、派の結束を誇ったところで、転がり込む閣僚の座は1つもない。政権は向こうに移る。首の皮1枚つながった人たちが、ひげの手入れに励むおかしな姿である

出直しの期待を込めて、きついおきゅうを据えた人も少なくない。それがまだ分からないとみえる。