川口市内の生活道路275路線に時速30キロの速度規制を設けようと、市と県警が合同で調査を進めている。地域住民だけが使う狭い道路のはずが、場所によっては幹線道路への抜け道となり、個別の規制がなければ法定の60キロで走ってもスピード違反に問われない。地元住民から「車が高速で走り抜け、今にも子供がはねられそう」と心配する声が上がっているためだ。
対象は、地元住民から要望があった275路線、計約74・6キロ。県警によると、一度にこれだけ大規模に規制を検討するのは「県内では初めて」(交通規制課)。
川口市では06年、生活道路の市道を歩いていた保育園児の列に車が時速50~55キロで突っ込み、4人が死亡、17人が重軽傷を負う事故が発生した。当時、この市道は個別の規制がなかった。市は事故を受け、「生活道路でも速度規制が必要だった。県公安委員会の権限だが、地域の実情をより把握できる市長権限にしてほしい」と国に要望したが、受け入れられなかった。
一方で、県警から「希望する路線を挙げてくれれば協力する」と申し出があったため、市は08年に全184町会から要望を聞いた。これに基づき現在、県警と合同で通行量や周辺環境などを調査している。規制可能と判断されれば順次、手続きに入るという。
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川口市の神根地区を訪ねた。同市源左衛門新田の町会長、早舩(はやふね)高明さん(57)は「通学路でも平気で40~50キロ出す車もある。今まで事故がなかったのは運が良かっただけ」。
町会は5路線を申請している。規制の是非について早舩さんは、「規制ばかりで窮屈な生活も嫌だけれど、子供たちの安全を守るためなら仕方ない。申請は、これからも事故が起きないでほしいという住民の願いです」と話す。
埼玉大の久保田尚教授(交通工学)は「取り締まりがなければ、規制を守らない人が少なくないが、マイナスになることはない。効果がない所には追加的にハンプの設置などを考えてもよいのでは」と提案する。ハンプとは、速度を落とすための路上のこぶのことだ。市も「予算の問題もあるが、規制に合わせて注意を促す路面表示などの対策も検討したい」としている。【町田結子】
毎日新聞 2009年9月8日 地方版