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国際結婚:破局後の子供連れ去り 高額弁護費に母親悲痛

 国際結婚した夫婦の離婚を巡り、一方の親が子を母国に連れ帰るトラブルが相次いでいる問題で、海外から子を連れ戻した日本人女性2人=いずれも神奈川県在住=が毎日新聞の取材に応じ、経験を語った。高額な弁護士費用の負担を強いられ、精神的にも追い込まれ体調を崩した。国際結婚の紛争解決ルールを定めたハーグ条約を日本が締結していないのが原因だとの批判が高まる中、母親の悲痛な訴えは政府に早急な対応を迫っている。【工藤哲】

 ◇「日本に帰らぬ」

 40代の女性は07年春、英国人の夫から国際電話で突然告げられた。「僕と2人の子どもたちは、もう日本に帰らない。居場所は言わない。子どもにはいつか会えるようにする」。夫の実家から一足先に日本に戻ってきたばかりだった。

 大手外資系企業の日本支店に勤務していた夫と知り合い、20代だった97年に結婚。言葉の壁もあり、夫との間に広がるズレを感じてはいたが、「連れ去り」の予兆には気づかなかった。国際電話の後、しばらくは子の居場所が分からなかった。思い当たる英国の学校に手当たり次第、問い合わせた。睡眠薬を飲んでも寝られない日々が続いた。

 インターネットなどで解決法を探した末、英国の弁護士に依頼して現地の裁判所に提訴し、元の環境に戻すよう求めた。勝訴し、子どもを日本に連れ帰った。弁護士報酬などに約700万円がかかったが、子を取り戻すため仕方なかった。

 その後正式に離婚した女性は「多くの日本の弁護士にも相談したが、ほとんどが『子が日本にいないのに裁判はできない』などと言って断られた。ハーグ条約を締結していないことで、個人にかかる負担は重い」と語る。

 ◇すべてを裁判に

 40代の翻訳家の女性は93年、日系米国人の男性と結婚し、2人を産んだ。夫の実家があるハワイと日本を行き来する生活だったが、度重なる環境の変化で体調や夫婦関係が悪化し、04年に離婚した。

 離婚後もしばらくは協力して育児をしていたが、05年夏になって夫から「夏休みに2人の子どもをハワイに連れて行きたい」と切り出された。そのまま夫と子は帰らず、連絡先を聞いても、「メールで送る」と言ったきり、返事はなかった。

 たまらず、ハワイに行くと、夫は「日本に帰国するつもりはない」と言い切った。子どもが「日本に帰りたい」と話したため、女性は現地の弁護士に依頼し、裁判を起こした。訴えは認められ、子どもを日本に連れ帰ったが、600万円以上の費用を要した。

 女性は一連の手続き中、うつ状態になり、薬が手放せなかった。「離婚で分与された財産もすべて裁判で使ってしまった。日本が条約締結国なら、もっと容易に対応できたのではないか」とため息をついた。

    ◇

 ハーグ条約は83年発効で、欧米を中心に81カ国(5月現在)が締結。子どもを連れ出された親が手元に戻すよう自国政府に申し立てた場合、相手方の国の政府は迅速に子どもの居場所を確認し、元の国に帰す協力義務を負う。外務省は「民事不介入」の立場を崩していないが、国際結婚や離婚の増加を背景に「締結できるか検討中」と説明。自国民保護の観点から慎重論もある。

毎日新聞 2009年9月5日 15時00分

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