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【検証 CO2、30%削減】(2)冷え込む生産、雇用に影響

2009/8/27

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 ■産業界「民主政権」に見直し要請も


 今月4日に東京・大手町の経団連会館で開かれた民主党のマニフェスト(政権公約)説明会。会場には1000人以上の企業関係者らが詰めかけ、壇上の岡田克也幹事長の発言に聞き入っていた。

 「これは達成しなければならない目標だ。そのためにはどういう知恵を出すのか。地球温暖化対策税だけでなく、(企業に排出上限を割り当て過不足を取引する)排出権取引制度など、想定されることはすべてやらなければならない」

 岡田氏が2020年に二酸化炭素(CO2)などの温室効果ガス排出量を1990年比25%(2005年比30%)削減するという民主の目標を語った場面では、その厳しい姿勢に出席者の多くが息をのんだ。

 ◆負担は欧米の7倍

 日本の産業界のエネルギー効率は世界最高の水準を誇る。それだけに会場からは「これから30%も削減するには、欧米の7倍の費用負担が必要になるとの試算もある。民主はこうした温暖化対策の影響をどうみているのか」と疑問の声が上がった。

 これに対して岡田氏は温暖化の進行で人類が直面する脅威を強調し、「温暖化対策を進めることで新たな需要を起こす」と答えるのにとどまった。説明会に出席した企業関係者は「民主が政権についた場合、日本企業は大変な負担を強いられる」と天をあおいだ。

 民主がマニフェストで掲げる30%削減は、政府内でも検討されたことがある。20年に05年比で15%削減するとの政府の中期目標を設定するにあたり、4%減から30%減までの6案を選択肢として示し、必要な対策などを試算した。

 試算には地球環境産業技術研究機構(RITE)や国立環境研究所、日本エネルギー経済研究所など一級のシンクタンクが協力したが、30%削減という高い目標を実現するには「産業活動量を削減する」という強制的な措置が必要だとされた。

 中期目標を策定する検討委員会のメンバーとして参加した茅陽一RITE副理事長は「どの研究機関もそうした実現不可能な案しかつくれなかった」と振り返る。

 試算で示された産業活動量の削減とは、特定の業界に生産量を割り当てるなどで減産を求めることだ。この試算では30%削減を実現するには、例えば年間1億トン強の粗鋼生産量を2割弱減らしたり、同7000万トン強のセメント生産量を25%カットすることなどが盛り込まれた。これはJFEスチール西日本製鉄所と太平洋セメントの生産を止めるのに等しい水準だ。

 標的になりそうな鉄鋼やセメント、化学などエネルギー多消費型産業の生産拠点は、瀬戸内海沿岸や太平洋沿岸部などに分布している。もし本当に強制的な減産を実行に移した場合、こうした地域を支える産業を直撃し、雇用に深刻な影響を与えるのは避けられない。経済産業省幹部は「生産量を強制的に割り当てて減産を迫る。それは社会主義国家そのものではないか」と批判する。

 ◆体力回復に時間

 30%削減という民主の目標に危機感を募らせる産業界ではいま、衆院選後の民主政権発足をにらんだ意見書づくりが水面下で進んでいる。主要な業界団体が民主に目標の見直しを求める内容だ。

 そのたたき台の中では「実現可能性や国民生活への影響を考慮せず、ただ高い削減率のみを提示すれば、雇用も国富も海外に流出し、私たちはこの国で生産活動ができなくなる」と訴えている。

 温室効果ガスの排出削減は産業界全体の課題だ。そこではエネルギー多消費型産業の構造転換も必要となる。だが、その後の“体力回復”には時間がかかるのも事実だ。

 福島大学や松山大学の調査によると、2つの高炉が閉鎖された岩手県釜石市やアルミ精練の生産拠点が廃止された愛媛県新居浜市の例をみると、市内で生まれた新たな産業によって製造出荷額が以前の水準にまで回復するには20年以上もかかったという。

 30%削減の実現には地域経済の構造改革を含めた長い取り組みが必要となるが、民主党のマニフェストからはその姿勢はうかがえない。

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