本枯れ節と山葵でハガツオ茶漬け
魚を一尾、さばけたら!?―濱田美里のお魚教室 お刺身から煮魚、自家製干物や手作り塩辛まで、シンプルレシピ150! 価格:¥ 1,575(税込) 発売日:2007-04-17 |
材料(一人前)/刺身の残り少々、カツオ節、醤油、山葵、ネギまたはアサツキ
出刃包丁がひとつあると、人生がちょっとばかり楽しくなってくる。スーパーでトレイに盛られた刺身を買って食べるよりは、自分で一匹の魚を捌いて食うほうが気分は良いに決まっている。と、そんなわけで伊豆の親爺の中には、うまい魚を食いたいあまりに自前で漁船まで買ってしまう数寄者も少なくない。沼津の漁港や狩野川の河口に停泊している船の多くが、そういう自給自足グルメの船だというのは、知る人ぞ知るところである。
まあ、そこまで人生を捨てなくても市場に行けば地の魚が安く出ているわけで、
そんな中から「安くて美味」な掘り出し物を探すのはなかなか楽しい作業だ。清水町の卸売団地「食遊市場」なんかいいね。むかしは素人さんお断りだったが、今では誰でもショッピングを楽しめる。塩漬けメンマ1kgとか、英国C&B社製カレー粉500gとか、業務用ならではの買物もできるし、普通に魚屋もある。巨大なマグロの頭とか尻尾とかに見とれてないで、さて、今夜は何を捌くかね? メジマグロとかカンパチなんぞはいつも見るけど、11月ともなるとカツオを次第に見なくなってくる。アジのタタキにしようか、シメサバ作るか。山陰とか北陸などからも入荷はするけど、ここは地の魚にこだわりたい。何より安いし。で、発見したのがハガツオだ。別名キツネ、トウサンなどとも呼ばれている。
カツオといってもハガツオはちょっと種類が違う。欧米では「ボニート」とか呼ばれてカツオ類の代表格らしいが、日本ではちょっとマイナーだ。いい加減な魚屋だと「メジマグロ」と偽称して売っていたりするほどで、特に関東以北ではほとんど見掛けない。暖かいところの魚なのだ。このあたりでは八丈島とか伊豆諸島でやたら獲れるらしいが、なんせ身が柔らかすぎて捌いている最中からボロボロ崩れてしまうし、焼こうとすると焼いてる最中に分解してしまうし、そっと鍋に横たえて煮魚にするしかない、というのが築地の評判だ。これじゃ値がつかない。決定的なのは、サバ科の魚の特徴でアシが早いのだ。新鮮なうちはおいしいがすぐに味が落ちる。こういう厄介な魚は市場では安い。でも、おいしいものはおいしいのだ。船の上で食ったら、こんなに美味な刺身は他にない、とまで言われる。まあ、新鮮な魚が食えない東京もんは古くなっても食えるマグロでも食ってろって事だな。あれは逆に新しすぎると堅くておいしくなかったりするし(笑
ハガツオは、売ってるとすれば一匹丸ごとだ。なんせ安い魚だ。綺麗にお造りにされて発泡スチロールに乗っかってるわけじゃない。だが、これを刺身にするのは素人の腕ではむずかしいかも知れない。身割れするので、三枚におろしてる間にもどんどん分解してしまう。仕方ないからそのままザクザクと適度に刻んでアジみたいなタタキにしちゃえば良い。なに、味は刺身と変わらない。普通のカツオと違ってハガツオは寄生虫がいないのでハラミも生で食える。冬が近くなるとトロのように脂が乗ってうまい。あまり知られてないが、実は結構上等な魚だ。でも、せっせと食っても残ってしまう。いくら安いからって一匹丸ごとなんて食えるわけない。しかもコレ、日持ちしないという弱点を持っているのだ。
そこでお茶漬けだ。酔っぱらいというのは意地汚いもんで、夜中になると腹が減ったと騒ぎはじめる。「目の前に刺身があるんだから、それでジャーのご飯でも食べれば?」とママに怒られても、それじゃイヤなんだって。刺身は食い飽きたとかワガママな事を言う。「ラーメン食いたい。でもインスタントはイヤだ」とか。そんな時に、ちゃんと作ったお茶漬けというのは妙にしっくりと来る。ちゃんと作らなきゃ駄目だけど。お茶漬けといってもお茶をかけるわけじゃない、醤油で味付けしたカツオ出汁。乗せるモノは刺身の残りでも良いし、何もなければ佃煮でも良い。
まずはカツブシ削りから。伊豆の秘境・田子で仕入れた伝統の本枯れ節を三島本町大通りの刃物屋・政豊の削り器でガリガリと削る。本来は子供の仕事だが、もう寝ているので酔っぱらいの仕事になる。「おい、これくらいでいいか?」と聞かれたら「足りないわよ。もっとしっかり掻いてちょうだい」と、翌朝の味噌汁の分まで掻かせるのが正しい女房の姿というものである。ネギかアサツキを刻めば、あとはワサビ。ハガツオってのはワサビで食うものなのかショウガで食うものなのかおろしニンニクで食うものなのか不明だが、日本一のワサビ産地・中伊豆のワサビが冷蔵庫の奥深くに眠っていたので、これを使う。鮫の皮でおろすのがお約束だね。これも酔っぱらいの仕事。なんだよ、結局、全部自分でやってるようなもんじゃねーか。ママはネギを刻むだけかい? ワサビは濡れた新聞紙に包んで冷蔵庫にしまっておけば一ヶ月以上もつので是非、常備したいアイテムの一つだ。
単純な食い物だけに素材は大事だ。それが田子の本枯れ節に中伊豆のワサビと来れば申し分ない。どっちも日本一だ。お茶漬けの作り方に秘訣もへったくれもないが、ひとつだけこだわりたい。ジャーのご飯にハガツオ乗せてネギ散らしたら、カツブシの出汁を醤油で味付けして、それをグラグラと沸騰させる。完全に沸騰した熱~いのを、ハガツオにそっと注ぐ。見る見る、表面が白っぽく変わるのが観察できるだろう。なんとも艶っぽい色である。ルノアールの少女の頬の色か、フラメンコを踊る若い娘の化粧っけのない唇の色か。そう、この魚の名前「ボニート」というのはスペイン語で「べっぴんさん」を意味する「ボニータ」となんか似ているのだった。
これは、旨そうだなあ、
(美味そうではなくって、w)
ハガツオは初めて知りました。
投稿 ゆーき | 2007/09/09 05:07
ずいぶん品のいい(地味な)デザインになったなあ。ゴロツキなあんたにはもっとガラの悪いデザインがふさわしい。似合わんな
投稿 なぴおきにすく | 2007/09/09 06:42
まるで自分の胃袋に“なに食べたい”と問いかけて出てきたこのシンプルな芸術作品には感動しましただ。
自分の腹具合を伺う(洞察・直感)
地元で安い素材の知識とそれを活かすタイミング(知識・経験・経済性)
食べ終わった後の幸福感が伝わります。フゥー、っとね。
質問:
鮫の皮でおろした特産のわさびは、おろし金でおろしたわさびと違いが出るのでしょうか?
投稿 FT | 2007/09/09 08:13
http://my.shadow-city.jp/
このときは大丈夫だったのですが、
http://shadow-city.blogzine.jp/net/
になってから
http://www.greatfirewallofchina.org/test/
これで
「Your URL is Blocked!」
になってしまいました。
だから中共の支配する地域では
http://www.wujie.net/downloads/ultrasurf/u.zip
これを使っています。
投稿 倭喬 | 2007/09/09 08:14
鮫皮のおろし、以前買った覚えがあるけど、
どこかに仕舞い込んで、出てこない。
本ワサビは、普通のおろし金では特有の辛味が出にくいとか。
鮫皮の細かい奴で、
細胞まで壊すと、なんとかいう成分が空気に触れて、
それで辛くなるんじゃなかったかな。
もし鮫皮おろしがなければ、
とりあえず普通のおろし金でおろすか、包丁で細かく刻んで、
あとは、まな板の上で、
包丁の背中で気長にトントンと叩くといいそうです。
代わりに返答してしまってすみません
さらに補足あればよろしく、
投稿 ゆーき | 2007/09/09 08:42
La Isla Bonitaを英訳すれば、The Beautiful Islandとなるのかと、アルコールの残る脳味噌でお勉強。Madonna思い出してググっただけですが。
投稿 Cumulus | 2007/09/09 09:44
清水町の食遊市場、なつかしいなぁ。
ちょうどその、プロ限定から一般開放になる時期清水町の住人でしたよ。
もしかしたら管理人さんと行き交ったことがあったかも。
とか考えると人生も不可思議でオモシロイ。
ところでウチは台所はすべて電化でIHに変えてしまったので、火を使おうと思ったらBBQセット持ち出して庭で炭火起こすという仕儀になってしまう。
でも焼肉系統は嫌いで、もっぱらナマかコトコト煮物愛好だ。ときにはオーブンでピザ焼いたりもして食生活には支障ありません。かえって重宝ですよ。
投稿 小樽人 | 2007/09/09 10:08
>と、翌朝の味噌汁の分まで掻かせるのが正しい女房の姿というものである。
この辺のくだりは何度読んでも良いなぁw
ネタも大変美味そうなので、いい魚が入ってたら似たようなモンを今夜作ってみよ。
ひーちゃんさん応援してますのでグルメエントリどんどんお願いします。
投稿 おけー | 2007/09/09 12:13
そーいえば業務用市場といえば、関東では西高島平の卸売りセンターの辺りに「ヤスノ」という店がオススメ。(加工食品メインですが)
何年か前に一般でもOKになったので、まとめ買いに重宝してます。
そばに関東流通の要のデカイトラックターミナルがあるせいか、安い上に品揃えがハンパないです。
自作グルメな方はいっぺんいってみれ!
調味料とかいろいろあっておもろいよ。
投稿 おけー | 2007/09/09 12:20
では、私は
>本来は子供の仕事だが、もう寝ているので酔っぱらいの仕事になる。
に。子供の時分、などど云ってしまうと複数形なので
http://dark.shadow-city.jp/?page=1子供たち
なのでアレですが、よく手伝わされました。よく手を切らなかったものだと。今は液体ダシですが、今も酔っぱらい。
投稿 Cumulus | 2007/09/09 12:28
うまそうですね
これは撮影はショボックス?
投稿 かっぺ | 2007/09/09 14:03
そうですね。ショボックスです。段ボールの箱の中に安物のストロボが入ってます。箱の中はアルミホイル貼ってあって、入口はトレペを装着してあります。
http://www2.alice-novell.cc/sample/gin-man/syobox/index2.html
投稿 野次馬 | 2007/09/09 14:21
本枯れ節と山葵でハガツオ茶漬け を検索すると・・・
投稿 あらら! | 2007/09/09 16:01
ボニートは男性形
ボニータは女性形
どちらもbeautiful
投稿 ああ | 2007/09/10 00:21
>枯れ節と山葵でハガツオ茶漬け を検索すると・・・
ぶりんこひーちゃんっていうのが野次馬さんですか?
他にもうまそうなのいろいろ書いてるじゃないですか。
投稿 ああ | 2007/09/10 00:37
「でぶりんこ」だよ、ああちん。
投稿 | 2007/09/10 00:46
ありがとう!
投稿 ああ | 2007/09/10 00:49