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「はだしのゲン」紙芝居熱演 東京の保育助手、広島の原爆ドーム前で

子どもら涙 中沢さん激励


雨が降る中で、「はだしのゲン」の紙芝居を上演する加藤さん(広島市中区の平和記念公園で)

 紙芝居愛好家の、東京都大田区の保育助手、加藤雄大さん(38)が、原爆から立ち上がる少年を描いた漫画「はだしのゲン」の紙芝居を、25日、初めて広島市中区の原爆ドーム前で披露した。24日には著者の中沢啓治さん(70)との対面が実現。中沢さんから激励された加藤さんは「広島で見たことをしっかりと目に焼き付けて、東京に持ち帰って子どもたちに伝えたい」と話した。

 幼稚園で働く加藤さんが子どもたちに紙芝居をした際、声色を代えて登場人物を演じ分けると、子どもたちは目を輝かせた。紙芝居の魅力にとりつかれた加藤さんは、休日にはボランティアで公園などを回り、昔懐かしい「黄金バット」などを披露するようになった。

 昨年8月、幼稚園で園長がはだしのゲンの絵本を子どもたちに読み聞かせていたのを見て、原爆の惨禍について知りたいと思い、漫画の「はだしのゲン」を購入。被爆によるやけどで皮膚が垂れ下がったまま人々が逃れてくる惨状に戦慄(せんりつ)を覚え、たくましく生き抜くゲンに心奪われた。

 ゲンを子どもたちに紹介したいと紙芝居版を探していたところ、昨年11月、汐文社(東京都文京区)が1991年に5000部を発行した、紙芝居の「はだしのゲン」がインターネットオークションで出品されているのを見つけ、購入。初上演は広島でやろうと、8月6日の広島原爆忌を前に、24日に広島へやってきた。

 紙芝居にも登場する原爆ドームを初めて見た瞬間、加藤さんはあの頃の惨状の中にいるような気がした。広島市内で対面した中沢さんには、「紙芝居で、小さい子どもたちにゲンのことを広めて」と激励された。

 25日、原爆ドーム前で行った初上演は、子どもら約20人が見物。加藤さんは、太鼓をたたき、「生きて、生きて、生き抜けー」などとゲンたちを熱演。家族4人で平和記念公園を訪れた愛知県春日井市立山王小4年、戸沢菜月さん(10)は

「原爆が落とされて、たくさんの人が死んだ場面が怖くて涙が出てきた。二度と戦争が起きてほしくないと思った」と話していた。

 加藤さんは「上演するたびに、こんなことは二度と起きてはいけないという思いを、子どもたちと共有したい」と話していた。

2009年07月26日  読売新聞)
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