日本語は極東アジアの共通語
日本語というか、日本文化の特性なんだが、外部から入ってきたものを自分たちの言葉と文化でアレンジして自分のモノにしてしまうという、文化の柔軟性というのがあるわけだ。つうか、そもそも日本という国、日本人という民族そのものが、黒潮に乗って流れて来たアジアの吹き溜まりなので、なんでもチャンポンにして食ってしまうわけだ。縄文時代から伝わる大和言葉が平仮名で、そこに中国から輸入された漢字が乗っかり、さらに明治以降は英語がカタカナで入り込むという巧妙な構造によって、あらゆる情報を等価に記述する事が可能になった。これは、
日本人が知的好奇心が旺盛で、外部から攻め込まれた事がほとんどなかったからでもある。島国で適度に不便な場所に位置しているため、なんとか貿易は可能でも攻め込むのは不可能だったのだ。
中国や朝鮮半島の近代化がなかなか進まないのも、近代資本主義や近代西欧文化を理解するには越えられない壁のようなものが存在するからだ。だから理解しようとすれば一気に欧米にまで留学して言葉から学びなおしていかなければならないのだ。日本人が英語が苦手なのはそのようにする必要がないからであり、母国語で大学の授業が出来る数少ない国だからだ。
イスラム諸国も西欧近代文明を取り入れるにはアラビア語を捨てなければならないかもしれない。かつてはギリシャの科学文化をアラビア語に翻訳する際に、直接には翻訳できずに一旦シリア語に翻訳する必要があった。それくらい文化のはなれた言葉を翻訳するのは難しい。だから中国人や韓国人も一旦日本語に翻訳された西欧文化を改めて翻訳しているようだ。
中国語というのは表意文字だ。音声と関係なく文字が並ぶので、便利といえば便利なんだが、外来語の輸入に困る。つうか、中国文明そのものが1000年前で完成されてしまったため、新しいモノを取り入れる余裕がない。で、引用しているネタなんだが、ペニシリンという単語について、中国語では医薬品のペニシリンは、当初は「盤尼西林」(pan ni xi lin)と訳されていたのが、後に「青黴素」(qing mei su)という単語に置き換わっています。
同じく当初は「維他命」(wei ta ming)と音訳されていた「ビタミン」も後に、「維生素」(wei sheng su)に取って代わられました。という風に、非常に混乱しながら言葉を輸入しているわけだ。なんで最初から意訳しないのかというと、そら、意訳しても誰も読めないし意味を理解してくれないからで、ペニシリンという存在とその特性が言葉を使う人の共通認識として共有されないと、次の意訳までたどりつかない。また、表意文字の漢字で音声をあらわすという事自体が無理があるので、いつまでも妙な音訳だけを使い続けるわけにも行かないという、まぁ、中国語ならではの厄介な理由がある。だったら英語をそのまま混ぜちまえばいいだろうと思うんだが、基本的に中国語は縦書きだ。日本語もそうなんだが、縦書きの文章にアルファベットがそのまま混じってくると、非常に面倒くさい事になる。で、日本語ならばカタカナで表示すれば「ああ、これは外来語なんだな」とすぐに理解して貰えるんだが、中国語にはカタカナがない。ペニシリンと書けば、他でもない、Penicillinの事だな、とすぐに分かるが、盤尼西林と書いたら、四つの文字がそれぞれの意味を持っているので、何だよ、尼さんが西の林でどうしたって?というややこしい誤解を招く。まぁ、お中華思想で外来語を受け入れるのを好まなかったとか、色んな理由はあるんだろうが、基本的には表意文字で話し言葉を書き表そうとするから仕方ないんだけどね。
もっとも、そんな中国語にもメリットがないわけでもない。表意文字で発音と関係ないので、耳で聞いて通じない場合でも筆談なら可能だ。おなじ中国人でも地方が違うとまったく発音が違うのだが、紙に書かれた文字なら発音は関係ないので通じる。中国人でなくても、日本人でもある程度は通じる。まったく違う言語が、ネイティブである程度の意味が理解できるというのは、大変な事なんだよね。日本は鎖国中も含めて、中国とはずっと交易を続けてきたんだが、これも言語の壁があまり高くなかったのが理由としてあげられる。で、上の図版は幕末の西洋人が見た光景なんだが、瀬戸内海の中国船だ。鎖国で出島だけに限られていた交易が、ペリー来航によって崩れると、こうやって中国のジャンクなんぞも入ってくるわけだ。西洋人と違って彼らは通訳なしでも困らないので、どこにでも入って来る。で、幕末から明治維新の頃には買弁といって、西洋人の代理で仕事を仕切る支配人みたいな役目をしていた。ろくに日本語しゃべれないんだが、日本人が漢字を理解できるので話が早い。
で、少なくとも学術の分野では日本語というのはかなり、力を持っているわけだ。明治時代からせっせと欧米の文献を翻訳してきたので、その蓄積が大きい。よく言われるんだが、中華人民共和国の「人民」も「共和」も日本人が作った言葉なのだ。で、株式日記さんは、日本語を東アジアの共通語に、と言ってるんだけどね。
中国人や韓国人が全員アメリカに留学するわけには行かないのだから、欧米の文化を取り入れるには日本語を学んで日本語に翻訳された西欧のものを学んだ方が、イギリスやフランスやドイツやロシアの書物などが日本語に翻訳されているのだから手っ取り早いのではないかと思う。
だから将来においては日本語も国際語になる可能性があるのですが、日本人自身が日本語は難しいと決め込んで切る。しかし戦前においては日本に留学したアジア人が近代化の立役者になったのあり、周恩来も蒋介石も日本留学経験者だった。現在の中国においてもトウカセン氏や王毅氏は日本留学組みであり、韓国でも大阪生まれの韓国人が大統領になろうとしている。
まぁ、おいらが思うに、日本語なんか教えなくていいから、平仮名とカタカナだけは、中学校あたりで教えるといいと思う。バンコクのカラオケバーのネーチャンは、必死で平仮名とカタカナを覚えるのだ。覚えないとデュエット歌えない。たどたどしい日本語でカラオケ歌っているのをよく観察してみると、振り仮名振ってない漢字で必ずつっかえるので笑えるんだが、バンコクでは高い日本製のゲーム機を買って貰ったものの、ゲームそのものが日本語表示で読めないのに絶望して「来世は日本人に生まれ変わりますように」と遺書を残して死んじゃった子供までいる。日本には漫画という世界に誇るツールがあるわけで、アジアの子供たちに平仮名とカタカナをせっせと教えれば、とりあえず文化面での世界征服も夢ではないのだ。
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今から15年くらい前にマレーシアの最南端のジョーホールバルにあるゲーム屋にふらっと寄ったら、華人の子供が任天堂スーファミの日本語版のロールプレイングゲームをやってた。
当然画面上にはかな混じりの日本語が表示されるのだが、その子供は全く躊躇なく興じているので、
不思議に思い「日本語がわかるの?」と聞いてみたら、「漢字を飛び石でつなげると意味がわかる。カナは何度かやってるとわかってくる」と言っていた。
要は固有名詞のカナなんぞは読みも意味もわからないが、記号として理解するらしい。
タイの子供は自殺しちゃうかもしれないけど、華人はもっとしぶといね。
そこで私はスーファミのカセットの中身をフロッピーに吸い上げるコピーツールを購入した。
投稿 alex | 2007/09/08 12:09