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vol.158 憲法第二条【皇位の継承】H天皇及び皇族の特権
 皇室典範は、天皇および皇族に一定の特権を認めるとともに、一定の制限を設けています。そのため、一般国民とは異なった扱いをうけることがあるのです。
 天皇および皇族がそのような扱いをうける理由は、憲法第一条で、天皇は日本国の象徴であると規定し、憲法第二条で、皇位は世襲のものであると規定しているからです。
 たとえば、一般国民であれば選挙に立候補して街頭演説することは自由ですが、日本国の象徴である天皇が自由に選挙に立候補できたらおかしなことになってしまいますし、民間企業にお勤めになることも現実的ではありません。
 また、このような職業上の制限があるにもかかわらず、生活費を自ら稼ぎ出さなければいけないとしたら、それは無理というものです。
 そもそも、日本国の象徴が生活費を稼ぐために国事と無関係の仕事をすること自体が適切ではありません。
 したがって、皇室典範は、天皇および皇族に一定の特権を認める反面、基本的人権を大幅に制限しているのです。

 まず、皇室典範が定める特例を列挙してみることにしましょう。
 天皇は皇位継承にあたり「即位の礼」を、また崩御にあたり「大喪の礼」します(24条・25条)。これは一般国民には無い特例でしょう。
 一般国民は20歳で成人となりますが、皇室典範は天皇・皇太子及び皇太孫の成年を18歳と定めています(22条)。
 これは、摂政を置く期間をできるだけ短くすることと、皇太子と皇太孫ができるだけ早い段階で摂政に就任できるようにするための措置です。天皇・皇太子及び皇太孫を除く、その他の皇族の成年は20歳です。
 次に、皇族男子には皇位継承資格が、また一部の皇族には摂政就任資格が認められています(2条・17条)。これは一般国民には認められていない資格です。
 また、摂政在任中は訴追されないことも規定されています(21条)。これが根拠となり、条文中には明記されていないものの、天皇も在任中は訴追されないと考えられています。
 そして、天皇・皇后・太皇太后・皇太后には「陛下」、その他の皇族には「殿下」の称号が付けられ(23条)、天皇・皇后・太皇太后・皇太后を葬る所を陵(りょう)とし、その他の皇族を葬る所を墓(ぼ)とされます(27条)。
 また、皇室経済法の規定により、天皇及び内廷皇族には内定費が、また内定外皇族には皇族費が支給されます。
 天皇および皇族は、このような一般国民と異なる待遇を受けるのです。
 しかし、これらの特権は、いわゆる権利というものとは異なり、天皇もしくは皇族として生まれた者の宿命であるはずです。したがって、これらは実質的には権利ではなく義務ではないかと、私は思います。
 たとえば、天皇に即位すること、もしくは皇太子になるということは、人生を自分のために生きるのではなく、日本国と日本国民のために生きるとうことであり、これはその星に生まれた者の宿命と考えるほかありません。
 これは、権利などといえるような、甘美なものではないはずです。

 しかも、天皇及び皇族は大幅に人権が制限されます。そのことについてはまたの機会に掘り下げることにしましょう。

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出典:「お世継ぎ」(平凡社)八幡和郎 著
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作家 プロフィール
山崎 元(やまざき・はじめ)
昭和50年、東京生まれ。旧皇族・竹田家に生まれる。慶応義塾大学法学部法律学科卒。財団法人ロングステイ財団専務理事。孝明天皇研究に従事。明治天皇の玄孫にあたる。著書に『語られなかった皇族たちの真実』(小学館)がある。
artist H.P.>>
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