vol.143 仁徳天皇@【古事記、第四十四話】
大雀命(おおさざきのみこと)(第16代仁徳天皇(にんとく・てんのう))は難波之高津宮(なにはのたかつのみや)(現在の大阪市東区法円坂町)で天下を治めました。
古事記はこのあと、仁徳天皇の系譜と、主な事績について列挙しています。難しい固有名詞が続きますが、現代語訳を載せることにします。
この天皇(すめらみこと)が葛城(かづらき)の曾都毘古(そつびこ)(建内宿禰(たけのうちのすくね)の息子の一人)の娘、石之日賣命(いわのひめのみこと)―大后(おおきさき)―を娶(めと)って生んだ御子(みこ)は大江之伊邪本和気命(おおえのいざほわけのみこと)(後の第17代履中天皇(りちゅう・てんのう))。
次に墨江之中津王(すみのえのなかつおう)。
次に蝮之水歯別命(たぢひのみづはわけのみこと)(後の第18代反正天皇(はんぜい・てんのう))。
次に男浅津間若子宿禰命(おあさづまわくごのすくねのみこと)(後の第19代允恭天皇(いんぎょう・てんのう))。四柱(よはしら)。
また、先に述べた日向(ひむか)の諸県君(もろがたのきみ)(現在の宮崎県諸県三郡と鹿児島県曽於(そお)郡周辺の豪族)の牛諸(うしもろ)の娘、髪長比賣(かみながひめ)を娶(めと)りました。
髪長比賣(かみながひめ)は、応神天皇が召した女性を大雀命(仁徳天皇)が気に入り、父から貰(もら)い受けたという逸話がありました(第123回、応神天皇B参照)。
大雀命(仁徳天皇)が髪長比賣を娶(めと)って生んだ御子(みこ)は波多毘能大郎子(はたびのおおいらつこ)。またの名を大日下王(おおくさか)といいます。
次に波多毘能若郎女(はたびのわきいらつめ)。またの名は長日比賣命(ながひひめのみこと)、またの名は若日下部命(わかくさかべのみこと)といいます。二柱(ふたはしら)。
また、大雀命(仁徳天皇)は庶妹(ままいも)の八田若郎女(やたのわきいらつめ)(第15代応神天皇の娘)を娶りました。
また、庶妹の宇遅能若郎女(ウヂノワキイラツメ)(第15代応神天皇の娘)を娶りました。
この二柱(ふたはしら)には御子(みこ)がありませんでした。
この大雀(おおさざき)天皇の御子(みこ)たちは併せて六柱(むはしら)でした。男王五柱。女王一柱。
そして、仁徳天皇の次には伊邪本和気命(いざほわけのみこと)が天下を治めることになりました。(第17代履中天皇)
次に、蝮之水歯別命(たぢひのみづはわけのみこと)もまた天下を治めることになりました。(第18代反正天皇)
次に、男浅津間若子宿禰命(おあさづまわくごのすくねのみこと)もまた天下を治めることになりました。(第19代允恭天皇)
この天皇(すめらみこと)の御世(みよ)に、大后(おおきさき)の石之日賣命(いはのひめのみこと)の御名代(みなしろ)(皇族が私有する労働集団)として葛城部(かづらきべ)を定めました。
また、太子(ひつぎのみこ)の伊邪本和気命(いざほわけのみこと)の御名代(みなしろ)として壬生部(みぶべ)を定めました。
また、水歯別命(みづはわけのみこと)の御名代(みなしろ)として蝮部(たぢひべ)を定めました。
また、大日下王(おおくさかおう)の御名代(みなしろ)として日下部(くさかべ)を定めました。
若日下部王(わかくさかべおう)の御名代(みなしろ)として若日下部(わかくさかべ)を定めました。
また、秦人(はたひと)(応神天皇の御世に朝鮮半島南部から渡来した集団)を使役(しえき)して茨田堤(まむたのつつみ)と茨田三宅(まむたのみやけ)を作りました。(「茨田」は現在の大阪府寝屋川市)(現在の枚方市から大阪市まで七里(28km)に及ぶ堤防が築かれたと伝わります)
また、丸邇池(わにのいけ)と依網池(よさみのいけ)を作りました。
また、難波之堀江(なにわのほりえ)(現在の大阪市内に流れる大川)を掘って海に通しました。(この工事により河内平野に溜まった水が大阪湾へと流れるようになり、耕作力が大幅に高まったと考えられています)
また、小椅江(おばしのえ)(現在お大阪市東成区)を掘りました。
また、墨江之津(すみのえのつ)(現在の大阪市住吉区に作られた港)を定めました。
さて、天皇(すめらみこと)は高い山に登り、四方(よも)の国土を見渡して、「国中に炊煙(すいえん)が立ち昇っていない。国内は皆、貧しいのだろう。今から三年の間、ことごとく人民(たみ)の課(みつぎ)と役(えだち)を免除(めんじょ)しよう」と言いました。(「課」は朝廷に納める品物、「役」は労役)
そのため、宮殿は破れ壊れ、ことごとく雨漏りするようになってしまいましたが、全く修理することなく、器(うつわ)でその漏れる雨を受け、漏れない所に移って避けまし。
やがて国中を見渡すと、国土に煙が満ちていた。そこで、人民(たみ)が豊かになったため、ようやく課(みつぎ)と役(えだち)を課しました。
こういうわけで、百姓(おおみたから)は栄え、役使(えだち)に苦しまなくなりました。
そのため、その御世(みよ)を称(たた)えて聖帝世(ひじりみかどのよ)と言うのです。
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出典:「お世継ぎ」(平凡社)八幡和郎 著
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昭和50年、東京生まれ。旧皇族・竹田家に生まれる。慶応義塾大学法学部法律学科卒。財団法人ロングステイ財団専務理事。孝明天皇研究に従事。明治天皇の玄孫にあたる。著書に『語られなかった皇族たちの真実』(小学館)がある。
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