vol.140 国民を激励される陛下のありがたい御言葉
平成二十一年元旦未明、多くの国民が寝静まるなか、天皇陛下は四方拝(しほうはい)に出御(しゅつぎょ)(天皇がお出ましになること)遊ばされました。
特に四方拝は数ある宮中祭祀(きゅうちゅう・さいし)の中でも、重要な祭祀とされ、代理人が行う御代拝(ごだいはい)が認められません。天皇の御体調がすぐれないときなどは、中止にされるのが伝統です。(四方拝については第88回、正月の宮中祭祀を参照してください)
天皇陛下は毎年、四方拝を御親祭(ごしんさい)(天皇が自ら祭りを執り行われること)あそばされます。しかし、平成二十年末に不整脈や血圧上昇などにより御公務を一時お控えになったことで、今年は若干簡略化されて行われました。
例年、神嘉殿(しんかでん)南庭で行われるのですが、今年は御所前の庭に変更され、また陛下は本来、黄櫨染御袍(こうろぜんのごほう)という御装束をまとわれるところ、今年はモーニングに変更されました。
一部簡略化されたところがあるも、天皇陛下が四方拝を御親祭あそばされ、国民一人ひとりの幸せをお祈りになることは、誠に尊いことです。
そして元旦には皇居宮殿で「新年祝賀の儀」が行われました。「新年祝賀の儀」は天皇皇后両陛下が皇族方や三権の長(ちょう)などから新年のあいさつをお受けになる儀式で、皇太子同妃両殿下もご出席されました。
新年祝賀の儀は皇族各殿下をはじめ、内閣総理大臣等、衆議院議長及び参議院議長等、最高裁判所長官等、認証官(にんしょうかん)等、各国外国使節団の長等が参列します。
また年頭に当たり、天皇陛下のご感想が発表されました。特に金融危機のことについて触れられ、「多くの人々が困難な状況におかれていることに心が痛みます」と仰せになり、「国民の英知を結集し、人々の絆を大切にしてお互いに助け合うことによって、この困難を乗り越えることを願っています」と、国民を激励あそばされました。
「国民の英知を結集」とは鳥肌の立つような御言葉ではありませんか。日本国民は、一人ひとりが、このありがたい激励の御言葉を胸に、国の隆昌(りゅうしょう)と世界の平和のために邁進(まいしん)しなくてはいけません。
文末にご感想の全文を掲載しますので、参考にしてください。
そして、正月二日には、皇居で新年一般参賀がありました。
毎年テレビなどで、天皇皇后両陛下をはじめ皇族各殿下がお出ましになり、国民から祝賀をお受けになる場面が放送されますが、これは一度だけではなく、通常毎年七回行われています。今年は天皇陛下の御体調を考慮して五回お出ましがありました。
御静養中の皇太子妃殿下も五回ともお出ましになりましたが、全回にお出ましになるのは六年ぶりだそうです。皇太子妃殿下は徐々に御公務に復帰されています。我々国民はまだ暫くの間、静かにお見守り申し上げなくてはなりません。宮内庁をはじめマスコミ各社は静謐(せいひつ)な環境を保つように、一層の努力をすべきでしょう。
新年一般参賀で天皇陛下からは、次のような御言葉がありました。
「新しい年を共に祝うことを誠に喜ばしく思います。厳しい経済情勢の中にあって、苦労多く新年を迎えている人々が多いのではないかと案じていますが、この年が国民にとり少しでも良い年になるよう願っています。ここに年頭に当たり、人々の幸せと世界の平安を祈ります」
ご感想と一般参賀での御言葉、そして四方拝。このように天皇陛下はいつも我々国民のことを思っていらっしゃいます。
我々日本国民は一丸となって、この難局を乗り越えるために、努力をしなくてはなりません。
(参考資料)
年頭に当たっての天皇陛下のご感想(全文)
昨年は、台風の上陸もなく、自然災害による犠牲者の数は、例年に比べれば少なかったのですが、岩手・宮城内陸地震及び岩手県沿岸北部を震源とする地震によって、山間部に大きな被害がもたらされ、人命が失われたことは痛ましいことでした。日本の厳しい自然のもとでは、皆が防災に対する認識を更に深めることが大切であると思います。
また、秋以降、世界的な金融危機の影響により、我が国においても経済情勢が悪化し、多くの人々が困難な状況におかれていることに心が痛みます。国民の英知を結集し、人々の絆を大切にしてお互いに助け合うことによって、この困難を乗り越えることを願っています。
今年は、私が即位してから満20年、そして、私どもが結婚してから満50年にあたりますが、歳月の流れにいろいろと思いを致しております。皇后と共に、これからも、国と国民のために尽くしていきたいと思います。
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