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vol.121 憲法第二条【皇位の継承】C
 第107回第112回第117回で憲法第二条について勉強しました。今回は第二条の四回目です。まず条文をおさらいしてみることにしましょう。

憲法第二条【皇位の継承】
 皇位は、世襲(せしゅう)のものであつて、国会の議決した皇室典範の定めるところにより、これを継承する。

 今回は、皇位継承の原因と時期について考えてみましょう。皇位継承とは天皇の代替わりのことです。それがどのような原因によって、いつ起きるのかということです。

 憲法第二条では皇位継承の時期について明確に記していません。しかし、第二条は「国会の議決した皇室典範の定めるところにより」と記し、皇位継承に関する具体的なことは皇室典範という法律に委(ゆだ)ねています。
 そして皇室典範は、皇位継承の時期について、

 皇室典範第四条 天皇が崩(ほう)じたときは、皇嗣(こうし)が、直ちに即位する。

 (「崩じる」とは、天皇が亡くなることを意味する。「皇嗣」とは、第一位の皇位継承者のこと。その順位などについては、第107回を参照してください。)

 と記しています。
 つまり、皇位継承は、「天皇が崩じたとき」に限定されていて、それ以外の原因で皇位継承が生じることは無いわけです。そして、その時期は、皇室典範によれば、天皇が崩じて「直ちに」ということなので、天皇が崩じると、自動的に新天皇が即位あそばすことになります。
 今から一番近い皇位継承は、昭和六四年一月七日でした。第一二四代昭和天皇(しょうわ・てんのう)が崩ぜられ、皇室典範第四条の規定により、第一位の皇位継承者であられた、当時の皇太子殿下(昭和天皇の皇長子)が直ちに皇位を継承され、天皇に即位あそばしました。

 皇位継承の原因は「天皇の崩御(ほうぎょ)」に限定されていますから、現在の法律では、天皇が元気な内に、天皇の代替わりを行う「生前譲位(せいぜん・じょうい)」は認められていません。
 現在の天皇陛下が百二十五代でいらっしゃいますから、初代天皇から現在の天皇陛下まで、実に百二十四回の皇位継承が行なわれてきたことになります。しかし、神代の天皇九代を除いた百十五回の皇位継承の内、約半分に当たる六十三回は生前攘夷による皇位継承です。
 崩御による譲位よりも生前譲位の方が回数が多く、歴史的には生前攘夷の方がむしろ一般的だったといえるでしょう。

 昭和二十年に日本が戦争に敗北し、昭和二十二年に皇室典範が公布されましたが、皇室典範の内容を国会で審議した時に、生前譲位を認めるべきかどうか議論がありました。
 日本側の意向としては生前譲位を認める方向で議論を進めていたのですが、日本を占領していた連合国は、生前譲位を不可としました。
 それは、天皇の位を退いた元天皇が、選挙によって国会議員となり、元天皇であったことを利用して総理大臣に就任することを恐れたからです。
 しかし、それから六十年以上経った今日、元天皇が選挙に打って出るなどということは考えられません。
 もし本当にそれを心配するならば、生前譲位が可能なように皇室典範を改正する際、元天皇が皇族の身分を離れることを禁止する条項を盛り込めばそれで済みます。皇族は選挙権も被選挙権もありませんから、それで元天皇が選挙に出ることはできなくなります。

 これからの皇室のことを考えると、そろそろ皇室典範を改正し、生前譲位ができるようにすべきではないでしょうか。
 天皇が高齢になった場合、変わらずに御公務をされるのは困難ですし、それを無理にお願いするのもお気の毒なことです。
 ただ、天皇の意に反して譲位が実行されるようなことは起きてはいけません。時の政権が皇位継承を政治の道具にするようなことがあれば大変なことです。皇室が政治利用されるようなことは避けなくてはならないのです。
 ですから、どのような手続きを踏んで生前譲位を行うようにすべきか、その制度設計は慎重に行わなくてはなりません。

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出典:「お世継ぎ」(平凡社)八幡和郎 著
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作家 プロフィール
山崎 元(やまざき・はじめ)
昭和50年、東京生まれ。旧皇族・竹田家に生まれる。慶応義塾大学法学部法律学科卒。財団法人ロングステイ財団専務理事。孝明天皇研究に従事。明治天皇の玄孫にあたる。著書に『語られなかった皇族たちの真実』(小学館)がある。
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