vol.118 応神天皇@(古事記、第三十七話)
品陀和気命(ほむだわけのみこと)(第十五代応神天皇(おうじん・てんのう))は、父の第十四代仲哀天皇(ちゅうあい・てんのう)が崩御あそばしたとき、まだ母親のお腹の中にいました。ですから応神天皇は、お腹の中ですでに天皇に即位していたという意味を込めて「胎中天皇(たいちゅう・てんのう)」とも呼ばれています。
応神天皇は軽嶋の明宮(かるしまのあきらのみや)(現在の奈良県高市群)で天下を治めました。
この天皇は、品陀真若王(ほむだまわかのおう)の娘の三柱(みはしら)の女王(ひめみこ)を娶(めと)りました。
その内の一人は高木の入日売命(たかきのいりひめのみこと)。次は中日売命(なかつひめのみこと)、そして次は弟日売命(おとひめのみこと)です。
また天皇は、三人の正室(せいしつ)とは別に、多くの側室(そくしつ)を持ち、十一人の女性との間に男の子十二人、女の子十五人、合計二十七名の御子(みこ)を儲けました。
その内、高木の入日売命が生んだ大山守命(おおやまもりのみこと)と、中日売命が生んだ大雀命(おおさざきのみこと)、そして側室の宮主矢河枝比売(みやぬしやかわえひめ)が生んだ宇遅能和紀郎子(うじのわきいらつこ)は物語の上で重要な役を担うことになります。
古事記は御子たちの系譜を記していますが、量が多いので文末にまとめて記すことにします。
結局はこの中の、大雀命(おおさざきのみこと)が即位して第十六代仁徳天皇(にんとく・てんのう)となり、天下を治めることになります。
ここからは応神天皇の御事績(ごじせき)を追っていきましょう。
さて、天皇は、大山守命(おおやまもりのみこと)と大雀命(おおさざきのみこと)に、「君たちは、年上の子と年下の子とどちらが愛(いと)しいか」と聞きました。
天皇がこの問いを発したのは、宇遅能和紀郎子(うじのわきいらつこ)に天下を治めさせる心づもりがあったからでした。
ここで大山守命は「年上の子が愛しいです」と申し上げました。
次に大雀命は、天皇がお尋ねになったその心を察し「年上の子はすでに大人となり、心配することはありませんが、年下の子はいまだ大人になっていないので、それは愛しいでしょう」と申し上げました。
そこで天皇は「雀(さざき)(大雀命のこと)よ、あなたの言うことは、私が思っていることだ」と仰って、次のように分けて命じました。
「大山守命は山海の政(まつりごと)をしなさい。大雀命は食国(おすくに)の政(まつりごと)を執(と)り報告しなさい。宇遅能和紀郎子は皇位を引き継ぐために、皇太子になりなさい。」(「山海の政」とは海部・山部・山守部などの部民を治める仕事。「食国の政」とは天下の政治を行うということ。)
そして、大雀命は天皇の命令に背くことはありませんでした。
(応神天皇の御子たち)
高木の入日売命(たかきのいりひめのみこと)の子が額田大中日子命(ぬかたのおおなかつひこのみこと)。
次に大山守命(おおやまもりのみこと)。
次に伊奢之真若命(いざのまわかのみこと)。
次に妹の大原郎女(おおはらのいらつめ)。
次に高目郎女(こむくのいらつめ)。五柱。
中日売命(なかつひめのみこと)の御子(みこ)が木之荒田郎女(きのあらたのいらつめ)。
次に大雀命(おおさざきのみこと)。
次に根鳥命(ねとりのみこと)。三柱。
弟日売命(おとひめのみこと)の御子(みこ)が阿倍郎女(あべのいらつめ)。
次に阿具知能三腹郎女(あわじのみはらのいらつめ)。
次に木之菟野郎女(きのうののいらつめ)。
次に三野郎女(みののいらつめ)。五柱。
また、丸邇(わに)の比布礼能意富美(ひふれのおほみ)の娘、名は宮主矢河枝比売(みやぬしやかはえひめ)を娶(めと)って生んだ御子は宇遅能和紀郎子(うじのわきいらつこ)。
次に妹の八田若郎女(やたのわきいらつめ)。
次に女鳥王(めどりのおおきみ)。三柱。
また、その矢河枝比売(やかわえひめ)の妹、袁那弁郎女(をなべのいらつめ)を娶って生んだ御子は宇遅之若郎女(うぢのわきいらつめ)。一柱。
また、咋俣長日子王(くいまたながひこのおおきみ)の娘、息長真若中比売(おきながまわかなかつひめ)を娶って生んだ御子は若沼毛二俣王(わかぬけふたまたのおおきみ)。一柱。
また、櫻井田部連(さくらゐのたべのむらじ)の祖である嶋垂根(しまたりね)の娘、糸井比売(いといひめ)を娶って生んだ御子は速総別命(はやぶさわけのみこと)。一柱。
また、日向之泉長比売(ひむかのいづみのながひめ)を娶って生んだ御子は大羽江王(おおはえのおおきみ)。
次に小羽江王(おはえのおおきみ)。
次に幡日之若郎女(はたひのわきいらつめ)。三柱。
また、迦具漏比売(かぐろひめ)を娶って生んだ御子は川原田郎女(かはらだのいらつめ)。
次に玉郎女(たまのいらつめ)。
次に忍坂大中比売(おしさかのおおなかつひめ)。
次に登富志郎女(とおしのいらつめ)。
次に迦多遅王(かたじのおおきみ)。五柱。
また、葛城之野伊呂売(かつらきのののいろめ)を娶って生んだ御子は伊奢能麻和迦王(いざのまわかのおおきみ)。一柱。
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出典:「お世継ぎ」(平凡社)八幡和郎 著
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昭和50年、東京生まれ。旧皇族・竹田家に生まれる。慶応義塾大学法学部法律学科卒。財団法人ロングステイ財団専務理事。孝明天皇研究に従事。明治天皇の玄孫にあたる。著書に『語られなかった皇族たちの真実』(小学館)がある。
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