太宰府市通古賀の元中学教師陶山雪代さん(79)が、自身の戦争体験や仕事と育児の両立などをつづった一代記「たたかいのはざまで」を自費出版した。深刻な不況で進学をあきらめる子どもが増える現状が、太平洋戦争に突入した自身の子ども時代と重なるという危機感からの執筆。陶山さんは「若い人に『戦争だけは起こさない』という意思と行動力を持ってほしい」と訴えている。
本は今年4月から2カ月で完成、終戦記念日に出版した。福岡市博多区出身の陶山さんは福岡大空襲などを経験し、15歳で終戦を迎えた。19歳で戦死した兄の遺骨箱に「かまぼこ板よりももっと薄い木片が入っているのみ」だったこと、「教育勅語は意味が分からず、低頭の姿勢を長く続けるのは苦しかった」ことなど、戦時中の教育の苦い記憶も記録した。
陶山さんは31年間、中学教師として働いた後、自宅庭に私設図書館を開き、子どもたちの居場所を提供。また、太宰府市の男女共同参画推進条例制定にもかかわり、今も「男女共同参画を進める市民ネットワーク太宰府」代表として活動している。
授業の合間に授乳しながら子育てした体験や、強い反対を受けながら条例制定を求める市民運動を進めた経験など、戦後の「たたかい」についても書いた。「性別、国籍などを超えて人間同士が尊敬し合う社会になれば戦争は起きない」と陶山さん。本は全64ページ。
=2009/09/08付 西日本新聞朝刊=