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vol.107 憲法第二条【皇位の継承】@
 日本国憲法の第二条は皇位の継承について規定しています。先ずは条文を読んでみましょう。

 憲法第二条【皇位の継承】
 皇位は、世襲のものであつて、国会の議決した皇室典範の定めるところにより、これを継承する。

 憲法二条は次のようなことを言っています。@天皇の皇位は世襲であること。Aその具体的なことは皇室典範という法律の定めに随うべきこと。B皇室典範は国会が議決したものであること。
 「皇位」というのは天皇の位のことです。また「皇位の世襲」とは天皇の位を天皇の子孫が受け継いでいくことで、その受け継ぐことができる者の条件は皇室典範に規定されています。皇室典範というのは日本国憲法公布と同時に公布された法律です。
 そして、皇室典範は次のように規定します。

 皇室典範第一条 皇位は、皇統に属する男系の男子が、これを継承する。

 皇室典範第一条は、皇位を継承する者の条件として、@皇統に属すること、A男系の男子であること、の二点を述べているのです。
 ところで、「皇統に属する」というのは、分かりやすく言うと、「皇族である」という意味です。
 皇族には日本国民としての戸籍がありません。その代わり、皇統譜(こうとうふ)と呼ばれる皇族専用の戸籍のようなものがあり、そこに名前や経歴などが記載されています。そこに記載された者が皇族です。
 そして、皇族女子が結婚などにより皇族の身分を離れることを「皇籍離脱(こうせきりだつ)」といいます。
 次に「男系の男子」とは、歴代天皇の男系の血筋にある者を意味します。具体的には天皇の息子、その息子、さらにその息子などなどです。ですから、男系の男子からは、父親を辿ると必ず歴代天皇にたどり着きます。
 皇室典範は引き続き、第二条で皇位継承の順位を示し、第三条は第一順位の皇位継承者に重大な事故などがある場合は皇位継承順位を変えることができるとし、第四条は天皇が崩じたとき第一順位の皇位継承者が直ちに皇位に就くことなどを規定しています。具体的な条文は文末に掲載することにします。
 以上にまとめたのが、憲法と皇室典範異が規定する皇位継承の全てです。

 いまから一番近い皇位の継承は、昭和六四年一月七日に第一二四代昭和天皇が崩御(ほうぎょ)(天皇が亡くなること)あそばしたときに起きました。
 この時、皇室典範第四条の規定により、皇室典範第二条が定める第一位の皇位継承者であられた、当時の皇太子殿下(昭和天皇の皇長子)が皇位を継承され、天皇に即位あそばしました。
 現在の皇位継承資格をお持ちの方は、皇族男子七名のみです。その順位は次のようになっています。

 1 皇太子殿下(皇長子)
 2 秋篠宮殿下(皇次子)
 3 秋篠若宮殿下(皇次子の長子)
 4 常陸宮殿下(皇兄弟)
 5 三笠宮殿下(皇叔父)
 6 ェ仁親王殿下(皇叔父の長子)
 7 桂宮殿下(皇叔父の次子)

 次に天皇になられるのは皇太子殿下です。皇太子殿下には男のお子様がいらっしゃらないので、その次は皇太子殿下の弟でいらっしゃる秋篠宮(あきしののみや)殿下がお継ぎになります。
 そしてその次には、その長子でいらっしゃる、秋篠若宮(あきしののわかみや)殿下、つまり悠仁(ひさひと)親王殿下が即位されるわけです。
 しかし、秋篠若宮殿下が即位されるとき、宮家は一つもなくなっていることがほぼ確実です。
 なぜなら、現在の宮家で男のお子様がいらっしゃるのは秋篠宮家だけだからです。その他の宮家にはお男お子様がいらっしゃらないので、すべて間もなく途絶えることになります。
 そして、今から三、四十年以上経って秋篠宮殿下か秋篠若宮殿下が即位されるとき、秋篠宮家そのものもなくなります。
 ですから、このままこの皇室典範を維持していたのでは、将来宮家がなくなってしまうことになるのです。
 もしそのようなことになったら、それは皇統の危機であると考えなくてはなりません。宮家といのは、そもそも天皇の血のスペアとして存在しているものですから、血のスペアがなくなったら、皇位継承は危ないのです。
 長い皇室の歴史のなかで、これまで三回、皇統の危機にあたり、宮家や傍系の王家から天皇を擁立したことがありました。
 いかに皇族を確保するか。これがいまの皇室にとって最も重要な問題です。

関連資料
■憲法第二条【皇位の継承】
 皇位は、世襲のものであつて、国会の議決した皇室典範の定めるところにより、これを継承する。

■皇室典範第一章 皇位継承
第1条 皇位は、皇統に属する男系の男子が、これを継承する。
第2条 皇位は、左の順序により、皇族に、これを伝える。
1.皇長子
2.皇長孫
3.その他の皇長子の子孫
4.皇次子及びその子孫
5.その他の皇子孫
6.皇兄弟及びその子孫
7.皇伯叔父及びその子孫
2 前項各号の皇族がないときは、皇位は、それ以上で、最近親の系統の皇族に、これを伝える。
3 前2項の場合においては、長系を先にし、同等内では、長を先にする。
第3条 皇嗣に、精神若しくは身体の不治の重患があり、又は重大な事故があるときは、皇室会議の議により、前条に定める順序に従つて、皇位継承の順序を変えることができる。
第4条 天皇が崩じたときは、皇嗣が、直ちに即位する。

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出典:「お世継ぎ」(平凡社)八幡和郎 著
皇室の系統図(クリックで拡大)

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作家 プロフィール
山崎 元(やまざき・はじめ)
昭和50年、東京生まれ。旧皇族・竹田家に生まれる。慶応義塾大学法学部法律学科卒。財団法人ロングステイ財団専務理事。孝明天皇研究に従事。明治天皇の玄孫にあたる。著書に『語られなかった皇族たちの真実』(小学館)がある。
artist H.P.>>
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