第92回(神棚の祀り方@)では、神社から頂いてきたお札を大切にする方法として、神棚を設置する方法を説明しました。
今回は、実際にどのようにお札をお祀りしたらよいか、その方法について説明することにします。
神の霊が宿る神聖なものを「御神体(ごしんたい)」といいます。設置したばかりの神棚はただの棚ですが、そこに御神体を納めることによって、神の宿る神棚になります。
神棚に納める御神体は「お札」が一般的です。お札は「神札(しんさつ)」や「神符(しんぷ)」ともいいます。それ以外にも、神鏡(しんきょう)や神剣(しんけん)などを御神体とすることもありますが、それは特殊な例になりますから、ここではお札をお祀りする方法について見ていきましょう。
お札は神社を参拝したときに、神社から頂くことができます。お守りを頒布(はんぷ)しているところで、お札も頒布されています(お守りやお札は神様そのものと考えられて印酢。ですから、「販売」とはいわず「頒布」といいます)。
そして、お札のなかでも代表的なものは、伊勢の神宮で頒布されている「神宮大麻(じんぐうたいま)」です。神宮大麻は天照大御神(あまてらすおおみかみ)の御霊が宿るお札で、全国で最も多く頒布されているお札でもあります。
神宮大麻は伊勢の神宮だけでなく、全国の神社でも頒布されています。ちなみに、平成十九年度の神宮大麻の頒布数は、全国で合計8,993,617体でした(お札は神様なので、一体、二体と数えます)。
また伊勢の神宮以外の神社でも、神宮大麻にならって、それぞれの神々のお札を頒布しています。
では、日本全国には様々な神社が様々な神々を祀っているなかで、どのようなお札を神棚にお祀りすればよいのでしょうか。
第一に、家庭の神棚にはやはり神宮大麻をお祀りするべきです。伊勢の神宮は日本中の神社が本宗(ほんしゅう)として仰(あお)ぐ尊いお宮です。伊勢の神宮に祀られる天照大御神は天皇の祖先と考えられていて、日本国民の総氏神(そううじがみ)といえる神様です。
次にお祀りすべきは氏神(うじがみ)でしょう。氏神とは氏族の先祖に当たる神、もしくは、地域の守護神をいいます。
氏族が特別に祀っている神様がいる場合はそれが氏神になりますが、現在では氏族の観念が薄くなっていますから、地域の守護神を氏神としてとらえて差支えありません。地域の守護神は二種類に分けられます。ひとつは自分が生まれた土地の神様、そして自分が今住んでいる土地の神様です。前者を産土神(うぶすなのかみ)、後者を鎮守神(ちんじゅのかみ)といいます。
産土神は、その人が別の土地に引っ越したとしても、生涯を通じて守ってくれる神と考えられています。
ですから、生まれた土地から引っ越して、現在は別の土地に住んでいる人なら、産土神と鎮守神の両方を氏神としてお祀りするとよいでしょう。
ところで、生まれた土地に今も住んでいる人にとって、産土神と鎮守神は同じということになります。
これまで産土神について意識したことがない人も多いでしょう。そういう人はこの機会に、自分が生まれた土地の主な神社を調べてみてください。産土神を大切にすることで、きっとご利益があるはずです。
また、引越しをするとき、前の家の鎮守神には、これまで守ってくださったことに感謝を申し上げ、新しい家の鎮守神には、これからここに住まわせて頂くことを報告し、これからお守りいただけるように祈願すべきでしょう。
氏神は神宮大麻と同時にお祀りして構いません。
さらに、それぞれの家庭や個人が特別に崇敬(すうけい)する神様がある場合は、もちろん神宮大麻・氏神と一緒にお祀りすることができます。
いくつか代表的な神様を挙げてみましょう。
高御産巣日神(たかみむすひのかみ)
神産巣日神(かみむすひのかみ)
豊受大御神(とようけのおおみかみ)
建速須佐之男神(たけはやすさのおのかみ)
大国主神(おおくにぬしのかみ)
少名毘古那神(すくなびこなのかみ)
事代主神(ことしろぬしのかみ)
最後に、神棚に祀る神として、祖霊神(それいしん)があります。いわゆる先祖の御霊に当たります。
ただし、先祖の御霊は、神々と同じ棚にお祀りするのではなく、神棚とは別のお社を設けてお祀りするのが一般的です。やはり神様は格別な存在ですから、先祖の御霊といっしょにお祀りするのははばかるべきです。祖霊神をお祀りするお社を、特に祖霊舎(それいしゃ)と呼びます。
神棚にお祀りする神様は、次のようにまとめられます。
1.天照大御神(あまてらすおおみかみ)
2.氏神(うじがみ)
3.それぞれの家庭や個人が特別に崇敬(すうけい)する神々
4.祖霊神(それいしん)
ところで、複数の神様をお祀りして、神様同士が喧嘩してしまうようなことはないのでしょうか。また、複数のお札を配置する順序はあるのでしょうか。次回はその具体的な方法について説明します。
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