vol.89 景行天皇@(古事記、第二十八話)
大帯日子淤斯呂和気天皇(おほたらしひこおしろわけのすめらみこと)(第十二代景行天皇(けいこう・てんのう))は、纒向之日代宮(まきむくのひしろのみや)において天下を治めました。
天皇は多くの妻をもち、八十人の御子(みこ)を授かりました。御子たちは、名前などが記録されているのが二十一王、記録されていないのが五十九王です。古事記はここで景行天皇の御子を列挙していますが、後にまとめて掲載することにしましょう。
その中でも若帯日子命(わかたらしひこのみこと)と倭建命(やまとたけるのみこと)と五百木之入日子命(いほきのいりひこのみこと)の三王は、皇位を継承する資格を持つ太子(ひつぎのみこ)となります。
その他の七十七王は、みな国造(くにのみやつこ)、また和気(わけ)、稲置(いなき)、県主(あがたぬし)に任命され、諸国を与えられました。
若帯日子命は次に天皇に即位し、また倭建命は、東西の荒ぶる神、そして、まつろわぬ(従わない)人々を平定することになります。
天皇(すめらみこと)は、三野国(みののくに)に、兄比売(えひめ)と弟比売(おとひめ)という、それはたいそう美しいという嬢子(をとめ)がいると聞きました。
この姉妹は、三野国造(みののくにのみやつこ)の祖である大根王(おほねのおおきみ)の娘です。
そこで天皇は、御子(みこ)の大碓命(おおうすのみこと)を姉妹のところに遣わして、二人を連れて来るように命じました。
しかし、遣わされた大碓命は、美しい姉妹を天皇の元に連れ帰らず、自分がその二人と結婚してしまいました。そして大碓命は他の女性二人を探し、その女性を連れ帰り、兄比売と弟比売だと嘘をついたのです。
ところが天皇は、その二人が別の女性であることに気付きました。でも常に眺めるばかりで、結婚するわけでもなく、悩んでいました。
大碓命が兄比売を娶(めと)って生んだ子は押黒之兄日子王(おしぐろのえひこのおおきみ)。これは三野之宇泥須和気(みののうねすわけ)の祖に当たります。
また、弟比売を娶って生んだ子は押黒弟日子王(おしぐろのおとひこのおおきみ)。これは牟宜都君(むげつのきみ)等の祖に当たります。
この天皇の御世(みよ)では、田部(たべ)を定めました。また、東之淡水門(あづまのあはのみなと)を定め、また膳之大伴部(かしはでのおほともべ)を定め、また、倭屯家(やまとのみやけ)を定め、また、坂手池(さかてのいけ)を作り、竹をその堤に植えました。
大碓命(おおうすのみこと)は、朝と夕方に行われている宮中での儀式にまじめに参加しませんでした。天皇がその弟の小碓命(おうすのみこと)(後の倭建命)に、「どうしてお前の兄は、朝夕の大御食(おおみけ)に出席しないのか。お前が兄を教え覚(さと)しなさい」と言いました。
ところが、それから五日たっても、兄の大碓命は儀式に参加しませんでした。
そこで天皇は小碓命に、「どうしてお前の兄は、まだこないのか。もしくはお前はまだ兄を教え覚していないのか」と尋ねると、小碓命は「すでに言い聞かせました」と答えました。
そこで天皇が「どのように言い聞かせたのか」と聞くと、小碓命は「明け方に兄が厠(かわや)(トイレのこと)に入ったとき、待ち構えて掴みつぶして、手足を引き裂いて、袋に包んで投げ捨てました」と答えました。
それを聞いた天皇はびっくりしました。天皇は、その御子(みこ)の猛々(たけだけ)しく荒い性格を恐れ、小碓命を遠ざけるための口実として、次のように命じました。
「西の方に熊曾建(くまそたける)が二人いる。これはまつろわぬ(従わない)者である。その者どもを討て」
小碓命は、この時はまだ、その髪を額(ひたい)の上で結(ゆ)う、少年の髪型をしていました。
何も知らない小碓命は、姨(おば)の倭比売命(やまとひめのみこと)から衣装を貰い、剣を懐(ふところ)に収めて、勇んで出かけていきました。
兄を殺害して、その死体をバラバラに切り刻んだという小碓命は、その後一体どのようになるのでしょう。
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出典:「お世継ぎ」(平凡社)八幡和郎 著
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作家 プロフィール
昭和50年、東京生まれ。旧皇族・竹田家に生まれる。慶応義塾大学法学部法律学科卒。財団法人ロングステイ財団専務理事。孝明天皇研究に従事。明治天皇の玄孫にあたる。著書に『語られなかった皇族たちの真実』(小学館)がある。
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