本殿に参拝することは神社参拝のメインですが、何か特別の祈願をする場合は、自分で神前に参拝するだけでなく、神主さんに祝詞(のりと)を奏上(そうじょう)してもらうとよいでしょう。「昇殿参拝」「正式参拝」などといいます。
特別な祈願でなくとも、年に一度は、地元の神社や、信仰する神社に正式な参拝をすることは気持ちのよいものです。さらに特別な祈願の場合は、お神楽(かぐら)を奉納(ほうの)することもできます。
通常昇殿参拝は、社務所(しゃむしょ)や、お守りやおみくじなどを配布している所で申し込むことができます。御祈願の申込用紙に記入し、初穂料(はつほりょう)を納めると、申し込みは完了です。
自分の名前と住所は、神前で神主さんに読み上げてもらうことになるので、読み間違いを防ぐために、丁寧な字で大きく書くようにしてください。
初穂料は、お札の大きさや、お神楽奉納の有無などによって金額が決まっていますが、小さな神社では、そのような表がないところもあります。その場合は任意の金額を自分で決めます。
また、必ず祈願の内容を書く欄がありますが、あまり多くのお願いをするよりは、一つか二つにするとよいでしょう。神社によっては、お札一枚あたり(申込書一枚あたり)祈願は一つと決めているところもあります。
祈願には多くの種類がありますが、一般的なものでは「家内安全(かないあんぜん)」「神恩感謝(しんおんかんしゃ)」「厄除(けやくよ)け」「商売繁盛(しょうばいはんじょう)」「心願成就(しんがんじょうじゅ)」「学業成就(がくぎょうじょうじゅ)」などがあります。
当然、祈願の内容によって、神主さんが奏上する祝詞が変わってきます。また、小さな神社では、ご祈願をお願いする具体的な理由を神主さんに話すと、その人に合った、特別の祝詞を作ってくれることもあります。
神社は土日祝祭日には混雑しますから、ご祈願も多くの人と一緒になることがあります。もし少人数で、もしくは個別に祈願したいなら、平日の朝早くを狙うとよいでしょう。神社によっては早朝から受け付けているところがあります。日の出直後の参拝は清清しいものです。
さて、昇殿参拝の作法について説明することにしましょう。ご祈願は、神職による清祓(きよはら)いからはじまり、祈願の祝詞、そしてその後で場合によってはお神楽があります。
その間、畳に正座、もしくは椅子に座っているわけですが、ただ座っているだけではいけません。
特に大切なのは、神職が祝詞を奏上するときは必ず低頭(ていとう)(頭を下げること)します。具体的には、礼(れい)の程度、かるくお辞儀をした状態を継続します。
神前に椅子が用意されている場合は、もちろんその椅子に座ってよいのですが、神主が祝詞を奏上している間は、一旦立ち上がり、上半身を三十度程度前に倒した礼の状態を保ちます。祝詞がおわったら、椅子に腰掛けて構いません。
また、畳に正座している場合、祝詞の間は、正座したまま、やや前方に手をついて(両手は付ける必要はない)、上半身を三十度程度前に倒した状態を保ちます。
本来は自分で祝詞を奏上すべきところ、自分に代えて神職に祝詞を奏上して頂いているのだから、その間は、自らが祝詞を奏上している気持ちで、礼の姿勢をとるわけです。
また、このように低頭するのは、祝詞奏上のときだけではありません。ご祈願の最初の方で、神職がお榊(さかき)や鈴やお塩などで祓いをしてくださるときにも低頭します。
また、神職が二拝(はい)や一拝をする時には、タイミングを合わせて、同じように二拝や一拝をします。勝手が分からなければ最初は省略しても構いませんが、ご祈願の流れが頭に入ってきたら、神職に合わせて、二拝や一拝をしてみてください。
ところで、立っている場合の礼と拝については、前回説明しましたが、畳に座っている状態ではまた作法が違います。
正座している状態の礼は、やや前方に両手をついて(両手はくっつける必要はない)三十度程度上半身を前に傾けます。
また、座っている状態の拝は、正面に両手をついて(このときは人差し指の内側同士を軽くつけます)、両手の間の三角形の空間に鼻をうずめるようにして、九十度、上半身を前に傾けます。これは、平伏する状態になります。
神職によるご祈願が終わると、今度は参拝者が神前に二拝二拍手一拝の作法で参拝します。基本は、前回説明した参拝の作法「一礼二拝二拍手一拝一礼」と同じです。
しかし、昇殿参拝の場合は、神職から一人ずつに玉串(たまぐし)が渡されることがあります。
玉串とは、神前に供える榊の枝のことで、神職から渡されたら、自然な形で受け取り、受け取ったままの形で神前に進みます。そして神前で、玉串を時計回りに回して、枝の根元を神様の方に向くようにして、台に乗せます。
そして玉串を差し上げたら、基本的な作法でお参りをします。
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