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vol.84 正しい神社参拝の方法A
 前回は、神社参拝の服装、日時、参拝プランの立て方、神社の選び方などについて説明しました。今回は実際の神社参拝の方法について述べていきます。

 神事にとって大切なことは「清浄」、つまり清らかであることです。それに対して、清浄でない状態は「穢(けが)れ」と呼ばれ、神事から遠ざけなくてはいけません。
 ですから、神社参拝にあたっては、まず身と心を清らかな状態にすることが大切です。実際には、家を出るまでにお風呂に入り、体をきれいにします。これで身が清められたことになります。服装や持ち物も清潔なものを選ぶべきです。
 そして、家に神様を祭る神棚や、先祖を祭る祖霊舎(それいしゃ)や仏壇があれば、これから神社に参拝することを報告するとよいでしょう。そのうえで、道中、神社で神様にどのような報告やお願いをするかなどを考えることで、自然と心が清らかになります。
 もし家に神棚がなくても、気にすることはありません。大自然こそが神ですから、母なる自然に対して感謝の気持ちを込めて心の中で唱えても同じことです。先祖についても同様です。祖霊舎や仏壇がなくても、心の中で先祖に話しかければよいのです。

 これから行く神社のお札やお守りが家にあれば、それをもって出かけます。古いものを神社に納め、新しいものを頂いてきます。
 お札やお守りは、およそ一年位の効力だと考えられています。初詣であれば、家にあるお札などをまとめて神社納めます。
 お札などを納める場所は神社ごとに決まっています。初詣なら入口の目立つ場所に「古札納所」などと書いた看板が出ています。
 お札やお守りは神様と同じですから、持参するときに大切に扱うようにしてください。間違っても、お札を入れた袋を電車の床に置くようなことをしてはいけません。

 さて、いよいよ神社の実際の参拝の方法について説明します。神社によってはいくつか入口がありますが、せっかくならば正面の入口から入るとよいでしょう。神様が住んでいらっしゃるお家にお邪魔するようなものだと考えてください。
 ただし、参道の中央を歩くようなことをしてはいけません。中央を避けて歩くべきです。鳥居をくぐるときも同じです。
 神殿に続く参道の中央を堂々と歩くことは「畏(おそ)れ多い」と考えてください。でも、わざわざ参道の端っこを歩く必要はありません。正中(せいちゅう)をはずせばそれでよいのです。

 神社には必ず鳥居がありますが、鳥居にはいったいどのような意味があるのでしょう。
 鳥居は神社を表示するもので、神社の神聖さを象徴しています。そして鳥居は神社の境内の内と外を区切る境に建てられています。
 つまり鳥居をくぐることは、御神域に入ることを意味するのです。ですから、鳥居をくぐる時には、一礼するようにしましょう。他人の家にお邪魔するときに玄関で礼をしてからあがるのと同じことです。
 神社によっては神殿までの間に、いくつかの鳥居をくぐる場合がありますが、鳥居をくぐる度に、より次元の高い神域に足を踏み入れると考えてください。

 神社によって異なりますが、大きい神社の場合、入口から近くに、罪穢(つみけがれ)を払うための小さなお社が建っていることがあります。通常お社には、御祭神(ごさいしん)や由来などについて説明書きがありますので、読めば分かるはずです。
 そこでは、最も有名な祝詞(のりと)である「祓詞(はらえことば)」を唱えるとよいでしょう。もし祝詞を知らなくても気にすることはありません。
 「これから神社を参拝させて頂きますが、私の罪と穢れをどうかお祓(はら)いください」
 と心のなかで唱えればよいのです。
 「祓詞」は文末に掲載します。せっかくですから覚えてみたらいかがでしょうか。また、この時の拍手などの作法は、神殿を参拝する時の作法と同じですから、次回を参照するようにしてください。
 ところで、祓詞は、伊邪那岐神(いざなきのかみ)が黄泉の国(よみのくに)から帰った時に、禊祓(みそぎはらい)をしたという『古事記』の記述にちなんだ内容です(詳しくは第17回「アマテラスの誕生」を参照してください)。
 祓詞を奏上(そうじょう)することで、神の力によって、改めて罪穢を祓うことになるのです。

 ところで、先ほどから「罪穢は祓わなくてはいけないもの」と説明してきましたが、罪穢とはいったい何なのでしょう。
 罪穢は、罪と穢れのことで、罪と穢れは別のものです。罪とは反社会的な行いのことで、人のものを壊しり、人を傷つけたり、人を呪ったりと、その種類は多くあります。
 これらの罪は、罪への代償として贖(あがな)いを差し出すこと、つまり「祓(はらい)」を行うことで精算することができると考えられています。
 一方、穢れは、出産、病気、死などによって伝播(でんぱ)するもので、穢れた状態になると、それは自らや他人に災いを与えます。穢れは神事から遠ざけなくてはいけないものと観念されてきました。
 穢れは水などによって流すことができます。それを禊(みそぎ)といいます。神社に出かける前に家で風呂に入るべきことを述べましたが、これが禊です。穢れが水に流されるのです。ちなみに、人を許すときに「水に流しましょう」ということがありますが、これは禊からきている言葉です。
 現在でもお葬式の帰りに袋に入った塩を渡されますが、自宅に入る前に、肩に塩をふることで、死の穢れを取り除くという考え方です。


 祓詞(はらえことば)
 掛(か)けまくも畏(かしこ)き伊邪那岐大神(いざなきのおおかみ)、筑紫(つくし)の日向(ひむか)の橘(たちばな)の小戸(をど)の阿波岐原(あはぎはら)に、御禊祓(みそぎはら)へ給(たま)ひし時(とき)に生(な)り坐(ま)せる祓戸(はらへど)の大神等(おおかみたち)、諸(もろもろ)の禍事(まがごと)罪穢(つみけがれ)有(あ)らむをば、祓(はら)へ給(たま)ひ清(きよ)め給(たま)へと白(まを)す事(こと)を聞食(きこしめ)せと、恐(かしこ)み恐(かしこ)みも白(まを)す、


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第83回、正しい神社参拝の方法@
第17回 アマテラスの誕生(古事記、第四話)
第73回、伊勢の神宮


出典:「お世継ぎ」(平凡社)八幡和郎 著
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作家 プロフィール
山崎 元(やまざき・はじめ)
昭和50年、東京生まれ。旧皇族・竹田家に生まれる。慶応義塾大学法学部法律学科卒。財団法人ロングステイ財団専務理事。孝明天皇研究に従事。明治天皇の玄孫にあたる。著書に『語られなかった皇族たちの真実』(小学館)がある。
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