皇室のきょうかしょ 皇室のあれこれを旧皇族・竹田家の竹田恒泰に学ぶ!
vol.10 年間の皇室費用は戦闘機1.5機分
 皇室に必要な費用は全て国家予算によりまかなわれていますが、毎年どのくらいの費用がかかっているのでしょう?
 皇室は天皇陛下と皇族方で構成されていて、現在二十二方いらっしゃいます。天皇陛下と皇族方には、御日常の私的な費用のために一定の歳費(さいひ)が用意され、その他御公務に必要な経費は別に予算が組み立てられます。
 皇居、京都御所、赤坂御用地、御料(ごりょう)牧場などを始めとする皇室用の土地、建物などの財産は、終戦後に国有化されたため、皇室の所有ではなくなりましたが、これらの保守管理に必要な計費は皇室に必要な費用として宮内庁関係予算に計上されます。宮内庁が管理する物件は数と規模があるため、まとまった経費が必要であることは想像がつくでしょう。
 たとえば皇居は敷地面積がおよそ115万平方メートル、そして建物の延べ面積がおよそ11万平方メートルの規模があり、管理費も決して安価ではありません。
 たとえば皇居の光熱費は、平成13年5月の例をあげると、月額で水道代は約931万円、電気代は約840万円、ガス代は約340万円、またNHKの「テレビ放送受信料」は一年分で約178万円でした。

 このような皇室にかかる費用は「皇室費」といい、公的費用と私的費用は厳格に区別して扱われます。その内訳をみてみることにしましょう。
 「皇室費」は、宮廷費、内廷費、皇族費の三つに分けられます。「宮廷費」は皇室の公的な費用、「内廷費」は天皇家の私的な費用、そして皇族費は内廷外皇族(天皇家以外の皇族)の私的な費用です。
 公の費用である「宮廷費」は、皇室の御公務に必要な経費、皇室用財産の管理および整備に必要な経費などで、毎年国会で予算が決定され、その金額は毎年変わります。平成18年度は62億5399万円でした。これは宮内庁が経理する公金(こうきん)です。
 また、私的な費用である「内廷費」と「皇族費」は法律によりその金額が定められています。「内廷費」は毎年定額が決められていて、また「皇族費」は宮家ごとに家族構成によって金額が算定されます。平成18年度は、それぞれ3億2400万円と2億7359万円でした。
 一度支出された「内廷費」と「皇族費」は御手元金(おてもときん)となり、宮内庁が経理する公金ではありません。

 そして平成18年度の「皇室費」の総額は、これらを合計した、およそ68億5157万円でした。
 この金額を高いと考えるか、安いと考えるか、それは国民一人ひとりの感覚の問題ですが、意外と安いのに驚いた人は多いのではないでしょうか。
 しかし、「皇室費」とは別に、宮内庁の運営に必要な経費「宮内庁費」がかかります。平成18年度は106億6156万円で、これを「皇室費」と合わせた平成18年度宮内庁関係予算の合計額は175億1313万円、国家予算の約0.2パーセントでした。
 F15戦闘機が1機約120億円ですから、年間の皇室の費用は戦闘機1.5機分程度、ということになります。
 そしてこの宮内庁関連予算の合計額を日本の人口で割ると、国民一人当たり、およそ135円です。
 昔、フランスのルイ王朝や、中国の清朝などで、王族の贅沢が国家を疲弊させ、国を滅ぼした歴史がありますが、それと比べると現在の日本の皇室は、極めて慎ましいといえるでしょう。

 次に皇族の暮らしぶりについて考えてみましょう。戦前まで皇族は豪華な暮らしをすることがあったようですが、今はかつてのような華やかな生活ぶりはないようです。
 内廷外皇族には家族構成に応じて毎年定額が歳費として支給されるのですが、その金額は、たとえば秋篠宮(あきしののみや)家は年間5000万円程度、一番ご家族の多いェ仁親王(ともひとしんのう)家は年間5900万円程度です。
 しかし、その歳費の約半分は人件費に当てられ、御子息の学費などもその中から支払うことになるので、決して絢爛豪華(けんらんごうか)な暮らしができるものではありません。
 ェ仁親王殿下が月刊誌のインタビューで次のようにお話しになっていらっしゃいます。

 「幸いに私には講演料や印税などがありますから、娘たちに栄耀栄華(えいようえいか)とまではいかなくても、それなりの生活を送らせることができますが、それがなければ本当にぎりぎりの生活でしょうね。」(『文藝春秋』平成18年2月号)

 しかも、皇族には医療保険がありません。ですから、風邪で医者にかかったり、虫歯で歯医者にかかったりすると、診療費は十割負担で、歳費から支払わなければなりません。まして大病をなさり、手術が必要になった場合は、大変な負担になるのです。


【平成18年度宮内庁関係予算】
@皇室費       68億5157万円
内訳 宮廷費 62億5399万円
    内廷費  3億2400万円
    皇族費  2億7359万円
A宮内庁費     106億6156万円
 合計       175億1313万円

注:四捨五入しているので、合計額は合わない


【平成17年度皇族費予算内訳】
秋篠宮家   5185万円
常陸宮家   4575万円
三笠宮家   4575万円
ェ仁親王家  5856万円
桂宮家    3050万円
高円宮家   3726万円
合計   2億6967万円


出典:「お世継ぎ」(平凡社)八幡和郎 著
皇室の系統図(クリックで拡大)

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作家 プロフィール
山崎 元(やまざき・はじめ)
昭和50年、東京生まれ。旧皇族・竹田家に生まれる。慶応義塾大学法学部法律学科卒。財団法人ロングステイ財団専務理事。孝明天皇研究に従事。明治天皇の玄孫にあたる。著書に『語られなかった皇族たちの真実』(小学館)がある。
artist H.P.>>
ケータイタケシ

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