<日本共産党羽曳野議員団ホームページ>
しんぶん赤旗連載『ハンナン牛肉偽装 癒着の構図』より
祝賀会に集う面々
「食肉業界のドン」大手食肉グループ「ハンナン」元会長の浅田満容疑者(65)の異名です。中央、地方政界に絶大な影響力を行使してきました。BSE(牛海綿状脳症)対策で国が実施した国産牛肉買い取り事業を悪用し6億4,000万円をだましとった容疑で逮捕されました。浅田容疑者と政界のただならぬ関係を追いました。
大阪でも最高級の大阪市北区中之島のリーガロイヤルホテル。2001年6月11日夕、大阪府食肉事業協同組合連合会(府肉連)の寺島一前会長(64)の祝賀会が開かれました。
祝辞で指名
前会長はこの年の春、大阪府と農水省の推薦で黄綬(おうじゅ)褒章を受けました。"食肉業界の大物"の一人で今回の牛肉偽装事件で真っ先に逮捕された人物です。当時の業界紙などの報道によると、祝賀会の来賓祝辞で、指名されたのが小林芳雄・農水省生産局長(代読=宮坂亘・農水省生産局畜産部食肉鶏卵課長)、太田房江知事(代読=鈴木重信副知事)、受託収賄罪で起訴された鈴木宗男前衆院議員(56)でした。元農水副大臣の松岡利勝衆院議員(五九)も参加しています。開会の辞をのべたのは、「解同」(部藩解放同盟)大阪府連副委員長などをつとめた山口公男氏(全国同和食肉事業協同組合連合会会長)。「解同」府連委員長の松岡徹氏もあいさつしています。浅田容疑者が府肉連の副会長をつとめていたことを寺島前会長は「浅田さんは表に出たがらない。それでわしも会長にさせられている」(「朝日」4月20日付)と語っています。翌2002年2月8日には、同じホテルで全国同和食肉事業協同組合連合会副会長の岩上清二氏(66)の祝賀会が開かれています。寺島容疑者が褒章をうけた同じ年の秋に府と農水省の推薦で同じく黄綬褒章を受けたのです。岩上氏も今回の牛肉偽装事件で逮捕されています。この祝賀会では、農水省の須賀田菊仁生産局長(代読)、太田大阪府知事(代読)、松岡衆院議員があいさつし、松岡「解同」府連委員長が山席しています。浅田、寺島、岩上の三容疑者。浅田容疑者を筆頭に食肉業界を牛耳る存在です。二人の祝賀会より前の2000年2月29日、就任まもない太田知事は、元横綱が親方をつとめる相撲部屋の激励会にかけつけました。浅田容疑者が「タニマチ」として後援する相撲部屋です。
自宅の接待
それから4カ月余りあとの7月8日夜。古噴など文化財の多い羽曳野市の一角。うっそうと木々がおいしげった浅田容疑者の豪邸に太田知事、梶本徳彦副知事、神尾雅也知事公室長、古財正三環境農林水産部長、北川イッセイ府議を含む数人の自民党府議らが招かれ接待を受けています。府議会で日本共産党に追及された太田知事らは、酒食のもてなしを受け、帰りには極上の牛肉が土産として渡されたことを認めました。さらに3カ月後の10月には、浅田容疑者の親族の結婚式が大阪市内のホテルで開かれました。この場には、太田知事の夫が来賓として出席しています。「食肉業界のドン」と太田知事や自民府議、鈴木前衆院議員との異常に深い関係は何を物語っているのでしょう。早々と焼却なぜ?
「この2週間、マスコミ各社からの取材攻勢でたいへんでした」と日本共産党柏原市議で、柏羽藤環境事業組合議会議員の桝谷政則さんは、大きな息をつきました。
あの時の質疑
どの記者も2002年11月の同組合議会の議事録を手にしていました。「あのときの質疑が今日これほど重要視されるとは当時思ってもみませんでした」と桝谷さん。
'01年10月に始まった国産牛肉買い取り制度は、BSEの感染拡大を防ぐため、国の助成金で買い上げる事業。チェックの甘さから輸入牛などを混入する不正が続発しました。
今回の牛肉偽装事件で問題になっているハンナン関連の買い取り申請肉は、早々と焼却されています。
疑惑の焼却現場となったのが、柏原市にある柏羽藤クリーンセンター。大阪・柏原、藤井寺、羽曳野の三市が協同して運営するゴミ焼却施設。桝谷さんは、組合の議会で、「国産牛焼却の依頼文書('02年1月15日付)が出される前に、大量の冷凍肉が焼却されたのはなぜか」と同焼却場の管理者である福谷剛蔵羽曳野市長に問いただしたのです。焼却された冷凍肉は輸入肉の疑いが指摘されています。桝谷さん以外の日本共産党の府議、市議にも、この間、マスコミ各社の取材が殺到しています。それというのも、「解同」(部落解放同盟)や同和行政の利権に絡んだ問題を追求してきたのは日本共産党だけだからです。
政府は'02年12月28日、買い上げた牛肉の焼却方法について、産業廃棄物ではなく、一般廃棄物扱いで処理していいという通達を都道府県に出しました。これを受け大阪府は、'02年1月15日に府内の市町村などに国と同様の通達を出しています。
ところが、同センターは通達が届く前の1月11日から、柏原市にも藤井寺市にも相談なく焼却を開始。1月15日までに230トンが焼却されていました。その後も同センターでの焼却が続き、冷凍肉の焼却は1日30トン程度とされていたはずなのに、1日117トンも搬入した日もありました。同所だけで4月1日までに1,633トンも焼却されました。市長との関係
なぜ、柏羽藤の焼却場がつかわれたのでしょうか。冷凍肉は、堺市にあるハンナン系の大阪食品流通センターに大半が保管されていました。堺市の清掃工場までは、わずか400メートル程度の近くにあります。柏羽藤クリーンセンターまでは、5キロ以上もあります。焼却能カも堺の方が格段に上回っています。
クリーンセンターの管理者は、羽曳野市の福谷剛蔵市長です。福谷市長は、浅田容疑者とはきわめて関係が深く、選挙事務所は浅田氏が支配するハンナングループの所有地にありました。
同じハンナングループの昭栄興業が代表の企業体が、16億円で落札した羽曳野市立と畜場の改装工事を、わずか6カ月後には福谷市長の専決処分で工事請負金額を約22億円までにアップさせました。
'02年11月26日の府議会。日本共産党の奥野勝美府議が牛肉焼却問題をとりあげました。
奥野議員が「府は15日に焼却の依頼文書が出る前の11日に焼却されたのを知っているか」と追求。流通対策室長が「(焼却は)なんら問題ない」と開き直り、関与を否定するのに躍起でした。しかし、政治家、行政とハンナングループの癒着には、疑いが強まっています。塩谷としお府議 「酒食の接待の費用は誰が出したのか。」
神尾雅也知事公室長 「費用は業者が負担しました。」
塩谷議員 「手土産はもらわなかったのか。」
神尾公室長 「肉をいただきました。」
ハンナン元会長・浅田満被告の豪邸(羽曳野市)で2000年7月8日におこなわれた酒宴の接待。太田房江大阪府知事らの参加について、日本共産党の塩谷府議(当時)が'02年3月15日の府議会総務委員会で質問したさいのやりとりです。
議会の直前に
浅田邸には太田知事、梶本徳彦副知事、神尾雅也知事公室長、古財正三環境農林水産部長ら府幹部と北川イッセイ府議を含む数人の自民党府議が集まりました。
酒宴が持たれたのは、松原食肉市場再編計画の調査費が補正予算案に計上された同年九月議会の直前でした。
「この酒宴こそ、太田府政や自民党とハンナングループとの癒着、同和行政での大阪府の『解同』いいなりの弱腰、BSE牛肉偽装事件でのあいまいな態度などをつくり出している原点といえるものです」と日本共産党の宮原たけし府議団長はいいます。
「結局最後は『松原食肉』にもどるなあ」--。牛肉偽装事件で逮捕者が相次ぐなか、府議会関係者からこんな声が聞こえてきます。
「松原食肉」とは、「松原食肉市場公社の再編問題」のこと。1989年に開設された、松原公社は、府が百億円以上の補助金を投入したにもかかわらず、経営が行き詰っていました。
府は、'01年の9月議会で、松原公社の破たん処理案を提示。同公社を羽曳野食肉市場と再編統合し、完全民営の新会社「南大阪食肉地方卸売市場」を設立するという計画でした。
補助金60億超
府などは、松原公社への貸付金14億円を放棄し、新会社の経営安定化を理由に54億円を援助、総額60億円を越す補助金を投入することになりました。
この再編統合のなかで、もっとも恩恵を受けたのが、浅田被告とその周辺の勢力です。救済を受けた松原公社の中心会社・松原食肉荷受の社長は浅田被告とともに牛肉偽装事件で逮捕された寺島一被告(府肉連元会長)。さらに新会社も同じく逮捕された藤瀬陽三被告が社長に就任。浅田、寺島両被告が役員に名を連ねています。
浅田被告への配慮はそれにとどまりません。統合によって解散・自主清算した南大阪食肉畜産荷受株式会社(社長・浅田満容疑者)から新会社「準営業権」を買い取るとして、「準営業権」に3億2000万を設定したのです。
「準営業権」という言葉は、学問上も商法上もないとの塩谷議員の追及に府は「同荷受が築いてきた産地との信頼関係や取引のノウハウ、生体牛の集荷能力を『営業権を準ずるものとした』とした」などとこたえました。しかし、理由の明確でない「つかみ金」ではないかとの批判を受けました。
あまりに露骨な浅田被告への利益誘導に自民党のベテラン府議からも「府は、異常なほど浅田さんに気を使っていた。この状態はまともではない」と憂慮する声が聞かれるほどです。
自民党などの国会議員、府議、市議そして政府・農水省、大阪府政、羽曳野市政、ハンナングループ・浅田被告にここまで横暴を許してきた背後にはなにがあるのか。その真相を明らかにすることは、日本のタブーである「同和利権」の構図に本格的にメスを入れることを意味します。(おわり)2004年5月5日〜5月8日新聞赤旗『ハンナン牛肉偽装 癒着の構造』より
この連載でみてきたようなハンナン元会長・浅田満容疑者と政管界の癒着。その裏にはハンナンなどの「同和食肉利権」追及が議会でもマスコミでもタブー視されてきたという事情があります。利権の中心に部落解放同盟(「解同」)が位置していたからです。
ここに『向野食肉産業百年史』(1990年発行)という本があります。本にはハンナングループの拠点、大阪府羽曳野市の地場産業である食肉業発展の歴史が記述されています。浅田容疑者を持ち上げる言葉が随所に登場します。「(南大阪食肉卸売商業協同組合の)役員改選がおこなわれ、5代目理事長に浅田満利(満)氏が選出されました。先取の意気に燃えて取り組んできた世紀の大転換を若いエネルギーにかけようとした組合の総意でもあった」
この本を発行した「向野地域産業と歴史研究会」会長の半田勝己氏は、食肉業界の幹部であると同時に、羽曳野市の「解同」支部長で市議会議員も務めた人物です。「解同」は、同和行政の窓口一本化を主張して、すべての同和行政や同和施策を「解同」が牛耳る同和促進協議会」などを通じて実施させることを行政に認めさせてきました。
役所に座りこみ
羽曳野市でも「解同」いいなりの市政が続いてきました。その流れを批判して1973年に当選したのが日本共産党員市長・津田一朗氏(故人〕の市政でした。「解同」は、連日、大量動員をかけて自分たちの利権を守ろうと市政を攻撃しました。津田氏はそのときのようすを自著『共産党員市長でえらいすんまへん』でこうのべています。「そらあ凄(すご)い脅追でしたわ。毎日、毎日、五百人、百人と、市役所の中に座りこみよりました。ずーっと私、監禁されましたがな...朝から晩まで飯も食わさしまへん」「あげくのはては、ある朝、家内が(自宅の)入口あけたら、血のこびりついた牛の首がポーンと置いたりますねン」
それでも津田さんはひるみませんでした。今回の生肉偽装事件の舞台となった同和系の食肉団体、全国同和食肉事業協同組合連合会〔全同食)の会長を務める山口公男氏は、「解同」大阪府連副委員長を務めていました。全同食は、当初、国産牛肉買い取り事業の窓口となる事業主体には入っていませんでした。しかし、浅田容疑者が農水省畜産部長を東京・銀座の高級肉料理店で接待するなどして要求するなかで、参入が認められたのです。
長期間放置され
農水省食肉部門で、「解同」系食肉業者を相手にしていた元職員は「集団で押しかけて、自分たちの要求を通すために大声を出すんです。机はバンバンたたくし、本当に怖かった」と体験を話ります。.元職員は、同和系業者にさわがれると、担当者の管理能力が問われるため、無理難題でも聞いてしまう官僚が多いといいます。マスコミも怖がって「解同」批判はやらず、日本共産党と「しんぷん赤旗」をのぞけば、誰も口をつぐむという異常事態が長期間放置されてきたのです。
浅田容疑者を描いた著書『食肉の帝王』の著者溝口敦氏はこう指摘します。「逮捕された今になってやっとマスコミも書き始めたが、それでもなお『解同』や同和問題をタブー視する傾向は続いている。この点では日本共産覚とその機関紙『赤旗』の役割は非常に大きかった」前回、部落解放同盟(「解同」)の利権タブーに挑戦した日本共産党員の津田一朗・羽曳野市長(故人)のたたかいを紹介しました。その逆が現在の福谷剛蔵羽曳野市長。ハンナングループとの癒着が問題になってきました。その福谷市長が一日、意外な行動をとりました。
「柏羽藤クリーンセンター」(管理者は福谷市長〕を運営する柏羽藤環境事業組合議会(柏原、羽曳野、藤灯寺の三市が参加)の会議で、同市長が議員全員に本紙連載記事(4)のコピーを配布したのです。
もともとこのセンターはハンナングループが国に買い取り申請した牛肉をいち早く焼却し、偽装牛肉証拠隠しの疑いを持たれています。その牛肉焼却は"国・府からの要請"という市、"府は関係ない"とする府。互いに対立するなか、府が焼却に関する文書を市に送ったと指摘した本紙記事があたかも市の"潔自"証明かのようにみえたのでしよう。
しかし、本紙記事は府の関与を指摘しただけ。市の疑惑を否定したものではもちろんありません。捜査当局は、すでに市幹部への事情聴取を重ねています。自身の"潔白証明"に使えそうなものは何でも使え、という市長の婆勢はかえって現在の苦しい立場をあらわしています。
要望どおり実現
この日の組合議会では、日本共産党の西条たか子議員(縢井寺市議〕の追及で、さらに重大な事実が明らかになりました。2001年11月28日。ハンナン元会長の浅田満容疑者(65)が羽曳野市役所に福谷市長を訪ね、「BSE(牛海綿状脳症)で倉庫で眠っている肉が焼却処分になった。羽曳野ではこれに対応できるかな」と打診したと認めました。農水省はその前日に「市場隔離牛肉緊急処分事業実施要領」をまとめ、当初、一時保管扱いだった買い取り肉を焼却処分に変更しました。また環境省は、浅田容疑者が市長を訪問したその日、全国の都道府県知事あてに、買い取り牛肉を従釆の産業廃棄物扱いから一般廃棄物扱いに変更すると通知したばかり。浅田容疑者の肉焼却の打診はあまりに素早い対応です。この要望どおり焼却が実現した経過にいま大きな疑惑が持たれています。
選挙で資金提供
福谷市長と浅田容疑者はいったいどういう関係でしょうか。
1989年4月、前出の津田市長に代わって市長に就任した福谷市長は、四回の市長選で二度にわたり浅田容疑者が率いるハンナングループの所有地を選挙事務所用地に使い、資金の提供も受けていました。他方、福谷市長は一期目の1992年に、羽曳野市立と畜場の改築工事をハンナングループの昭栄興業が中心になったJV(共同企業体)に総額16億円で発注しました。工事請負契約から、わずか5カ月後に市長の専決処分で改築工事を新築工事に変え、6憶円も工事請負代金を上積みしました。異常な経過でした。また、同じハンナンクループのぺーパー会社「浅田建設」に、92年から97年の5年間に12億円もの羽曳野市の公共事業が発注されていたことが市議会で明らかになりました。同社の本社があるとされている場所には、事務所の実態がないことも判明しました。こうした不透明な関係が以前からつくられていたのです。大阪・羽曳野市のほぼ中央部にハンナン元会長、浅田満容疑者(65)が住む「聊娯亭(りょうごてい)」があります。浅田容疑者が政界、官界、業界、芸能界などの来賓を招く「迎賓館」で、別名"浅田御殿"とも呼ばれています。
門から邸宅まで自動車で入る豪邸。敷地は庭も含めて約9,200平方メートル(約3,000坪)もあります。建物には名画を飾り、庭石もぜいをつくしています。
ここは、連載(5)で紹介したように、太田房江大阪府知事、自民党の北川イッセイ府議(参院選大阪選挙区予定候補)などが酒食の接待を受け、極上の箱入りの牛肉を土産にもらって帰ったいわくつきの場所です。
"浅田御殿"の建物は鉄筋コンクリート造り、瓦ぶき二階建て。のべ床面積は1,559平方メートル。土地・建物の取引価格が10億円を下らないといわれます。
6月7日開かれた羽曳野市議会で、浅田容疑者が「聊娯亭」用地を入手した経過が問題になりした。知事認可が必要
用地はいずれも浅田容疑者が1989年以来、地元の財産区から買収、交換、借地の形で入手したもの。財産区の管理者は羽曳野市長です。買収も借地も知事の認可が必要です。
ところが、全体の3分の1に当たる3,300平方メートル(約1,000坪)は、財産区からの借地であるにもかかわらず、知事の認可がないうえ、賃貸料は年間12万円という超格安賃料になっていたのです。日本共産党の嶋田たかし市議が調査で明らかにし、市側の答弁を求めました。
総務部長の答弁は、<1>知事の認可は賃貸契約の場合は要らないはず<2>賃貸料は、浅田容疑者が約3億円かけて池の周りに防災上の設備を施したため、それを賃料に含めると安いどころか高いぐらい----というものでした。
嶋田市議は反論しました。知事の認可は府のほうが必要といっており調整が必要なこと。現場に行けばわかるように、防災設備は、実際には池の周りではなく「聊娯亭」の周りを囲う塀になっていること。こうした事実を示し、賃貸契約に署名した福谷剛蔵市長の責任をきびしく指摘しました。
さらに、傍聴者を驚きあきれさせたのは、羽曳野市長が管理者になっている「柏羽藤クリーンセンター」を運営する柏羽藤環境事業組合が全国同和食肉事業協同組合連合会など三団体に発行した焼却証明書です。3団体の合計で
三団体の合計が焼却したとされる肉の量と合計額が合っていたので、三団体が申請してきた数字をそのまま認めて発行したというのです。
焼却された肉が国産牛なのかどうか、すべてが肉だったのかどうかなどきちんと調べず、いわれるがままに焼却した肉の量を証明したのでは、真実はわかりません。
同クリーンセンターは、大阪府が焼却の要請通知(2002年1月15日付)を府内の市町村に出す以前の同月11日から早々と焼却をしていました。
疑惑の渦中にある福谷市長は、7日の市議会を欠席しました。5日夜、突如入院したからです。
牛肉偽装事件に行政が加担したことになるのではないか、という疑いは深まるばかりです。ハンナン元会長、浅田満容疑者(65)の邸宅がある大阪府羽曳野市の福谷剛蔵市長(62)==5日から入院中==にますます疑惑が深まっています。
両者の深い関係は連載でも繰り返しふれてきました。10日明るみに出たのは、福谷市長が、浅田容疑者の市長来訪日時を実際よりあとにずらすよう部下に指示した文書改ざんの疑いです。
これまで市長が説明してきた訪問日は農水省が焼却処分を決めた翌日の2001年12月28日。これより前に、浅田容疑者が市長を訪問、市長が管理者の「柏羽藤クリーンセンター」での牛肉焼却を打診していたとすれば、浅田容疑者が農水省の方針を発表前に知っていて、手を打ったことになります。
顧問に浅田実弟
福谷市長と浅田容疑者の接点は、政治資金でも確認できました。
福谷市長の政治資金管理団体は羽曳野政経研究会です。所在地は羽曳野市南恵我之荘八丁目の福谷市長の自宅。
会発足当初から、会顧問として名を連ねているのが、ハンナングループ中核企業のひとつ、阪南畜産株式会社の浅田英樹社長。同社長は浅田満容疑者の弟です。
会規約によると、顧問は「この会の諸問題の諮間に応じます」とされ、現在、福谷市長が緊急入院している城山病院の会長の池浦達雄氏も顧問の一人です。
1999年3月の同会名簿によると、会員は98人。このなかには、ハンナングループの「ハンナン開発株式会社」「阪南畜産株式会社」「ハンナンマトラス株式会社」(後に「日本マトラス」に改名)の3社も名を連ねていました。
なかなかの金額
羽曳野政経研究会が集める資金はなかなかの金額です。
羽曳野市長選挙が行われた2001年分の収支報告書を見ると、前年繰越額(2,867万7,630円)と、本年収入(2,326万5,252円)を合わせて、約5,200万円あります。
いずれも「個人の負担する党費または会費」で180人分となっています。
同会規約は、第十条(会費〕で「通常会費一口月額一万円」と規定。「臨時会費、必要に応じて会長が会員に諮り納入する」となっています。
1993年4月の市長選は日本共産党羽曳野市議だった湯浅省吾氏と福谷市長との一騎打ちのたたかいでした。このときは、同年3月10日付の「特別会費徴収についてのお願い」を「会員各位」にだして「一口5万円(一口以上のご協力を頂ければ幸いです)」の協力を求めていました。
結局、この年は、前年繰越額と含めて6,277万6,113円もの収入があったと報告され、そのうち4,000万円が福谷氏の選挙母体となった「市民連合」に流れていました。
選挙や政治資金でも福谷市長とハンナングループとの接点が浮かんできます。
大阪・羽曳野市の福谷剛蔵市長(62)の辞意表明-----。14日、突然の事態に、市役所は報道陣や市議会関係者でごった返しました。
あるマスコミ関係者が日本共産党の嶋田たかし議員(市議団長)に、「共産党と『赤旗』が、ずっと追及してきた成果ですね」と話しかけました。
<写真はしんぶん赤旗より>
「ひきょうやな」
突然の事態に驚く市職員は「辞任するのは逃げたようなもの」「ここで辞めるのはひきょうやなあ」といいます。「やましいことをしてないなら辞める必要はないだろう」という声も多い。市長の辞任を受けて15日開かれた羽曳野市議会は、福谷市長の辞職を承認。市長選(7月18日告示、25日投票)に向かって動き出しました。
しかし、市長辞任で疑惑が晴れたわけではありません。辞任せざるをえないほどの闇は一体何なのか。
まずはっきりしているのは市長の面談記録改ざん自体が犯罪だということです。
市長の日程・行動を記録した文章は公文章。福谷市長はその公文章から、牛肉偽装事件で逮捕・起訴された浅田満容疑者(65)との面談記録を改ざんし、隠すよう命じました。その行為自体が公文書毀損(きそん)にあたるとして大阪府警が書類送検する方針です。
しかし、もちろんそれだけで終わるものではありません。市議会全員協議会や記者会見で配布された福谷市長の文書によれば、実際には、市長は浅田容疑者と2001年12月5日、13日、28日の、3回会っていました。そのうち、28日の一日だけを残してあとを改ざんしたのです。
この28日は環境省が都道府県知事あてに隔離牛肉を産業廃棄物ではなく一般廃棄物として焼却場で焼いてよいとの通知を出した日です。農水省が隔離牛肉の一時保管から焼却処分にすることを決めたのはその前日の27日でした。
削除された5日と13日はそのはるか前。
浅田容疑者と福谷市長で焼却処分が決まる前から肉の焼却による「証拠隠滅」の相談をしていた疑惑がいっそう強まってきたのです。
福谷市長が管理者をしていた焼却場の「柏羽藤クリーンセンター」は、浅田容疑者の要請にこたえて、2002年1月11日から焼却をはじめ、2月末までに1,600トンもの肉を焼きました。その理由や福谷市長の関与などは一切明らかにされていません。
もし、浅田容疑者が肉の早期焼却で証拠隠滅をねらい、それを承知で協力したとしたら、福谷市長の責任も重大です。
公正市政実現へ
日本共産党の嶋田議員はいいます。
「市長は辞職で、みずからの責任は逃れられると思っているのでしょうがとんでもない。むしろ疑惑はいっそう深まっています。市政を刷新して公正で民主的な市民のほうを向いた羽曳野市政を実現するために引き続きがんばりたい」本連載でも指摘してきたように、ハンナン一元会長・浅田満被告らの「同和食肉利権」の中心に位置するのが部落解放同盟(「解同」)の存在です。
予算食い荒らす
牛肉偽装事件の舞台となった同和系食肉団体も「解同」の強い影響のもとに誕生しました。浅田被告は、「解同」と深いつながりのある部落解放大阪府企業連合会(大企連)一の副理事長を今も務めています。この「解同」による利権あさりを正面から批判してたたかったのが日本共産党です。
浅田被告が豪邸を構え、事業の拠点とする大阪府羽曳野市では、1973年、「解同」いいなりの市政を批判して、日木共産党市議だった津田一朗さんが市長に当選しました。市長は、自著『共産党員市長でえらいすんまへん』に、「同和事業、同和事業ということで、どんどん市の予算が食い荒らされて」いた実態を記しています。
同和予算が総予算の三分の一以上を占め、市発注工事の八割を海原建設という同和系企業が独占。海原建設社長は、和歌山県にクジラを飼う別荘を持つほど、豪華な暮らしぶり。
同和対策のための施設は特別に豪華。同和指定校の中学校は、「御殿みたいな体育館」で「教室の廊下の幅は……ダンプカーでも走」れるほど(同著)でした。
「解同」は津田市長の当選に逆上。同和向け公営住宅の人居者決定を「解同」支部にまかせず、市が決めるという当たり前の方針を打ち出した津田市長を脅迫しました。自著に収録された津田さんの講演から紹介すると-・「夜中にね、私の家のぐるりをとり巻いて、どんどん戸を叩いて、家の前でたき火をして、拡声器で怒鳴りちらかした」「朝起きて、私の車の置いたる駐車場にいってみましたらね。・・車に『差別者津田』って、ごっついペンキで書いてありますねん。それにまわりいたるところポスターだらけですわ」
牛の首転がして
「あげくのはては、ある朝、家内がガラッと入口をあけたら、血ぃのこびりついた牛の首がポーンと置いとりますねン。それもうちだけと違いますのや、私とこの家の前、当時の公室長の家、同和対策部長の家ね、建設部長ね、公室長の家は大きいので二つ、合計五つも置きよった。うちの家内、もうちょっとで腰ぬかすとこやった。(笑い)私はそんなんこたえんけどね、女にはこたえますわなあ。『お父ちゃん、首おいたるゥ!牛の首やぁ!』いうからね、『肉ついたるかあ』(笑い)ていうたら『肉あらへん』」
津田さんが「一番胸を痛めたんは、職員のこと」でした。「解同」はついに職員に陶器の灰皿でなぐりかかり、重傷を負わせました。それでも職員は市長を守り抜き、市民が支えたのです。
攻撃の中心部隊は、同和系食肉団体結成でも影響力を発揮した上田卓三「解同」元委員長が府委員長当時の「解同」大阪府連でした。
今回のハンナン事件の背景には、同和利権を許さないために公正・民主の市政をおこなおうと立ちあがった人びとのたたかいの歴史があります。「同和食肉利権の闇をよく追及してくれた」一。運載に読者から激励がよせられています。大阪府堺市のタクシー運転手の男性は、こんな電話をかけてきました。「ほかの新聞には、牛肉偽装事件の進展はのってるけど、肝心の背景がわからへん。『解同』タブーにズバリ切りこんでいるのは『赤旗』だけや」さらに続けてこういいました。
「この前の参院選は、他のとこやったけど、今回は共産党に入れる。利権がはびこる一方で、年金は改悪…・・。ひどい政治をなんとかして」
自民議員も評価
ハンナン元会長・浅田満被告らの牛肉偽装事件では、日本共産党の国会での追及が、大きな役割をはたしました。
「タプーを追及した勇気ある質問」。自民党議員からもそう評価されたのが、2002年7月10日の富樫練三参院議員の質問。BSE(牛海綿状脳症)対策事業の買い取り牛肉の大阪分全量がハンナン系の冷凍倉庫に保管され、それが早々と焼却処分された。牛肉偽装事件追及の端緒といえる内容でした。農水省畜産部長が銀座の高級肉料理割ぽうで、浅田被告らの接待を受けていた。それも牛肉買い取り事業の開始直前に。今年5月19日、小林みえこ参院議員は農水省生産局長にこの重大事実を認めさせました。
さらに6月3日の参院農水委員会では、宮本岳志議員がせまりました。問題の接待で畜産部長と担当者は飲食代を支払っておらず、国家公務員倫理法で義務付けられている届け出もしていなかった。農水省と浅田被告の癒着ぶりが鮮明になりました。大阪選挙区に立候補する自民党元府議は浅田被告の豪邸で接待を受け、超高級牛肉のお土産をもらってきました。宮木議員との対比は鮮やかです。
答弁訂正し陳謝
浅田被告と国会議員の親密な関係もクローズアップさせました。緒方靖夫参院議員の質問で、浅田被告やハンナン関連企業から政治献金やパーティー券で資金援助を受けている議員の全容が明らかになりました。中川昭一経産相は、緒方議員の質問に二百万円分のパーティー券を購入してもらったことを認めました。5月18日にほ、新たに百万円分あったことも認め、「もうない」といっていた答弁を訂正し、陳謝する事態に。
ハンナングループ企業の産地偽装を内部告発にもとづいて追及したのは、大沢たつみ参院議員でした。BSEの検査済み証明書を悪用した国産牛肉の産地偽装をおこなっていたことを明らかにしたのです。
牛肉偽装事件にからんで前市長が辞職に追い込まれた大阪府羽曳野市では、参院選に引き続いて市長選がおこなわれます。日本共産党や民主団体(広範な市民でつくる「公正・民主的な羽曳野市政をつくる会」が擁立するのは、元日本共産党市議の杉山やよいさん。津田一朗元市長のもとで、日本共産党市議として津田市政を支えた黒川寿満男さん(63)は力をこめます。「私も『解同』にひどい目にあわされた。しかし、津田さんと力を合わせて市民の利益を守るために必死でがんばった。その姿勢が市長のきさくな人柄とともに信頼につながり、四期の市政となりました。偽装事件がらみの市長選。参院選と合わせて政治の流れを変える絶好の機会です」<連載おわり>