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患者塾:医療の疑問にやさしく答える 大きな病院のかかり方/上 /福岡

 8月29日に開かれた第122回患者塾のテーマは「大きな病院のかかり方」。大規模病院の院長・副院長も交え、現状や上手な利用の仕方などについて率直な意見を交わした。

 ◇尽きない退院巡る不安

 <飯塚市の74歳の男性> 比較的重い心臓の病気を持ち、前立腺がんで大きな病院に入院して治療を受けましたが、一段落したら「長く入院できないので他の病院に転院を」と言われました。心臓の医師がいない病院に移ることになったのですが、特別扱いでずっと入院できるようにはならないですか。

 小野村さん 仲野さんはかかりつけ医として患者さんを大きな病院に送る側ですが、「突然『退院しろ、近くの病院を探しなさい』と言われました。何とかしてください」と患者さんから言われることはありますか。

 仲野さん 常に直面している話です。今回のケースでは、心臓を診てくれている医師と前立腺がんを診てくれた医師の間ですりあわせをきちんとしてもらい「転院しても安心ですよ」という十分な説明があれば患者さんの不安はなくなるのではと思います。最近までは「入院が2週間過ぎましたので自分で次の病院を探してください」という大病院もあったのが現状です。

 花岡さん 飯塚病院は救命救急センターを併設しているので、ある程度の数のベッドは確保しておかなければなりません。そのため退院許可が出てからでは遅いので、入院時から退院コーディネーターがかかわるようにしています。患者さんや家族の話を聞きながら、連携先の病院と連絡を取り、転院先の調整をします。空いているベッドの情報などを連絡しあうと同時に、病院を直接訪問して連携先を増やしていくようにしています。

 田中さん 病院には入り口と出口の問題があります。飯塚病院の現在の入院日数は平均2週間です。入院してもらっても転院先がいっぱいということだと退院はなかなかうまくいきません。我々のような急性期病院(救急救命や専門治療を主に行う病院)だけの問題ではなく、地域全体の医療の連携がうまくいかないと共倒れしてしまいます。

 小野村さん なぜいきなり大きな病院にかからないか。かかりつけ医に相談すれば医師が大きな病院に連絡をして患者さんの様子を分かりやすく説明できるからだと思います。いかがですか。

 仲野さん 少し調子が悪いような時は、まず普段診てもらっているかかりつけ医のところに行ってもらうのが後々本人のためになると思います。熱がある時などに大きな病院に行った方が安心だと考える気持ちも分かりますが、そう考える人が大きな病院に集中すると特殊な病気を診る機能が混乱してしまうことにもつながります。また、大きな病院の医師が普段の様子が分からないまま診察を受けることで患者本人もプラスにならないことがあります。かかりつけ医にまず相談してもらうのが一番安心だと思います。

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 ◇出席された方々

瀬瀬顯さん=九州厚生年金病院副院長(北九州市、心臓血管外科)

田中二郎さん=飯塚病院院長(飯塚市)

花岡夏子さん=飯塚病院副院長(看護部担当)

伊藤重彦さん=北九州市立八幡病院副院長(外科)

津田文史朗さん=つだ小児科アレルギー科医院院長(水巻町)

仲野祐輔さん=八屋第一診療所院長(豊前市、外科)

 ◇司会

小野村健太郎さん=おのむら医院院長(芦屋町、内科・小児科)

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 ■記者の一言

 妻が入院した大病院の病棟に他とは雰囲気が違う一室があった。大部屋ばかりの病棟で、そこは個室なのに少し広く、家族が寝泊まりしていた。そして1週間もたたずに、部屋の主は変わった。その時は気づかなかったが、がんを患い入退院を繰り返していた妻が、結果として最後となった入院の時に入れられて分かった。そこは最期を看取(みと)る部屋だった。意思疎通が出来なくなった妻の手をただ握り、話しかけるだけの1週間。大切な人が自分の元を離れていく時、人目を気にせず覚悟を決めるための場所と時間が必要だと知った。【御手洗恭二】

〔福岡都市圏版〕

毎日新聞 2009年9月8日 地方版

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