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「そろそろまとめる時期」 「ガラスの仮面」44巻発売 美内すずえさんに聞く

2009年9月8日

 連載開始から34年、単行本と文庫の発行総数5千万部、いまなお未完――。少女マンガ界に数々の記録を打ち立ててきた、美内すずえさんのマンガ『ガラスの仮面』。その44巻(白泉社)が発売された。昨年は月刊誌での連載も11年ぶりに再開。「そろそろまとめ」という美内さんに聞いた。

 93年に40巻、98年に41巻、04年に42巻、09年に43巻・44巻。この16年間に出た『ガラスの仮面』の単行本は全部で5冊。今年に入って2冊というのは、実はかなりのハイペースだ。「この1〜2年、マヤや真澄さん(いずれも登場人物)の姿がふっと頭に浮かぶようになった。もうそろそろまとめる時期が来たのかな、と感じています」

 演劇界の幻の名作「紅天女」。その主演をめぐり、一見平凡な主人公・北島マヤと、両親が映画監督と女優という演劇界のサラブレッド・姫川亜弓が激突する。44巻では、紅天女の最終オーディションに向けて練習に励む2人の様子が描かれている。

 なぜ、これほど時間がかかるのだろう。最大の原因は、美内さんが「完成したものしか見せたくない」(編集者)という完璧(かんぺき)主義者であることだ。一度雑誌に連載された原稿でも、単行本にする際には全面的に手を入れる。

 「連載だと、1回ごとに話の山があるでしょう。単行本にすると、読む方も疲れてしまう。できれば、盛り上がりは1冊で一つにしたい。それもあって、物語を再構成する必要がある」と美内さん。

 マヤたちが演じる劇中劇に手がかかることも大きい。「ストーリーはすべてしっかり考えています。劇中劇の『女海賊ビアンカ』や『二人の王女』は、別の1本の作品にしようと温めていたものをそのまま使ってるんですよ」

 実際、紅天女の上演権を持つ往年の名女優・月影千草が自ら「紅天女」を演じてみせたシーンはそのまま舞台に持って行けそうなディテールと迫力だった。「自由劇場や市川猿之助さんの歌舞伎など、舞台からはたくさんの刺激を受けました。昨年上演された蜷川幸雄さん演出の『ガラスの仮面』には、観客として純粋に感動しましたね」

 長期連載のため、「作品の小物にはできる限り時代性を出さないようにしている」美内さんだが、単行本42巻などでは、携帯電話も登場した。物語中では70年代から数年しか時間が経過していないはずなのに。「ずいぶん悩んだんです。でも今の時代、描かない方がかえっておかしいと思って」。ちなみに連載当初は黒電話が描かれていた。

 ところで「終幕」はいつになるのだろう? 「最後のシーンは20年以上前から決まっています。この前、70代の方から『私の生きているうちに連載を終わらせて』という手紙もいただきました。責任を感じています。ただ、時が来ていない時に描く原稿はつらいし、自分でもおもしろくない。終わるべきときが来たら終わる、としか言いようがありません」(宮代栄一)

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