きょうの社説 2009年9月8日

◎予算執行停止 地方を混乱に陥れないよう
 民主党を軸とした連立政権への移行を前に、国の補正予算の執行が続々と止まり始めた 。次期民主党政権の意向をくんでの判断とはいえ、国の補正予算は景気対策として成立し、これに呼応して石川県は227億円、富山県は382億円の6月補正予算を組み、多くが既に執行されている。政権交代を理由に、凍結したりすれば大混乱を招くだろう。

 総額約14兆円に上る大型補正予算は日本経済を下支えし、景気の底打ちを確実にする 上で、大きな効果があった。このまま予算執行を止めてしまうと、これから年末にかけて、景気に悪影響を及ぼす恐れがあるのではないか。

 民主党は、未執行分の予算の一部を凍結して、その財源を「子ども手当」や農家への「 戸別所得補償制度」など10年度以降に新設する制度に充てるとしている。しかし、補正予算は、あくまで百年に一度といわれる大不況に対処するためのものであって、一度きりの予算を、毎年支出が必要になる制度の財源と考えるのはいかにも無理がある。

 石川県が発表した9月補正予算案は、国の予算執行停止を受けて、国の経済対策に呼応 した「経済対策基金」の創設を一部見送った。国の予算が回ってこなければ、減額補正で対応せざるを得ないためである。ただ、県単独の事業だけではおのずと限界があり、景気対策の効果は限定的になってしまうだろう。

 民主党は選挙前から補正予算を組み替える方針を示してきた。政権を取ったからには「 有言実行」したいだろうが、国の方針が定まらないと地方は右往左往させられることになる。予算の執行停止は、民主党が「アニメの殿堂」と批判している「国立メディア芸術総合センター」(仮称)事業など、地方に迷惑をかける恐れのない象徴的なものだけにとどめてはどうか。

 補正予算については、「白紙撤回」や「原則執行停止」などの勇ましい言葉が先行する 半面、予算内容の精査はこれからという。こんなペースでは時間が掛かり過ぎて、来年度予算編成が大幅に遅れる恐れもある。現実を見据えた割り切りも必要になってくる。

◎野球で観光PR 石川も見習いたい試み
 長野県が、行政機関としては初めてプロ野球独立リーグ・BCリーグの公式パートナー (スポンサー)となり、球場で観光キャンペーンを展開している。信濃グランセローズのアウェーの公式戦で、同県から委託を受けた球団スタッフらが信州の魅力をPRしているのだ。

 過日、金沢市の県立野球場で開催された石川ミリオンスターズとグランセローズの試合 でも、入り口で長野県の観光パンフレットなどが配られ、一回裏のミリオンスターズの攻撃前には、グランセローズの控え選手らが投げ入れたカラーボールと引き替えに、特産品や旅行券をプレゼントする企画も実施された。誘客に加え、試合の盛り上げにもつながる一石二鳥の試みである。石川、富山県も見習ってみてはどうか。

 BCリーグの6チームが地元とする地域は、将来的に北陸新幹線で結ばれるエリアと重 なる。長野県は、2014年度の金沢開業を見据え、「沿線」の交流人口拡大を狙ってグランセローズとのタイアップを考えたという。石川、富山県が長野県に追従すれば、相乗効果が生まれるだろうし、広域連携して首都圏などからの誘客に取り組む機運も一層高まろう。

 長野県は、経済対策の一環として6月補正予算で必要経費を計上し、8月1日の新潟ア ルビレックス戦から早速、実行に移した。直接的にこの取り組みの恩恵を受けるのは、観光関係者だけかもしれないが、同県の支援を得てBCリーグの魅力がアップすれば、広く県民にも明るさをもたらすに違いない。石川、富山県も、せっかく地元にプロスポーツチームがあるのだから、支えながらうまく生かすことを考えてほしい。

 長野県の場合は、球場でのキャンペーンをグランセローズに任せている点もユニークで ある。遠征先で、地域密着型の球団にしかできない、地元のための「仕事」をこなすことによって、全国から集まった選手たちの地元に対する愛着が強まり、ファンとの距離もさらに縮まるだろう。「もっと地元に貢献したい」という意欲もわいてくるのではないか。