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きょうのコラム「時鐘」 2009年9月8日
深夜、ピーと列車の汽笛が聞こえてくることがある。日中にはないことだ。秋が深まり、この夏の騒々しさを顧みる静かな時間である
本紙「ふるさと音紀行」に、幕末期に金沢の卯辰山から町民2千人が、コメくれまいやーと叫んだ「泣き一揆」の話があった。声は約1・7キロ先のお城でも聞こえたといい「どのように届いたか実験してみたら」と、面白い提案がされていた ビルもなく、車の騒音もない150年前の集団直訴は、風に乗って殿様に届いたのだろう。が、それを再現するのは相当の難問だ。昔通りの条件を取り戻せないのは都市環境だけではない。人間の耳の変化もあるからだ 藩政期、金沢城内から時刻を知らせる「時鐘」の音が富山県境の倶利伽羅まで聞こえたと記録にある。いい風向きと、静かな社会と、何より昔の人は現代人と比較にならない聴力を持っていた。床下でアリが相撲を取る音が聞こえたと例えられるほどだ 静寂を忘れ、騒音に慣れてしまった耳には聞こえない音がある。総選挙後の雑音が鳴りやまない。心落ち着かせ「明日の足音」に耳を澄ませる時間がほしい。 |