2009.9.6

森田実の言わねばならぬ【732】

平和・自立・調和の日本をつくるために[727]
《新・森田実政治日誌(144)》〔取材メモ/自民党再建・再生の可能性〕人材難

「政を為すは人に在り」(『中庸』)



 以下、自民党員A氏との対話のつづきである。

【森田】1970年代に何回か自民党本部へ取材に行ったことがありますが、国政選挙の時は、皆、燃えていました。当時の社会党も頑張っていましたが、活気は社会党をはるかに上回っていました。自民党本部員は全国各地の選挙区に派遣され、大奮闘していました。いまはそんな状況ではないのですか。

【A】70年代のことは知りませんが、昔の自民党とは違っていると思います。本部職員は、それぞれの部署のことしか知りません。他の部署のことはわからないのです。政党本部が企業の事務所のようになってしまっているのです。官僚化してしまっているのです。ゼネラリストがいないのです。とにかく、みんな「なんとかなるさ」です。

【森田】国会議員の場合はどうですか。外側から見ると、各分野の専門家はいるが、全体を掴んでいる政治家がほとんどいないように見えますが。

【A】総裁候補の一人といわれている石破さんにしても、党内では防衛と農業の専門家という評価です。塩崎さんも金融の専門家という評価です。全体を考える政治家がほとんど見当たらないのです。率直に言って、人材難です。

【森田】選挙戦に入ってから、自民党は民主党に対してネガティブキャンペーンを繰り返していたが、外から見ていると、自民党はここまで劣化したかと思いました。自民党内では、批判はなかったのですか。

【A】自民党候補や党員のなかに、民主党へのネガティブキャンペーンに疑問をもった人は、いたと思いますが、批判を口にできるような状況ではなかったと思います。そんなことを言っても、相手にされません。党内は、相手の悪口だけ言っていれば選挙に勝てるような気分でした。総選挙が終わったあとも、ネガティブキャンペーンが失敗したと思っている人は少ないのではないかと思います。候補者の多くは、日の丸の旗事件(鹿児島4区で、日の丸の旗二つをつなげて民主党のシンボルマークを作成したこと)と日教組攻撃ばかりやっていましたが、自民党が右翼団体のようになってしまったと見られてしまいました。大失敗でした。もっともこれすらも、多くの党員は、失敗したとは思っていないと思います。

【森田】大幹部はどうですか。

【A】自民党政権がなぜ倒れたのか、どうして自民党が負けたのか、わかっていないのではないかと思います。マスコミが悪いとか、国民はマスコミに騙されたとか、まだそんなレベルで考えている人が多いと思います。小泉政権以来、国民に向かっては「自己責任」を説きながら、自分たちは責任を他に転嫁しようとしているのです。「自民党は劣化した」と言われますが、大幹部を含めて本当に劣化してしまっているのです。安倍さん以後、オールKY(空気が読めない)です。

【森田】そんな状況では、野党になった自民党を立て直して2010年夏の参院選に駒を進めて、反撃するということはむずかしいのではないですか。

【A】私は、自民党の内部にいて、この党はもうダメではないかと思っています。本当に劣化してしまっているのです。第一に指導者らしい指導者がいません。いつまでも森さん(元首相)では自民党は立ち直らないと思います。しかし、いまの状況では、森体制がつづくのではないでしょうか。とにかく「人」がいません。いつまでも森さんと青木さん(参議院議員)がこの党の中心にいるようでは見込みはないと思います。悪いことに、自民党の将来を担う中堅幹部、若手政治家がほとんどいなくなってしまった。いつまでも、森さん、青木さん、町村さん、武部さん、中川(秀直)さんでは、国民の信頼を取り戻すことなどできません。私は、自民党が自己崩壊するのは時間の問題だと思っています。10月になれば、私もリストラされるでしょう。失業者です。これから職探しです。小泉構造改革についても、アメリカ共和党への追随についても、この党が反省することはないでしょう。国民から遊離して自滅したというのが、2009年8月30日の総選挙のすべてだったと、私は思っています。

 以上、A氏との対話の一部である。A氏の話のとおりだとすると、自民党の劣化は深刻である。自民党の実情を調べれば調べるほど、2009.8.30総選挙は、自民党の劣化、自己崩壊の結果だということが明らかになってくる。21世紀に入って、自民党は、森、小泉、安倍、福田の清和研体制でやってきた。そのあと清和研の支持を受けて麻生首相が登場した。この5年間で自民党をつぶしてしまった。この総括もやれないようでは、自民党の再生は不可能ではないかと思う。他だし、このまま自民党が自壊してしまうと、民主党一党体制になってしまう。民主党は小沢一郎氏の政党になってしまっている。そうなると、日本は一人の独裁者に支配される国になってしまう。これでいいはずはない。何とかしなければならないと思う。(この項・完)