
では、今後政権を担うことになる民主党に対する期待が高いかと言えば、そうではないようだ。英エコノミスト誌は既に、8月22日号の記事の中で、「民主党はあまりに未熟で、準備不足に見える」と厳しい見方を示している。
「日本経済が苦境に陥り、貧困層や格差が拡大したのは小泉純一郎元首相による改革のせいではない。格差の拡大傾向は、今年に入って深刻になったとはいえ、実は既に1990年代の『失われた10年』で始まっていた」と指摘し、格差問題のすべてを小泉改革に押しつけるかのような批判を展開する民主党や鳩山由紀夫代表の短絡的発想に疑問を呈している。
米ニューズウィーク誌も8月31日号の記事で、2009年1〜3月期の日本のGDP(国内総生産)が年率換算でマイナス11.7%と、先進国の中で最大の落ち込みを見せたことに触れながら、福祉強化を目指す民主党の状況認識の甘さを痛烈に批判した。
「驚いたことに自民党に攻撃されるまで、民主党のマニフェスト(政権公約)には、『経済成長』の言葉さえなかった。これは、民主党が日本が直面する窮状を理解していないことを示している」
さらに、気になるのは、欧米メディアの日本に対する見方に、一種の共通した「違和感」とも「呆れ」とも取れるトーンが垣間見えることだ。
例えば前述のニューズウィーク誌の記事。「消えゆく日本:経済成長を口にしない次の(政治)リーダーたち」と題されたこの記事には、「日本のリーダーは一体、自らの将来をどう考えているのか理解に苦しむ」とでも言いたげな記者の苛立ちが行間にあふれている。
「急ピッチで進む少子高齢化により、縮小の一途をたどる国内市場。思いもしなかったスピードで中国が政治、経済の両面で日本を凌駕しつつあ る中、経済力でしか存在感を示せなかった日本が、再び大国としての勢いを盛り返すには、新たな成長戦略により経済を軌道に乗せていくしかない」
それにもかかわらず、「自民党の幹部も民主党の幹部も、この点についてあまり議論しようとしていない。彼らは中堅国としてやっていければそれで十分だ、と思っているのだ」と、皮肉たっぷりに記事を締めくくっている。
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WSJの8月20日付の記事「民主党の日本国内における挑戦」でも記者は、民主党に対する一種の戸惑いを覚えているようだ。
官僚政治からの脱却を目指す民主党にとって最大の弱点は、「日本型資本主義の中期的戦略とも合致し、短期の景気刺激策にもつながるような信頼のおける財政、経済政策を持ち合わせていないことだ」と指摘。そのうえで、「子ども手当の支給や医療制度改革には財源の確保、つまり経済成長が必要になるが、(民主党)幹部は時々、“成長”という言葉自体が何か汚い言葉であるかのように扱う」と不思議がる。
前述のエコノミスト誌に至っては、まるで「いいかげんにしろ」とでも受け取れるような、怒りを示している。ここでもやり玉に挙がっているのは、民主党の経済成長に対する姿勢だ。
同誌によれば、民主党が官僚制度に切り込むことができれば、年金危機問題の解決を阻んできた官僚の事なかれ主義を打破し、高齢化問題にうまく取り組んでいくことが可能になる、と言う。だが、「それには経済成長が必要になる。ところが、あろうことか民主党は富の再分配の方が経済成長よりも大事だと考えている。民主党は自民党を(政権から)追い出したのなら、同時にこの(再分配さえ正しく行えば経済成長がなくてもよいという)バカげた考えも捨て去るべきだ」。
共通するのは、世界的不況の真っただ中にありながら、日本がいかに危機を乗り越えようとしているのか、今後どこへ向かおうとしているのかが見えないことへの苛立ちである。先進国でも突出した債務を抱える国とは思えない、というわけだ。
「現状維持を選んだ日本人」
そして、そうした危機感の欠落は実は政治家だけの話ではないと指摘するのが、長年、FT東京支局長を務めたデイビッド・ピリング氏だ。
同氏は、「格差の拡大やグローバル競争の激化といった心配の種はあるが、今のところ日本人の多くはまだ生活に満足している」としたうえで、民主党の掲げた子ども手当や医療制度改革などの政策は、「そんな人々が最も受け入れやすい政策として、注意深く選んだものだった」と分析する。
だが同氏によれば、「ただし(それらの政策は)かつての自民党が提供しているかと思わせる内容のもの。今回の選挙で有権者は変化を選んだのではなく、むしろ現状維持の手段として民主党を選んだに過ぎない」。
そして結論はこうだ。「日本に自ら変革を起こす気質はない。変革と言えば明治維新や戦後の米国の占領軍など、上から降ってくるもの。(8月 30日の)選挙は、戦後長年続いた政治体制への不満が頂点に達した結果だが、それをもたらしたのは有権者が変化を起こそうと確信を持って投票した結果でも なければ、社会に変化を起こす起爆剤にしようと意識した行動でもない。非常に日本的な“反乱”だったのである。だが、反乱ではあった」。
莫大な債務を抱えるなど、将来に不安があるにもかかわらず、目先の暮らしに安住しがちな日本人。曖昧な「友愛」の精神を掲げて、改革を断行しようという民主党。およそ「お気楽」という印象しか与えなくなった日本は、着実に世界から存在感をなくしつつあるのかもしれない。
今週の『The Economist』も対米自立、グローバリズム批判について攻撃している。すくなくとも、東アジア共同体はグローバリズムの一環であり、一方でグローバリズムの恩恵を語り、もう一方でグローバリズムを否定するのはほとんど無理な話だ。
それに経済成長についても民主の考えは甘過ぎる。
民主党は今こそ改革政党として自民党分配システムなどによって作り上げられたふるいシステムを破壊し、経済成長とグローバリズムに沿って再構築をお願いしたい。
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