 |
吹き抜けの大空間にマニア垂ぜんの車両が多数展示されている鉄道博物館=さいたま市 |
鉄道ブームが一段と盛り上がってきた。電車に乗る「乗りテツ」、写真を撮って楽しむ「撮りテツ」、模型が好きな「模型テツ」−。趣味として鉄道を楽しむ昔からの愛好家が健在な一方で、老若男女を問わずに広がりを見せてきた。
●時間旅行
鉄道博物館(さいたま市)は今年10月で開館2周年。来館者数は270万人を突破。見て触れる体験型テーマパークのような趣向が人気を呼び、平日でも来館者は2千人を超える盛況ぶりだ。
明治の鉄道黎明(れいめい)期の機関車も含めマニア垂ぜんの計36両の車両を展示。当時の駅も再現し、実際に乗車してノスタルジックな「時間旅行」が味わえる。所沢市の桝沢英雄さん(60)は特急「とき」の座席に座り、新潟県から就職のために上京した四十数年前を思い返していた。
漆塗りの3等客車を眺めていたのは越谷市の伊藤十一さん(74)。「座席や床が木製で懐かしい。孫より私が楽しんでます」と満足顔だ。
同様の博物館はJR東海なども計画中で、幅広い層に支持される鉄博ブームは当分続きそうだ。
●電車で会議
 |
走行する「都電荒川線」の車両を貸し切って開かれた鉄道旅行を楽しむ女性だけの会議 |
「かわいいー」。白と小豆色のレトロ風列車の登場に黄色い声が飛ぶ。8月2日、都内を走る路面電車「都電荒川線」を貸し切って若い女性だけの会議が開かれた。
議題は「女子が120%鉄旅を楽しむ方法」。鉄道好きのOLや女子大生10人余りがアイデアを出し合い、旅行会社の商品企画に生かそうというプロジェクトだ。
会議に参加した立教大1年の沼尻紗央里さんは鉄道サークルの紅一点。もともと旅行サークルにいたが、鉄道の面白さに目覚めて“転向”した。「電車にもさまざまな顔がある」という沼尻さんは「撮りテツ」。興味がわくと男性のサークル仲間と車両を見に行く筋金入りの「鉄子」だ。
●商売ネタ
鉄道ブームは、昭和40年代の蒸気機関車ブーム、50年代のブルートレインブームなどがあった。いずれも熱狂的な愛好家を中心に趣味の世界から広がった。
しかし、ここ数年のブームは様子が異なる。「鉄道好きが起こしたものでなく、昔のブームを知る愛好家には熱気は感じられない。潜在していた鉄道への関心が商売ネタとして掘り起こされただけ」と指摘するのは鉄道史に関する著作のある森口誠之さんだ。
鉄道旅行のノンフィクション漫画がヒット。「鉄道の旅」の本も相次いで出版され、男性タレントによる鉄道旅行の特集番組が組まれるなど、メディアがこぞってブームをたき付けた。
それでも鉄道に関心を持つ人が格段に増えているのは事実。昔からの熱狂的な愛好家たちをよそに鉄道ブームは、なお「快走」している。
|