県内の裁判員裁判対象事件は3件が起訴され、うち2件の公判前整理手続き実施が決まっている。一方、逮捕当初は裁判員裁判対象となるはずだったが、起訴段階で罪名が変わり対象外となった事例も。専門家は「裁判員裁判で確実に有罪を出したい検察側が慎重になっているのでは」と指摘する。
裁判員裁判の対象事件は、死刑または無期の懲役・禁固に当たる殺人罪や強盗致死罪、傷害致死罪、現住建造物等放火罪など。
共同通信の集計では、裁判員制度施行から2カ月で起訴された全国の対象事件は計276件。月平均138件で、過去5年の月平均258件を大幅に下回り、弁護士などが「裁判員裁判を避ける“罪名落とし”」と指摘している。
県内では、5月にうるま市で無職の男が初対面の男性の首をひも状のもので絞める事件が発生。うるま署は男を殺人未遂容疑で逮捕したが、那覇地検は6月1日、罪名を殺人未遂から傷害罪に切り替え起訴したため対象外となった。ほか、3件も起訴段階で罪名が強盗致傷から窃盗や傷害に切り替えられた。
4月に発生した南風原町の景品買取所強盗致傷事件で、那覇地検は強盗致傷容疑で県警が逮捕した男性を処分保留で釈放した。県警関係者は「証拠がありながら起訴しなかったのは、捜査に対する裁判員の心証を意識しすぎたためではないか」と疑念を抱く。
これに対し那覇地検は「個々の事件で起訴や罪名の切り替えを判断しており、裁判員裁判を意識したものではない」と、裁判員裁判との関連性を否定する。
裁判員制度を研究する沖縄国際大学法学部の中野正剛教授は「国の政策である裁判員裁判で無罪を出せば検察側に大きな失態。威信のため、被疑者が自認し争いのない事件など、絶対の自信がある事件を慎重に選び起訴しているのではないか」と指摘。
その上で裁判員裁判について「権威に従いやすい傾向のある日本国民は検察や裁判官の判断に追従する可能性がある。裁判員が抱いた疑問を積極的に評議の中で発言しなければ、制度導入前の有罪率の高さに大きな変化はないだろう」と分析する。(松堂秀樹・謝花史哲)
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