2009年9月6日5時25分
公園のイメージを描いた宮崎監督のスケッチ。中央の赤い屋根の建物がトイレ (C)Nibariki
宮崎さんの公園のイメージスケッチ。焼失した家は土台を残し、その上の芝生を歩くことができる(c)Nibariki
宮崎駿さん=東京都小金井市、川村直子撮影
焼失前の「トトロの住む家」と、庭の手入れをする近藤英さん=07年8月、東京都杉並区阿佐谷北5丁目
今年2月の火災で家は全焼した=東京都杉並区阿佐谷北5丁目、越田省吾撮影
「トトロの住む家」として愛された東京都杉並区の民家の跡地が、映画「となりのトトロ」の宮崎駿監督(68)のデザインスケッチをもとに公園に生まれ変わることになった。スケッチと計画案を受け取った区は、今後、具体的な計画づくりに入る。
昭和初期に建てられた洋風の木造住宅で、宮崎監督がかつて著書で「トトロが住みそうな家」と紹介した。今年2月に不審火による火災で全焼した。
焼けた木々は伐採せず、焼け残った赤瓦や家の土台も生かす計画で、「森の主」のトトロが今にも姿を現しそうだ。宮崎監督は「あの家の記憶をとどめるような公園になり、町に彩りが添えられれば」と話している。
◇
宮崎駿監督のデザインで、東京都杉並区の公園整備計画が再出発することになった。「トトロの住む家」として親しまれた、あの家の面影をなぞるように、監督はデザインの筆を進めた。
築80年の木造平屋建ては赤い屋根瓦と白い窓枠が特徴だった。約380平方メートルの敷地にバラやモミジ、ランなど約50種類の草木が植えられていた。元デザイン学校教員の近藤英(えい)さん(85)が住み、家屋や草木の世話を続けてきた。
宮崎さんは著書「トトロの住む家」(91年)で、映画に登場する想像上の生き物トトロが喜んで住みそうな家として紹介。宮崎作品のファンらが訪れるようになった。
2年前、近藤さんが高齢などを理由に隣にある両親の実家に転居すると、保存を求める地元住民やファン6千人強の署名が集まった。区は昨年、土地と隣接する駐車場を地主から買い取り、計830平方メートルの公園にする計画を決めた。
ところが今年2月の火災で家は全焼し、草木も約3分の1が被害を受けた。再建も検討されたが、「偽物を造っても仕方がない」との意見で計画は白紙状態に。同月末に宮崎さんが杉並区に協力を申し出たという。
宮崎さんは7月末、5枚のスケッチと平面図を区に渡した。火災後も毎日、庭の草木の手入れを続けている近藤さんは、「家はなくなってしまったが、同じ気持ちで公園の世話をしていきたい」。(水山和敬、永沼仁)
◇
〈「トトロの住む家」〉 近藤英さんの父親の兄弟で元の持ち主だった故謙三郎氏が昭和初期に建築。映画に登場する「森の主」のトトロが喜んで住みそうな、東京都内に実在する緑豊かな家を紹介する著書で、宮崎駿監督が「たからもの」と表現。東京都杉並区は焼失前、景観重要建造物に指定する準備を進めていた。