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 IT革命の影に潜むもの
−サイバークライシス−

宮脇 磊介氏(元内閣広報官)

講師 宮脇 磊介氏(元内閣広報官)
テーマ IT革命の影に潜むもの
−サイバークライシス−
日時 2001年03月01日(木曜日)13:30〜15:00
場所 サンケイビル 8F 第1,2会議室
主催 日本マルチメディアフォーラム
 今司会者から紹介をしていただいたが2点ほど補足したい。シンクタンクを設置したということが紹介されたが、これは自分一人でやっているものであり、世界の皆さんが自分のフェローであるという考え方で進めている。

 テレビに出演しているという話があったが、私は日本のテレビにはでないことにしている。役人をしていた頃は出ていたが、国民の皆様に自分達が何をしているかを理解してもらうために出過ぎるほどでていたが、退職してからは出ないことにしている。

 今日の話のタイトルは「IT革命に影に潜むもの−サイバークライシス−」であるが、これは先頃PHPから出版された「サイバークライシス――見えない敵に侵される日本」という本のタイトルで使った言葉で造語である。サイバークライシスという言葉はこの本ではじめて使ったものである。

 この本で申し上げたかったことは、サイバークライシスはインテリジェントクライシスということである。正論の4月号に私の論文が載っている。「あなたは情報戦争の当事者であることに気付いているか」という論文である。これが今日のテーマでもある。PHPの本が出ていろいろなところから執筆してくれとの依頼多い。雑誌「諸君」での座談会の依頼もあり、学者(セキュリティ専門家)、情報システムの技術系専門家と自分の3人で座談会をしたいということであったが、そういうメンバーを集めるという考え方が間違っていると伝え、自分でメンバーを集めることになった。それではセキュリティは守れない。江畑謙介氏と日本人がいかにナイーブであるか、いかに分かっていないかと語れる人ということで、ロナルド・モース氏あるいはグレゴリー・クラーク氏にしてはどうかと提案した。江畑氏、モース氏もすぐ引き受けてくれ、私を含めて3人で座談会をやった。

 ドナルド・モース氏はリビジョニストであるプレストウィッツのつくった研究所の副所長で、現在麗澤大学に来ており、近々アメリカに帰る予定である。NSA(National Security Agency:通信傍受の中心機関)で勤務した経験もある特異な経歴を持っている人である。いかに日本人がナイーブかを語ってもらった。

 どれほどナイーブかということが21世紀社会の日本のあり方に影響を与える。それをどう克服していくのかがインテリジェンスである。

 海外の人たちが日本人を評価するときに使うよく使う言葉がナイーブである。「もともと日本人は12歳であった」と言ったのはマッカーサー元帥で、彼が占領後の総司令官をやり、帰国後議会で証言した時に言ったことが、「アメリカ人やイギリス人は45歳、ドイツ人も45歳、しかし日本人は12歳程度」と証言した。

 ナイーブという言葉の意味は、辞書を引くと「無邪気なとか純真な」という意味が書かれているが、これは決していい言葉でない。物事の本質が分かっていないから無邪気にはしゃいでいられるので「ナイーブ」といわれる。昔羽田野氏が国連大使をやっている頃、日本人の要人がいくとアナン事務総長と握手して、写真をとってもらう。その後「日本が協力できることは何か」と必ず全員が聞く。しかしそれは日本人が自分で考えることである。

 中国の朱鎔基首相首相が日本人に会わないと決めた。前置きが長いし、要領を得ない、なんのために会いに来たのか分からないということで、時間の無駄なのであわないと言っている。要人だけではなく一般の人も同じである。これが日本人なのである。

 カンヌ国際広告賞でノルウェイの航空会社のCMが大賞をとった。日本人の旅行客がいて、乗務員がスナックを持ってくる。それを日本人が考えて、おしぼりと勘違いして顔を拭いてしまう。他のお客が「わっ」と笑う。次に本物のおしぼりを持ってくる。それを日本人の紳士はスナックだと思い、お腹がいっぱいなのでいらないと断る。そのタイトルがずばり「ジャパニーズ」。日本人がそう思われているので金賞とった。

 ニューヨークタイムスの日本の支局長をしていたニコラス・クリフトフが日本の悪口ばかりNYタイムズに書いた。日本女性はレイプ願望を持っているとまで書いた。しかしながら、日本女性はプーケットなどに行って男狩りをする。また横須賀あたりでぶら下がりにいく若い女性もいる。したがって海外でねらわれる。一人でいくと警戒するが、複数でいくと警戒をしない。全く何が危険かを分かっていない。これはナイーブそのもので、世の中のことが全くわかっていない典型例である。

 森内閣支持率が低下して6.9%になった。不支持率が8割。森総理はそんなに悪い総理なのか、私は平均的な総理だと思う。最初の「神の国発言」はピンポイント発言をとり上げたもので、前後の関係などを無視している。これはジャーナリズム違反。森総理はもともと体育会系的気質の人で、帰社がつまらない質問をするとイライラしてしまう。中曽根さんは相手にせずに話をしなかった。三木内閣からぶら下がりが始まったといわれている。橋本総理は逆にこれをうまく使った。

 日本のテレビの番組は、「国民にいい番組を提供するということ」でつくられているわけではない。スポンサーから広告料を取ること、そのために視聴率を高める必要あり、視聴率至上主義になる。そのために適したテーマをとり上げるには、国内の問題でみんなが知っている人を取材するのが取材費がかからなくて一番いい。ケリガン(アイススケーター)、OJシンプソン、クリントンとモニカ・ルインスキーなどのスキャンダルが安上がりでいいということになった。日本の場合には、日刊ゲンダイが総理たたきをやっているが、これが一番安上がりである。

 日本人は3重の意味で情報弱者であると思う。理解力強者、判断力強者であるが、しかし情報弱者である。適切な情報が与えられれば理解力、判断力はすばらしい。日本人は情報に振り回されやすい。二つ目は肝心な情報が情報洪水の中にない、三つ目はこの2点について日本人が気付いていない。だからナイーブなのである。

 竹村健一氏がよくひきあいに出すFinancial Timesにでてくるマンガを引き合いに出す。11月4日のLondon Economistの表紙のマンガがある。ナイヤガラの滝のようなところに釣り船でのんびりと糸を垂れている。釣り船には日本の国旗がたっている。これは漂流する日本を表現するマンガである。これもナイーブであることを表現している。

 サイバーセキュリティのために日本の各企業がやっているのはセキュリティポリシーづくりで、これをつくれば何とかなると考えているが、そんなことでは守れるわけがない。

 Y2Kのように自動的に、機械的に誤作動を起こすおそれがあるものではなく、敵がいて人為的にやってくる。その敵は何者なのか、どういう意図目的を持って自分の企業に迫ってくるのか、そういうことについて全く考えられていないし、議論もされていない。

 これは相手がいる戦争である。日本の場合には、サイバーセキュリティということになると、暗号技術の大学の先生が出てくる。暗号技術は重要な意味は持っているが、それは全てではない。それ以外にたくさん考えなければならない問題がある。アメリカでは暗号の先生が出てくることはない。企業の研究者がたくさんいるが、冷戦の終了で、元軍にいた人、情報機関いた人が民間に流れてきている。企業戦略についてどうするかという戦略的志向を、軍などにいた人がノウハウや技術を持ち込んできている。また、ヒューミント(スパイ工作)をどうやっていくかなども考えている。また、司法機関のおとり捜査に協力して海外の競争相手をおとしめるかなどをやっている。

 日本の場合には二言目にはセキュリティポリシー。これをつくれば終わりという企業が多い。こういう状況では何もできない。

 ハッカーとはどういうものか。著名なハッカーでブライアンマーティンという人がいる。今のハッカーネームはジェリコという通称(もとはカルトヒーローと称していた)。彼は世界中のハッカーの戦果を登録発表するサイトを持っている。日付、ハッカーネーム、ソフト名、攻撃成功サイト名などが出てくる。

http://www.attrition.org/mirror/attrition/2000-01.html

(去年の1〜2月の官庁ハッカー事件の出力資料を回覧)

 警察は麹町に60名体制で特別捜査本部設置した。すぐに出所が判明した。16件のうち12件は中国から、1件はアメリカから、2件が東大のサーバーから、1件は不明であった。なぜこの時期にハッカーがあったかは、前日の1月23日に大阪で南京大虐殺が30万人以上であるというのはおかしいというという集会が予定されていた。中国政府がやめさせて欲しいと言ってきたが、日本政府は言論の自由があるのでできないと回答した。それで1月24日から始まった。実害があったのは16件、うち10件しか上記サイトには登録されていない。

 日本がやられたのは2月20頃から増えているが、HUC(Honker Union of China)がこの時期に日本を攻撃しなければならないという宣言をしている。

 一昨日の段階で日本企業は89件やられている。いろいろなところのコンピュータのIDを1000くらいあげて、こういうところを攻撃するといってきている。そのうち、9件がやられている。

 サイバーテロがいろいろあるにもかかわらず、報道でこの種のことが報道されない。これは報道関係者の中に分かっている人がほとんどいないためである。国会議員の中にも分かっている人は極めて少ない。その中でも畑恵氏は一生懸命であるが報いられていない。肝心な情報が洪水の中に埋もれてしまっている。

 サリン事件が起きたが、第7サティアンを捜査したら、でるわでるわ、想像を絶する実態がでてきた。肝心な情報がなく、情報の空白域がぽっかりと空いてしまっているというのが日本の実状である。

 こうしたサイバー戦争は、台湾李登輝総統の二つの中国発言に対するハッカー、アラブとイスラエル間のハッカーの争いなどもある。お互いの政府機関のサーバーがダウンするような事態もある。

 ハッカーには二通りの傾向がある。アメリカは陽気で「落書き小僧型」である。難しいところに侵入してやったというものが多い。あるいはE−コマースをかき回す。欧州型は政治的な動機に基づくもの多い。環境問題とか南北問題、例えばシアトルで開催されたWTO総会の際に、世界から活動家がきて騒いだが、この時に同時にハッカーが活動した。

 昨年4月に開催されたIMF・世銀総会の際にもデモと同時にハッカー攻撃があったといわれている。こういう政治的な目的のハッカーを、私はサイバーNGOと呼んでいる。ヨーロッパでは、ハクティビスト、サイバーフーリガン、エレクトロピッピーズなどと呼んでいる。

 日本では昨年7月に九州沖縄サミットがあったが、警察もサイバーアッタックがあると大変なことになるので、サイバーフォースを投入した。15件ほどアプローチがあったが、9件までは偵察にとどまった。6件は不正侵入を試みようとしていた。環境問題があってNGOの活動があった。

 サイバー戦争も本格的な形になると、コソボの紛争で、クリントン大統領がCIAに対して、ミロシビイチ大統領の秘密口座を破壊せよとの指示があったということがTime誌で報じられた。当時米国政府は否定しなかったが、後になって急にこれを否定した。やっていたのは空軍のサイトに対するサーバーあっただけであるといい、実際にサイバーアタックをやっていることは認めた。

 ハッキング(ハッカー)の5つのレベルは、

1.ナイーブノビス(無邪気な新参者)
2.アドバンストノビス(高度な新参者)
3.プロフェッショナルハッカー(金儲け目的)
4.組織犯罪(マフィアなど)、テロリストグループ
5.Foreign Intelligence(外国情報機関、最も程度の高いハッカー)

 去年4月に元アサヒビール社長の樋口氏が団長、副団長が石原信雄元官房副長官、私が顧問でアメリカに調査にいった。重要インフラ対策委員会(1998年9月設立)ができて、ライフライン、交通機関、銀行などの国民のライフラインが電子化されればされるほどバルネラビリティ(攻撃されやすい)が高まる。こうしたことからトップの人達に意識を持ってもらおうということで委員会ができた。未来工学研究所が事務局をやっている。Y2Kや九州沖縄サミットに向けての提言をした。この準備のためにアメリカに視察に行ったものである。

 ワシントンからデンバーへ移動し、近くにコロラドスプリングス(岩山地域)がある。岩山(シャイアンマウンテン)の中に4階建てビルが4棟はいっている。これは北米防空軍総司令部(NORAD)である。世界中の宇宙に飛んでいる航空機、衛星、くずなど全てリアルタイムで把握している。船についても(潜水艦含む)キャッチしている。ミサイル発射型原潜の動きなどの情報を把握している。ヒューミント(ヒューマンインテリジェンス)もやっている。

 米国宇宙軍総司令部とNORADはトップが兼務しており、機器もリンクしている。これをサイバー戦争にも生かしていく。サイバー戦争で一番難しいのはどの国の国家意志が働いているのかを知ることであるが、この判定は容易ならざることである。

 最近騒がれているエシュロンは通信傍受の仕組みである。アメリカは米国企業利益のためにこの情報を活用している。最初にECがこれはけしからんと指摘した。イギリスのダンカン・キャンベルという記者が詳細を調査した。エシュロンは最低でも500億ドルの利益を米国企業に提供していると思われる。1993年には65億ドルの利益を上げることができたといわれている。この額は1995年165億ドルに膨らんでいる。これを欧州議会は非難している。フランスは昔からやってきている。韓国も国家情報院(旧KCIA)がやっており、これからは韓国企業のためにサービスをしていくと表明している。こうした国は国益をかけた情報機関が自国のために活動していないと、税金泥棒であると指摘される。

Interception Capabilities 2000, EU Parliament 未来工学研究所翻訳

 戦争には、表の戦争と裏の戦争がある。裏の戦争は情報機関の世界で、ルールがない、なんでもありの世界である。これは国営の組織犯罪であるといえる。世界のなかで勝っていくのにはインテリジェンスが必要である。日本企業の敵は外国の情報機関であることを考えなければいけない。これに対する対抗手段を考えていかねばならない。ネットワークだけでなく電磁波の問題、データセンターのセキュリティの問題など、こうしたことを総合的に考えていかないとセキュリティは守れない。

 21世紀に向けて、日本がこういうことを欠いて尊敬を得るのはあり得ない。こうしたことを欠いて尊敬を得るのは無理で、生存さえ脅かされる。

以上
質疑
Q:今日のレジメの中で、話がなかった点だが、ストライクバックという言葉はどういう意味か。

A:これはサイバー戦争をやって行くに一番大事なことである。サイバーテロを抑止するためにも大事なことで、私もジェイコーからはじめて聞いた。アタックがあった時そのルートをさかのぼっていき相手のサーバーを攻撃すること。アメリカ、イスラエル、スウェーデンなどが開発している。カウンターサイバーストライクというような言葉もある。

Q:他国に比較して日本の政府機関では情報戦略は行われているのか? 民間を助ける活動はあるか。

A:日本で意識的に行われているということにはならない。アメリカではジェトロはスパイ機関であるということを言う人もいる。戦略的な考え方を持ってやっているということは全くないと思う。

Q:数日前に総務省がパワーラインから情報が漏れるという注意をしたが、これはサイバーテロにかかわることか?

A:サイバーテロというとネットワーク上だけの話かと思われているが、中間でとる(マイクロウェーブ、海底ケーブル)ということもある。漏れてくる電磁波を読みとるなどの方法がとられる可能性もある。コンピュータから漏れている電磁波を指向性アンテナでとらえれば内容を把握することができる。コネクターから漏れることが多い。部屋にシールドを張る技術はある。この点については清水建設が大手、竹中工務店も少しできる。
■講師略歴
1932年 東京生まれ。
1956年 東京大学法学部卒業、警察庁入庁。
1986年 内閣広報官(中曽根首相〜竹下首相)。
1988年 NTT特別参与、電通顧問。

□著 書
「騙されやすい日本人」、1999年、新潮社
「サイバークライシス」、2001年、PHP研究所など

□近刊雑誌論文等
『正論』、2001年4月号 論文「あなたは情報戦争の当事者であることに気づいているか」
『諸君!』、2001年4月号 座談会「インテリジェンス・クライシス」
1999/08/24「情報戦争」の時代−サイバーテロリズムを中心に−

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