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支局長からの手紙:痛っ! /香川

 1週間余り前の夜、右足のかかとのすぐ上辺りで、激しい痛みを感じました。体重をまともに受ける部分なので、立っていられないし、とても歩けない状態です。翌朝、タクシーで病院へ。骨に石灰分が沈着し、周りが炎症を起こしているとの診断を受けました。先生の表情で深刻な状態でないことは分かったのですが、それで痛みがすっと消える訳ではありません。

 何日間か、右足をひきずりながら、非常にゆっくりとしか歩くことができませんでしたが、そこで見えたこともありました。

 支局は小さなビルの2階にあります。階段の手すりは、左右両方についている部分と片方しかない部分があるのですが、今回初めて、自分が持ちたい側に手すりがない場合があることに気づきました。支局前の道は車の通行量が結構多いのに歩道なし。路上駐車を避けて道の少し内側を歩く時、これまでにない怖さを感じました。また、一人暮らしの自室では、通常は気に留めない小さな段差のために、右足に力がかかり、「ギャッ」と悲鳴をあげることもありました。お年寄りなどから見れば「そうでしょ」ということばかりかもしれません。今さらながら、バリアフリーなどの重要さを実感させられました。

   ×   ×   ×

 私にとっては、右足の痛みの最中だった衆院選の日。劇的な結果に、皆さん、さまざまな思いを持っておられることと思います。

 「政権交代だけが目的ではなかったはず」なんて書くと、選挙戦での麻生首相の発言と同じじゃないかと言われるでしょうか。しかし、主権者たる国民としては、政治をよりよくすることが、あくまで目的なのであり、政権交代はその手段に過ぎないはずです。

 日本近現代史家の加藤陽子・東大教授の近著「それでも、日本人は『戦争』を選んだ」(朝日出版社)に、日中戦争に入る前の状況が書かれていました。世界恐慌(1929年)の影響で疲弊した農村の窮状を救う政策が、当時の政友会、民政党などの政党から出てこない一方で、「農山漁村の救済は最も重要な政策」と掲げた軍部を、国民は変革の主体として期待した、と。その後、軍部がより力を持って戦争を遂行する中、スローガンは忘れられてしまったことは、歴史が教えてくれるところです。

 民主政権になっても、多分、何もかもがごろっと変わることはないでしょう。だからといって「政党なんか」と、すぐに見限っていては、いつか来た道をまたたどらないとは断言できません。少し気長に政治を見つめること、政治に何かを求めるばかりではなく、政治の改革にかかわっていくこと--それが主権者の役割だと思います。【高松支局長・姫野聡】

毎日新聞 2009年9月7日 地方版

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