あの人は今こうしている　超人気女優だった和泉雅子さん

　日活・青春映画の清純派女優から冒険家に――。こんな華麗なる転身を遂げた和泉雅子さん。今から２０年前、女性としては世界で２番目に北極点に立った。その後もテレビや舞台で活躍していたが、最近は姿を見ない。さて、今どうしているのか。

●「『アルプスの少女ハイジ』みたいな生活を楽しんでいます」

「北海道の士別市ってご存じですか？　旭川から６０キロぐらい北のちっちゃな町なんですが、自動車メーカーやヤマハ・スノーモービルのテストコースがありましてね。１３年前、そこに山荘を建て、今では年に３、４回通い、合わせて半年ほど暮らしてるんです。６月から９月半ばまでは避暑を兼ねて、ほとんどあっち。この時季、東京にいるのは講演とか舞台とか、よほどの用事があるときだけです」

　東京・銀座は三原橋近くの自社ビル８階にある個人事務所で会った和泉さん、まずはこう言った。４代続く江戸っ子の和泉さんの実家はかつて、この場所で寿司割烹を営んでいた。

「敷地は４５００坪あって、山荘は赤い屋根の木造２階建て。キツネにウサギ、鹿もよく遊びに来てくれて、『アルプスの少女ハイジ』みたいな生活を楽しんでます。あと、士別の方たちはすごく優しいんです。向こうに帰って、“ただいまぁ”って知り合いに電話すると、日常生活に必要なものは全部持って来てくれるし、クルマがなくても、誰かがアッシー君を買って出てくれる。銀座生まれの銀座育ちだけど、ホッとできるのは士別ですね」

　さて、和泉さんは中学２年のとき、日活プロデューサーだった水の江滝子にスカウトされ、入社。映画デビュー後は吉永小百合、松原智恵子とともに“日活３人娘”として一躍人気女優になった。

「午前中はヤクザ映画、午後は青春・純愛映画、夜はアクション映画って感じで３作品を同時進行で撮影することも珍しくなかったですよ。おかげで高校に進学したのに、１学期に授業を受けたのは３日だけなんてこともあり、結局、高校に５年間通い、卒業はハタチのときでした」

　また、歌手でもヒットを飛ばし、４歳年上の山内賢とのデュエット曲「二人の銀座」は１００万枚以上売れ、同名タイトルで映画化もされた。

「去年、賢ちゃんと４２年ぶりになる新曲『おとなの銀座』をリリースしました。昭和は遠くなっちゃった。でも、あの頃と変わらないふたりがいる、って内容の曲です。団塊の世代やその上の方たちが、懐かしいとおっしゃって聴いてくださってるみたいです」

　冒険家への転身は８５年。前年、テレビ東京の旅番組のリポーターで南極を訪れて極地にハマり、北極点踏破に挑んだ。しかし、このときは残り１４８キロで失敗。８９年、２度目の挑戦で成功した。

「北極は今でも大好きです。さすがに北極点までは行きませんが、多い年には３回は旅行してます。『北極の魅力』『気候変動』などをテーマにした講演の依頼もけっこうあって、北極とは縁が切れません」

　独身。中央区内に自宅がある。

（日刊ゲンダイ2009年9月1日掲載）