この人物のオモテとウラ　竹中直人（俳優・監督）

●俳優や“お笑い”よりも監督業の方が先だった

　この１日、監督作「山形スクリーム」が公開された。映画を監督したのは、４年ぶり６作目。内容はホラーコメディーで、「ぶっとんだくだらなさの中に愛や感動、ホラー映画へのオマージュがこめられていて楽しめる」と話題だ。

　ヒロインは成海璃子。ほかにＥＸＩＬＥのＡＫＩＲＡ、沢村一樹、由紀さおり、生瀬勝久など、豪華で多彩なキャスティングが目を引く。竹中自身も１人２役で出演している。竹中は劇中音楽の作詞作曲も担当。つまり、“竹中ワールド”全開の映画なのだ。映画公開の前後、竹中はトーク番組などに出まくり、映画のＰＲに奮闘している。

　俳優としての印象が強いが、俳優より製作を始めるほうが先だった。大学時代、“映像演出研究会”に入り、８ミリ映画を撮っていたのだ。

「竹中は子供の頃から映画が大好きで、中学生のときにはカセットデッキを学生服の下にしのばせて映画館に入り、映画の音声を録音し、夜、そのテープを聞きながら布団に入るのが楽しみだった」（芸能ライター）

　久しぶりに映画が作れて、さぞうれしかったに違いない。

●家族との時間を大切にする“マイホームパパ”の顔も

　しかし、今年はつらいこともあった。この５月、親しかったミュージシャン・忌野清志郎が亡くなったのだ。清志郎は竹中にとって、大学時代、８ミリ映画への出演を快諾してくれた恩人。竹中がプロの映画監督になってからも、竹中の作品の音楽などを手がけた。竹中は清志郎の死の知らせにコメントできないほどショックを受け、告別式では号泣し、「世界中の人に友達だったんだぜって自慢したい」と弔辞を読んだ。

　１９５６年３月２０日、横浜市生まれ。関東学院六浦中学・高校から、２浪して多摩美術大学美術学部グラフィックデザイン学科に進学。高校時代から得意だったモノマネで、「ぎんざＮＯＷ！」（ＴＢＳ）の“素人コメディアン道場”に出演し人気が出た。

　しかし、「演技をちゃんと学ぼう」と、大学４年のとき、「劇団青年座」の夜間部の研究生に。

　大学卒業後、座員となったが、劇団になじめなくなり、再度、テレビのお笑いの世界に戻った。以来、タレント、俳優、監督として大活躍。絵本作家やミュージシャンとしての顔も持つ。

　９０年、元人気アイドル・木之内みどりと結婚。大学１年の長女、小学６年の長男がいる。竹中は子供に勉強を教えたり、冬には家族と一緒にコタツを囲み台本を読むなど、家族との時間を大切にする“マイホームパパ”。さすがに家庭では、ハチャメチャでハイテンションな父親ではないようだ。

（日刊ゲンダイ2009年8月7日掲載）